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気づけば全部のフラグをへし折っていた転生悪役令嬢ですが何か?  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第三章 ラクロワ領ガルム編

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27、そんなこと、言われるとは思わなかったわ

 無事に転移陣に辿り着いた二人は、そこに描かれている魔法陣に魔力を込めると転移した。目を開けていられないほどの眩しい光に包まれた私は、思わず目を瞑る。そして瞼の裏に届いていた光がなくなった頃に、恐る恐る目を開けた。

 転移は成功した。

 今回魔法陣のあった場所は洞窟内だったらしい。明かりが点いていないため、私はすぐに光魔法で周囲を照らした。フォレスタの街に通じる魔法陣は、木々の間の草が雑多に生えている場所にあったので、目新しく感じる。

 薄暗い場所から出ると、木々の隙間から漏れた太陽の光が顔へと当たった。目を細めて空を仰ぐと、ジャックさんの小屋でも見えていた青空が広がった。

 ここから改めてスタージアの夢と、私の夢を叶えるための旅が始まるのだ。


 スタージアは言っていた。海とか、湖とか、森とか……色々な場所に行きたいと。

 その一歩がここから始まるのだ。私の心は期待に胸を躍らせていた。

 

 しばらく歩いていくと、街が見えてくる。

 エクス曰く、ここはラクロワ伯爵家が治める領地なのだと言う。ラクロワ領にはダンジョンと呼ばれる魔物の住処があるらしく、冒険者の多くはその街に暮らしているらしい。

 このラクロワ伯爵家はダンジョンの管理以外にも、代々騎士団長クラスの指揮官を輩出しているとのこと。


「ラクロワってどこかで聞いたことがあるような……?」


 私がそう首を傾げていると、エクスがなんて事のないように話す。


「聞いたとするならリック・ラクロワ伯爵令息のことだろうな。同年代のはずだから……儀式の時にいただろう?」


 そう言われて私は思い出す。軍服を着ていた男性が、ある令息に声をかけていたことを。

 

「あ、軍服を着て……右手右足が同時に出ていた人のこと?」

「右足と右手が同時に出ていた……?」


 訝しげにエクスが聞いてくるので、実演しつつ、緊張している時にそういうことをする人もいるのだと言っておいた。一応それで納得したのか、エクスは話を続ける。


「ラクロワ家は特殊な家系らしく、一番強い者が領地の管理を行い、次点の強者が騎士団へと入団すると言われている。ダンジョンで一定の周期で起こる魔物氾濫を抑えるために、領地には強い者をおくべきとされているらしい。現在は長男が領地を、次男であるリックが騎士団入りだろうと噂されていると聞いたことがある」

「へぇ、エクスは物知りなのね」

「お嬢様に仕える時、少し勉強したからな」


 そう言って私を一瞥するエクス。

 スタージアの護衛も大変なのね……そう伝えると、彼はきょとんとした顔で私を見た。


「いや、意外と面白かったぞ。知らない世界のことを知られるからな」

「エクスって意外と勉強家なのね……」

「意外は余計だ!」


 私とエクスの目が合う。思わぬ形で見合った私たちから、笑いが漏れた。

 


 

 ラクロワ領で魔の山に接している街はガルムと呼ばれているそうだ。この街は領主であるラクロワ家が暮らしているラクリスの街から一日ほどの場所にある。魔の山から降りてくる魔獣をラクロワ家が対処できるようにと、一番近い場所に街が建てられたのだという。

 私たちは一番にギルドへと向かう。依頼掲示板を確認すると、採取依頼・討伐依頼・護衛依頼……様々な依頼が貼られている。最初は採取依頼をしようと決めた私はエクスに声をかけて宿を探そうとしたのだが、その前にエクスから提案された。


 この街ではギルド運営の宿が併設されているという。そこは他の宿と比べて安いのだが、男女分かれており治安がしっかりしていると。泊まることができるのは、カードを所持する冒険者限定。食事は付いてはいないが、自炊できるという。

 どうやら、魔の山の魔獣の素材が高く売れるらしい。けれども、大抵の冒険者はどうしてもダンジョンのあるラクリスの街へと行ってしまい、人手不足なのだとか。そのため、冒険者に居着いてもらえるようにギルドが始めたことなのだそう。

 

 そんな仕組みがあるのだな、と私は思う。それに安くて治安が良いのはありがたい。私は二つ返事でギルドへと宿泊することにした。


 


 部屋を借りた私は、一度エクスを分かれ自分の部屋へと向かう。割り当てられた部屋は、六畳ほどの部屋だ。大学生の一人暮らしで借りるくらいの部屋、と言っても良いだろうか。

 服をかけるために使われているであろう埋め込み型のクローゼットと、ベッド、小さな机が置かれている。鍵もかかるし、仮住まいとしてなら充分だ。


 その後ギルドの二階に併設されているソファーに座っていた私。どうやら二階は休憩スペースらしく、この時間は閑散としている。そこに現れたエクスは周囲を見て誰もいないことを確認すると、私だけに聞こえる程度の声で話しかけてきた。


「そういえば、相談なんだが……この街で一旦杖を見に行かないか? 正直、その杖の価値を知っておいた方が良いと思うんだが」

「……そうね……」


 ローブは認識阻害の魔法がついてるし、最初は他の魔法もつけようとしたジャックさんだ。

 杖も何かしらあるような気がする……いや、あるに違いない。


「ダンジョン産が一番使いやすいと言われているが、魔の山の魔獣や木から使われている素材も使いやすいと言われているからな。やばい杖だったら、普段使い用の杖を一本購入したらいい」


 そう言われて、私も頷くけれど……まあ、お察しの通りお金がないのだ。

 明日から採取に行くので、その後でもいいのでは? と狼狽えながらも伝えたのだけれど、そんな言葉を私が言うのはお見通しだったようだ。


「今更杖の値段が増えたところで、俺はまだお金が余ってるし問題ないんだが……マリはそういうところ()しっかりしてそうだからな」

「は、は余計じゃないかしら?」

「さっきのお返しだ」


 ニヤリと笑うエクスに、私は唇を突き出した。さっきのお返しと言われてしまったら、何も言い返せない。


「まあ、俺はいつでも待つからゆっくり返してくれればいい」

「エクスってそういうところ寛容よね……」


 こんな優しくていいのだろうか、と思ったのだけれど、首を傾げた私に彼は目を丸くしていた。そして私の言葉が呑み込めたのか、笑いだす。


「マリは信頼してるからな。俺は人の見る目だけはあるって言われたし」

「えっ」


 思わぬ言葉に、私は無意識にエクスを見ていたようだ。口を開けている私に、彼は笑った。


「はは、変な顔になってるぞ?」

「変な顔は酷くない?」


 眉間に皺を寄せた私に、エクスは「ごめん」と軽く謝る。こんな気さくな関係も悪くないかな、なんて私は心の中で思っていた。

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