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気づけば全部のフラグをへし折っていた転生悪役令嬢ですが何か?  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍発売中
第四章 ラクロワ領ラクリス編

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50、宝箱の前には、ボスがいるよね

 私とエクスは敵に囲まれ背中合わせになった。

 その間もシロアリは増え続け、まるで退路を断つかのように私たちは広場の真ん中へと追い詰められていく。どこにそんな居たのだろうか、と驚くほどわらわらと現れるシロアリに、なすすべもない。


 しばらくすると私たちを取り囲むように集まっていたシロアリの列が、ピタリと途絶えた。この巣穴にいたシロアリ全部が集合したのではないか、と思うほど、広場はシロアリでごった返している。

 這い出てきたシロアリたちは皆一様に私たちを見つめていた。その瞳にはなんの感情も映っていない。


 不気味なほどの静寂が広間を支配していた。私とシロアリが睨み合うような形で、お互いが警戒体制に入っている。

 先ほどまでのように、アリ単体だけであれば脅威を感じることはないのだが……集団になると別だ。シロアリの背丈は私と同じ……もしくは少し高いくらいか。それが大量に現れると、思わず圧倒されてしまいそうだ。

 視線を左右に動かせば、数え切れないほどのシロアリが、口を開閉させながら音を鳴らしている。その音は、鼓膜を震わせるほど高く、鋭く洞窟内に響き渡っていた。

 その行動はまるで私たちを威嚇しているように見えた。


 そして刹那……音を鳴らしていたシロアリたちの口が閉じる。

 

 その様子を見た私の勘が告げていた。

 これは、何かある、と。


「マリ! 防御壁を頼む!」


 エクスの声と同時に私は右手を左から右へと動かし、無詠唱で防衛壁を張った。その瞬間――


「ギギッッ!!」


 シロアリの集団から離れた位置にいる一体のシロアリが、まるで狼の遠吠えのように声を上げた。それに呼応するかのように、周囲のシロアリたちが一斉に口から緑色の液体を私たちに吐き出す。

 防御壁へと当たった液体は、肉を焼くような音を立てた後、煙となって消えていく。一方で、地面へと飛び散った液体は……偶然落ちていた石を溶かしていた。


 魔力を帯びている。どうやら液体に魔力が篭っており、周囲の物体を溶かす性質があるようだ。


「マリ、気をつけろ。こいつらから吐き出される液体は、物を溶かす性質がある。あと、他に比べて硬い」


 そう告げたエクスが、防御壁内から届く範囲にいたシロアリの胴体を切りつける。すると、金属と金属がぶつかるような鋭い衝撃音が辺りに響き渡った。私はエクスが攻撃した場所を確認する。どうやら傷は付くようだが……灰色のアリで一閃できていた時と比べると、格段に強いことがわかる。

 後ろからエクスの舌打ちする声が聞こえた。


「やはり胴体が硬すぎる……面倒だな」


 そう呟いた彼は、再度目の前のシロアリに攻撃を仕掛ける。今度は機動力を落とすためだろうか……脚の付け根を狙って短刀を振りかざす。すると、やはり胴体に比べて細いからだろう。脚と胴体が真っ二つになった。

 脚を切り離されたシロアリは、まるで水の上に投げ出されたようにもがく。脚を奪われたシロアリの戦闘力は、想像通り低下している。


 けれども、倒れたアリを守るかのように周囲のアリたちがエクスへと飛び掛かってきた。その前に防御壁内へと避難したエクス。彼は防御壁を利用しながら一体一体シロアリの足の付け根を狙って動いている。


 一方で防御壁の外では、シロアリたちが私たちを倒そうと壁に体当たりをし続けていた。金属のぶつかるような音が、何度も何度も私の耳に聞こえてくる。

 

 私はその間、シロアリたちの様子を観察していた。防御壁の中から魔法を使用することができないため、隙を見て大きな魔法を一発お見舞いしようと考えていたのだ。

 火、水、風……様々な属性魔法を使用できる。その中で一番効率の良い魔法はどれだろうか……と考えていると、エクスが私の方に何かを放り投げてきた。

 

 手に取ってみると、それはアリの脚。後ろを振り返ると何体ものアリが仰向けにひっくり返っていた。防御壁を利用して、うまく距離を取っているようだ。

 私はもう一度防御壁をかけ直しておく。その時……。

 

 ――ピシリッ

 

 窓ガラスにヒビが入ったような音が頭上から響く。私は慌てて音の方へと顔を向けると、私の防御壁に僅かながら裂け目ができ始めていた。

 私は視線をシロアリに戻す。すると、彼らは私の防御壁に傷をつけたことが嬉しいのか、口を開閉してカチカチと音を鳴らしている。まるで私という獲物を追い詰めたことによる喜びが現れているようだ。

 

 一体、二体目……。


 そして三体目の体当たりで、防御壁のヒビに攻撃が直撃し、裂け目が広がっていく。それと同時に私の防御壁の効果が切れた。


「マリ!」


 後ろでエクスの絶叫が聞こえる。

 空気の震えとして肌に伝わるが、残念ながら私はその言葉に応える余裕はない。

 シロアリたちは私を守っていた防御壁が壊れたことを把握したのか、音は更に大きく、早く鳴らしている。


 そしてニンマリと笑ったように見えたシロアリは、無防備な私に飛びかかり――


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