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気づけば全部のフラグをへし折っていた転生悪役令嬢ですが何か?  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第三章 ラクロワ領ガルム編

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33、助けなくちゃ!!

 ロミーさんと別れた後、私たちは久しぶりに魔の山へと向かった。

 エクスに何度も「本当に行くのか?」とくり返し言われたのだけれど、私は冒険者を辞めるつもりはない。まずはできることをしたいと押し切って、採取依頼を受けることにした。


 今回はメンテーという薬草。

 これは常設依頼ではなく、今日掲示板に貼られていたたものだ。元々は、必要になったら薬師の人が取りに行っていたらしいのだけれど、魔の山に黒ライオン――ブラック・ファング――が出たことで、武力を持たない薬師たちが依頼に出すようになったのだとか。

 群生地は森の浅い部分にある。以前行ったカリスの群生地よりも手前にあるらしい。カリスを受けようとしたら、エクスに止められたのでこちらにした。

 

 魔の山の森に辿り着いた私は、一度探索魔法を広げる。以前は魔物がいないと安心し切っていたことも油断に繋がったのだから。

 

 探索魔法に魔力の強い魔獣は引っ掛からなかったため、私は安堵した。どうやら、まだあの時の恐怖は忘れていないのか、緊張で手足が小刻みに震えている。

 隣ではエクスが気遣うような表情を見せていた。私は震える手を握り締め、メンテーの群生地へと歩き出した。


 メンテーの群生地に辿り着いた時、圧倒される。

 その場所は一面メンテーで埋め尽くされており、木以外の他の植物が一切生えていないのではないか……と思えるほど青々と茂っていた。

 座ってそれを一本抜いてみる。すると、爽やかな香りが鼻につく。

 日本でいうミントに似た植物なのかもしれない。香りの清涼感といい、一面覆い尽くすほど群生することといい……。


「この植物はここ以外に生えていたりするの?」


 エクスに訊ねてみる。

 そういえば、カリスの群生地にはこのメンテーは生えていなかったな、と思いながら。ここには少しではあるが、カリスが木に巻き付いている姿も見られた。

 彼は考え込んだあと、言葉を続けた。


「以前聞いた話の上、うろ覚えなんだが……メンテーは周囲の育成条件が厳しいのか、ある一定の地域にしか生えないと聞いたことがある。ただ、好条件の環境であれば、これだけ一気に群生するから助かっているらしいな」

「へぇ、そうなのね」


 この場所はメンテーにとって好条件の場所なんだろう、と私は判断する。


「この周囲はメンテー以外にも、木の実が豊富に拾えると有名だからな。意外と街の人も来ていたりする場所だったはずだ」

「え、木の実? 後で見ても良い?」

「ああ」


 そう言ってメンテーの採取を終えてから、再度探索魔法をかけて確認をする。この場にも強い魔獣はいないようだ。胸を撫で下ろした私は、この後周囲を探索しつつギルドへと帰っていった。

 

 そこから更に何度も採取依頼を受けていた私だったが、その場所に小型の魔物が出ることもあった。

 魔物は日本にいたウサギやカラスに似たような風貌だったので、心の中でストップが掛かるのではないか……と実は不安だったのだが、黒ライオンのお陰だろうか。そこは問題なく倒すことができた。

 以前、ここは日本ではない、ということも再認識できたからかもしれない。それに黒ライオンに比べたら、全然怖くないのだから。



 

 エクスと依頼を再開して二週間ほど経った頃。

 ギルドでも「大丈夫だろう」という空気が漂い始めていた。そろそろ採取依頼以外の討伐依頼も受けても良いかもしれない、と私は思い始める。

 この頃になると、魔の山に着いても手が震えなくなっていた。もちろん恐怖はまだあるけれど、探索魔法を掛けて何度も確認していることが大きいだろう。


 今日は普段よりも遅く魔の山に辿り着いていた。朝、エクスがロミーさんに捕まっていたからだ。

 それでも午前中には魔の山に着くのだから、如何にこの街が魔の山や裾野に広がる森に近いのかが分かるだろう。


 私は普段のように探索魔法を広げる。

 すると、ある異変に気がついた。


 ……手が震える。

 そう、メンテーの群生地近くに、この前の黒ライオンに近い……いや、それ以上の魔力を持つ魔獣らしきものがいるのだから。それに、もうひとつ魔力の強い場所も気になる。

 そのことをエクスに告げようとした時、私は気がついてしまった。


 魔獣らしき魔力の近くに、木の実を取りに来たであろう人たちがいることに……。


 私はそれを理解した瞬間、無意識に走り出していた。

 いつの間にか私の手足の震えは止まり、力強く大地を蹴っている。


 多分、まだ魔獣は木の実取りの人たちには気がついていないけれど……いつ気配を察知するかなんて分からない。

 

 ――助けに行かないと!


 後ろで私の名前を呼んでいる声がする。けれども、後ろを振り返って伝えている時間はない。

 エクスならきっと着いてきてくれる。そう信じて私は走り続けた。


 体感五分ほど走っただろうか。

 強化魔法に加え、風魔法を利用した私の足は今までで一番早かったと思う。再度探索魔法を掛けると、先ほどより魔獣と人との距離が縮まっているような気がした。


 早く、もっと早く!


 私は早く足を動かす。そしてすぐに人の姿が見えてきた。

 二人の周囲には籠と木の実が散らばっている。子どもたちが木の実集めをしていたようだ。


 ……もう既に魔獣と出会ってしまったのか、腰を抜かして地面で震えていた。

 

 更に近づくと、魔獣の全貌が見えてくる。

 簡単にいえば、ところどころ青みがかっているが白いクマだ。大きさはあの黒ライオンと同じ……いや、二足歩行の分、身長はこちらの方が高い。多分討伐ランクはあの黒ライオンと同じくらいだろう。


 白いクマは二人の兄妹しか目に入っていないのか、ニタリと下品な笑みをたたえている。どうやら追い詰めて怖がらせることに興奮しているようだ。

 

 白いクマはゆっくりと近づき、手を上げる。

 危ない、と思った私がもう一歩踏み出した時、やっと私の魔法の射程圏内に二人を入れることができたのだ。すぐに防御魔法を二人の周囲に掛ける。


 それと同時に白いクマは手を振り下ろすが……私の防御魔法によって阻まれた。

 一瞬目を見開いたクマは、何度も何度も両手を振り下ろし、防御魔法に攻撃する。けれども私の魔法を破ることができなかったようで、地団駄を踏んでいた。


 それを見た私は胸を撫で下ろす。

 無事に子どもたちは守れたらしい。


 ――けれども、ここからが正念場である。

 

 白いクマは私が魔法を掛けたことに気がついたらしい。苛立ったような表情で、私に牙を剥いていた。

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