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気づけば全部のフラグをへし折っていた転生悪役令嬢ですが何か?  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍発売中
第四章 ラクロワ領ラクリス編

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49、ガチャガチャみたいな宝箱

 エクスの案内で魔物を見つけては倒し、奇襲を掛け、見つけては倒し、殲滅する。

 途中から魔物への恐怖も忘れ、少し楽しくなってしまった私は魔力が尽きるまで、これを続けようとしたのだが、エクスに止められた。


「一旦止めるぞ」

「えっ」


 魔法の精度も高まり、詠唱も馴染み始めた矢先のこと。

 正直な話をすれば、内部にある魔力もあまり減っていなかったので、ここで終わると消化不良みたいなものになりそうだ。もう少しやりたい……という意を込めてじっとエクスを見つめると、彼は頭を掻いて私に近づいた後、身体ごと左へと向かせる。

 そして何気ない話をするかのように装いながらも、耳元で囁いた。


「……先ほどから何人かに見られている。お前が狙われている可能性も否定できない」

 

 エクスの言葉を聞いて、私は目を見開いた後、探索魔法の範囲を背後にある林に広げてみる。すると、確かにエクスの言う通り、三人ほど木陰に隠れているようだ。周囲には敵もおらず、冒険者もいない。

 私たちが歩くと、彼らも付かず離れずの距離を保とうとしているのか、こちらへとやって来る気配がする。ただ私たちのいる場所が林と草原の境目ということもあり、林から出ないようにはしているようだ。


 先ほどまで鼻歌混じりで冒険を楽しんでいた私も、流石に誰かに後を付けられていると聞いて、気持ちが落ち込む。

 距離は遠いので、監視している人たちには聞こえないだろう。そう判断した私はエクスに話しかけた。


「えー、エクス。私、何かやっちゃった?」


 いつの間にか風魔法を無詠唱で放っていたのか、それとも威力が少し強かったか……もしくは、魔法を使いすぎて魔力量が多いことがバレた? 思い当たる節が多すぎて狼狽えている私に、エクスは話した。


「いや、そうじゃない……冒険者の中には、ダンジョン内で悪事を働く者がいる。マリはこの街に来たのが初めてだし、俺も久し振りに来たから……そっち系の冒険者に狙われている可能性も否めないな」

「なるほど……」


 どの世界にもそんな話があるのね、と納得しながら聞いていると、エクスは眉間に皺を寄せながら話す。


「特にこのダンジョンは国一番の規模を誇っている。その分、ギルドも目を光らせているのだが……ギルド職員をダンジョン内に配置するわけにもいかないだろう? だから、悪事を働く冒険者も多いらしい」

「まあ、内部で起こることを監視するのは難しいもんね。仕方ない、それなら帰ろうよ」

「そうだな。一階層は問題なく突破できるだろうからな」


 エクスの言葉に頷き、私はダンジョンの入り口へと歩いていく。

 無事にそのまま地上への階段にたどり着いた私たちは、一歩足を掛ける。すると先ほどまで私たちの様子を窺っていた者たちも散り散りになって範囲外へと消えていく。


 この先、何も起こらないように願いたいが……どうなることやら、と私は静かに息を吐いた。



 

 翌日、二階層。そして翌々日は三階層と、ダンジョンや戦闘に慣れるため二人でダンジョンへと潜っていた。確かに魔物は一階層に比べて三階層の方が強くなっている。

 一階層は棍棒を持っていたゴブリンだけだったが、三階層では棍棒使いだけでなく、剣使いも現れた。その上、一階層よりも数が多くなり、後衛の魔法使い……ゴブリンメイジと呼ばれる魔法使いもいる。


 敵のレベルが上がるってこうなるのね、そう思いつつ、私は鎌鼬(かまいたち)を使い続ける。たまにゴブリンメイジの詠唱を止めるために、螺旋風(ハリケーン)を使用したくらいか。

 ゴブリンメイジにもレベルがあるようで、探索魔法を使える者と使えない者がいたりする。それもまたダンジョンの醍醐味だ。


 ちなみに私たちを監視する冒険者たちもやはり何人かいる。組織ぐるみなのか、基本的には一人が監視役で交互に行っているようだ。探知魔法ギリギリの場所で、様子を窺っており……そんなことをしている暇があれば、冒険すればいいのに、と私は思っていた。


 三階層でゴブリンたちの集団を三ほど倒した私たち。目の前には一階層、二階層にはなかった谷のような場所が現れた。周囲は岩で囲まれた崖になっており、何ヶ所かぽっかりと洞窟のような穴が空いている。

 手前にある大きめの洞窟に入ってみると、そこは迷路のようになっており、あちらこちらへ道が続いていた。


「エクス、ここの洞窟行ってみる?」

「そうだな……人の気配はあるか?」


 探知魔法を迷路へと向けてみるが、どうやらこの場所を探索している冒険者はいないようだ。

 

「中にはいなさそう」

「なら、マリの訓練には良さそうだな。行くぞ」


 エクスの言葉を聞いて私は頷いた。

 確かに、ここなら無詠唱で魔法を使えそうだし、私たちを監視している冒険者もきっと入ってこないだろう。それに、このような洞窟には宝箱があるという話は鉄板だ。

 

「ねえ、エクス。ここには宝箱があったりするの?」

「ああ、あるらしい。ただ中身はわからない」

「中身がわからない?」


 私は首を傾げる。あるらしい、ということは……少なくとも何人かは宝箱を見つけているのだろう。マルチで行うゲームだと、何度も宝箱を取れることもあるから、その仕組みなのかもしれない。

 けれども中身がわからない、この理由がわからなかった。そのため、私はエクスに聞いてみる。


「いや、大抵の冒険者が宝箱の中身をギルドへ自己申告するのだが……この洞窟にある宝箱を見つけた冒険者たちの話をギルドに聞いたら、全員の中身が違ったらしい」

「え、そんなことあるの?」


 エクスも「信じられないよな」と言いながら、私の言葉に同意する。

 

「ギルド職員の話によると、その時のパーティで必要なモノが出るのではないか、という噂だ。ある短剣使いが剣を変えようとしていた時に宝箱を開けたら、短剣が出てきたり……チーム内の魔法使いの杖が壊れた時に開けたら、杖が出てきたり……なんて話もあった」

「へぇ……。え、全ての宝箱がそう言うわけではないよね?」

「多分な。普通は大体宝箱から出るものは決まっている。ボスだとレアドロップが、と言う話もあるがな」


 エクスの話を聞いて、私は俄然やる気になった。あれだね、頑張った人への贈り物なのかもしれない。

 まあ正直今必要なもの……は思いつかないけれど、話を聞いていると、きっと今後役に立つものだよね。そう思った私は意気揚々と洞窟内へと入っていった。


 エクス曰く、この洞窟には罠はない。いるのは魔物だけ、と聞いたので、探知魔法を使用しながら魔物に出くわさないよう細心の注意を払った。

 この中にいる魔物は、どうやらゴブリンとスライム、アリ系の魔物らしい。アリの魔物は外にいるモノよりも身体が硬く、普段使っている鎌鼬(かまいたち)では外殻に傷をつけるだけで倒すことはできなかった。

 ただし、関節を狙えば問題なく一発で倒すことができる。私はそれに気づいてからは、命中率を上げるために狙いを定めていく。


 そんな戦闘を何度繰り返したか……少し疲れたかな? と感じ始めた頃。

 私の探知魔法に何かが引っかかった。


 ――どうやら宝箱のようだ。


 エクスに告げ、宝箱の方向へと向かっていくと……目の前に現れたのは洞窟とは思えないほど広い空間。その最奥に赤と金色の装飾を施された宝箱が鎮座していた。

 私たちは宝箱に近づくために、広場へと一歩踏みだす。すると、踏み出した足から光が現れ……私たちはいつの間にか広場の中心に佇んでいた。

 慌てて入り口の方を見ると、そこにあったはずの入り口に土壁ができている。この展開、もしかして――

 

 そう思った私の勘は当たったようだ。


「マリ、気をつけろ」

「エクスも……ね」


 私たちの周囲に現れたのは、今までの灰色のアリとは違う……白色のアリ。彼らは私たちの周りを囲んでいた。

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