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気づけば全部のフラグをへし折っていた転生悪役令嬢ですが何か?  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第三章 ラクロワ領ガルム編

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40、情報を取ることができなかった……?

 真紅の盾のリーダーの予想通り、一時間も掛からないうちに馬車という名の動く牢が到着し、男たちが積み込まれる。

 それを見届けた真紅の盾チームと別れ、私たちはガルムの街に戻っていた。男たちが地下牢へと入れられたのを見届け、私たちはギルドへと向かい、ことの顛末をギルド長に話していたところだ。


 全ての話を聞き終えたギルド長は、腕を組んで考え込む。


「この赤い球に、何かの魔力が……ねぇ……?」


 訝しげに赤い球をくるくると回しながら眺めるギルド長。思う存分見回したのか、赤い球を机の上に置いてふう……と一息つく。


「よく分からんが、一応この球は預かってもいいか?」

「ああ、そうしてもらえると助かる」

「ただの赤いよく出来た球にしか見えないが……もし必要なら、王都に送らなければならないからな」


 ギルド長曰く、王都には事件で出た残留品を調査する機関があるのだという。捕らえた男たちが情報を持っていて、それを全て吐いてくれるのであれば王都に依頼する必要はないかもしれないけれど、もしそうでなければ少しでも手掛かりを発見するために調査するのだという。まるで日本の警察みたい。

 そんなことを考えていた私の耳に、ギルド長の声が聞こえてきた。


「それよりも、エクスでも勝てそうにない男がいただと? どんな化け物だ?」


 ギルド長もエクスの強さを認めているようだ。

 

「正確には手を出すのは危険と判断した。あの男、隙が全くない。常に俺らの様子を視界に入れていた」

「そんな男が何故あの洞窟にいたのか、だな。まあ、この球に関係があるんだろうが……」


 ギルド長は手元にある赤い球を見つめる。そしてひとつため息をついた。


「はぁ、これで終わってくれるといいんだが……」

「全くだ」


 エクスも同意しているし、私も同意したい。けれども、あの男の最後の言葉が私は気になっていた。

 

「……最後の言葉が『またどこかでお会いしましょう』って言っていましたから、きっとどこかで暗躍していると思います」

「……確かにそんなことを言っていたな……」


 彼も思い出したのか、大きく息を吐く。私たちの言葉に、ギルド長は額に手を当てて疲れたように呟いた。

 

「おいおい、二人が聞いているっていうことは、暗躍確定じゃねぇか。全く、面倒だな」

「ただ……捕まった男性たちの言葉を聞く限り、ガルムの街に来ることはなさそうでしたけどね」

 

 男たちは『いっときの保管場所』と言っていた。つまり、この場所は保管場所として利用していただけだと判断できそうだ。


「そうだと嬉しいんだがなぁ……まあ、あとは俺たちが話を聞き出しておくから、また何かあったら伝えるな」

「え、調査した内容を教えていただけるのですか?」


 そういうのって、秘密主義じゃないの? 考えていたことが表情に出ていたらしい。


「手に入れた内容の公開、非公開は各支部のギルド長に委ねられているからな。お前たちは逃げた男に『また会おう』と言われているんだろう? だったら、そいつらの情報が少しでもあったほうがいいだろうと思ってな」

「ギルド長、ありがとう。それは助かる」

「いいってことよ。二人にはヤバい奴らの討伐もしてもらってるからな。それくらいお安いご用だ」


 そう告げたギルド長は、ソファーから腰を上げる。


「さて、お前たちはもう帰っていいぞ。今日明日辺りであいつらから話は聞くから、時間があるときギルドに来てくれると助かる」

「分かった」

「ありがとうございます」


 お礼を言うと、ギルド長は私の顔をまじまじと見て何かを思案しているようだ。そしておもむろに彼の口が開いた。


「やっぱりお嬢ちゃん……受付嬢にならないか?」

「ならない!」


 私が謝罪しようとする前にエクスがギルド長の言葉を遮る。エクスの否定に最初は目を丸くしていたギルド長だったが、しばらくするとお腹を抱えて笑い出した。


「いや、すまない! 嬢ちゃんをエクスから取るつもりはないからな? そんなムキになるなって」

「ギルド長、笑いすぎだ」

 

 エクスの顔が少し不貞腐れているように見えるのは気のせいだろうか。笑い声をあげていたギルド長は、溜まっていた涙を拭う。


「いやぁ、良かった良かった。エクスも普通の人なんだな」

「普通の人ってどういうことだ?!」


 詰め寄るエクスにまた笑い出すギルド長。彼らの攻防は、副ギルド長に怒られるまで続いたのだった。

 


 

 翌日、ギルドに向かった私たち。

 依頼を受けるために掲示板を見ていた私たちに声をかけてきたのは、受付にいた方だった。その方の案内で私たちはギルド長の執務室に入っていく。昨日は応接間だったので整理整頓されていたが、この執務室はあちらこちらに書類の束が置かれている。ギルド長の忙しさを実感した。

 私たちが入室すると、正面にギルド長、右側に副ギルド長が座って仕事をしている。副ギルド長は私たちを見ると、立ち上がって一礼した。


「ギルド長、お二人が見えましたよ」

「あー、少しだけ待ってくれねぇか? この書類に目を通させてくれ」

「分かりました」

 

 副ギルド長は私たちにソファーへ座るよう告げると、席の後ろにある扉へと入っていく。いくばくかして帰ってきた彼の手元には、お盆が。どうやらお茶を入れてくれたらしい。

 それをテーブルの上に置いてくださったのと同時に、ギルド長が私たちに声をかけてきた。


「呼び出してすまなかったな。依頼を受けようとしていたんだろう?」

「まあ、依頼は後で受けることもできるから、問題ない。それより話を教えてほしい」


 そう彼が告げると、ギルド長は私たちの対面に勢いよく座る。その様子を副ギルド長が絶対零度の視線でじっと見つめていた。それに気がついたギルド長は、彼に謝罪を述べてから私たちへと向き直る。


「昨日捕らえた男たちの件だが……結論から言うぞ? あいつらから情報を取ることができなかった」


 私は驚きで無意識に目を見開いていた。エクスもギルド長の言葉に唖然としている。

 彼は眉間に皺を寄せ悔しそうな表情で続けた。


「そもそもあいつらの記憶がなかったんだ。あの五人の出身はラクロワ領ではないらしいのだが……気づいたらこの場所にいたと騒いでいた」

「ひとつの可能性ですが、忘却の魔術が使われているのではと考えられています。ですが、私でも魔法の痕跡を見抜けませんでした……」


 唇を噛む副ギルド長。彼もギルドに就職する前は、冒険者として活動していたのだとか。ちなみに職業は魔術師だそうだ。


「これでもそこそこ名の知れた魔術師なのですが……悔しいですね」


 そう呟く副ギルド長。彼はそう告げた後、顔をあげて私を見た。


「ギルド長……あの件は……」

「ダメだ、と言いたいところだが仕方ない。了承を得てからだ」


 副ギルド長はギルド長に頭を下げた後、私を見据えた。そして私にゆっくりと言葉を告げる。


「君に見てほしいんだ」

 明けましておめでとうございます!

昨年はこちらの作品を読んできただきありがとうございます٩( 'ω' )و

今年も頑張って投稿しますので、よろしくお願いします。


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