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気づけば全部のフラグをへし折っていた転生悪役令嬢ですが何か?  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第三章 ラクロワ領ガルム編

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25、国宝級のローブは無理だよ……?

 冒険者登録を終えた私は、ジャックさんの家へと帰ってくる。

 そしてエクスがざっくりとギルドであった事の顛末を話すと、彼は顎に手を当てて考え込んでいる。私とエクスはその間、話を続けていた。


「なんで私、絡まれたのかな?」

「まあ、あの時受付嬢が二属性と漏らしたからだろうな」


 エクスが肩をすくめて話し始める。


「二属性を使いこなせる魔術師はあの街だと珍しいからな。それを狙って……とあわよくば、と言うのはあるだろうな」


 エクス曰く、受付嬢は本人の名前と職業以外の個人情報を口に出すのは禁止されているのだが……今回彼女は私が二属性であることを声に出してしまった。そのため、彼女も今頃ギルド長に注意を受けているのではないか、ということだ。

 そもそも、職業魔術師と書くだけで良かったらしい。私も余計なことを書いてしまったようだ。

 「それは俺も言っていなかったな、すまない」とエクスに謝られたけど、私も受付嬢さんとか、その時は近くにいたエクスに聞けば良かったのだ。私の落ち度でもあると思う。

 そう話していると、ジャックさんが顔を上げた。


「それにひまりさんは可愛いからねぇ」

「確かに、スタージアは綺麗ですよね〜」


 彼の言葉に私は納得した。

 乙女ゲームの悪役令嬢だからなのか……私から見ても顔が良いと思う。中に入っているのが、私で申し訳ないくらいだ。私だって、日本にこんな綺麗な子がいたら、お近づきになりたいと思うし。

 きっとさっきの人たちもそんな心境なのだろう……いや、あれはどう見ても下心しかなかったな、うん。

 

「それよりも、個人情報はこの世界でも守られているんですね」

「そうだね、昔はそこまででもなかったらしいけど……色々あって厳しくなったと聞いたことがあるよ」


 ジャックさんも先代師匠に聞いたらしい。

 そうだよね、日本だって個人情報について厳しくなったのはここ数十年の話だし。事件があって、規則ができるのはあり得る話よね。そんなことを考えていたら、ジャックさんは何かを思いついたのか「ちょっと待ってて」と言って奥へと去っていった。

 私は彼の背中を見送っていたのだが、しばらくしてエクスが呟いた。


「ただ、あの街で冒険者をするのは避けた方がいいかもな」

「え、そうなの?」


 私は目を丸くする。

 

「ああ。マリが二属性だと言う話は、あそこで何人か聞いていた。まあ、俺がいるから手出しされることはないと思うが……。それに得意属性は二属性だが、実際マリは四属性全てを使えるから、それがバレたら延々と勧誘されるだろうな」


 私は頭を抱えた。そうだ、ジャックさんも言っていたではないか。

 現在私たち以外の人は、測定器で判明するのは『使用できる属性』だと思っているのだ。実際は『得意属性』なのだが、それを知る者はほぼいないと断言してもよさそうだ。

 その中で私が全属性使える、と知られてしまったら……あれか、運動神経の良い人がひっきりなしに部活動へと勧誘される、みたいな?


 あの場には書いていないが、そういえば聖属性も持っているのだ。そう考えると、私の存在がすごく感じる。


「実際凄いんだよ」


 口に出していないつもりが、無意識に出ていたようだ。呆れたような表情でエクスが、長いため息をつく。


「まあ、そうか。マリは魔法のない世界にいたから仕方ないか……とにかく、仲良くなった人以外に言う時には、今度からは一属性にしておくといい。森の中で使いやすいのは水だろうから……水属性が使えると言っておけばいいんじゃないか?」

「確かに、一番得意なのも水かもしれない……」


 水道の蛇口みたいに水が出てくるのが面白くて、沢山水の魔法を使ったのよね。一番得意な属性は火ではあるんだけど……依頼は森の中が多いから、どうしても火を使うと山火事とか森火事が怖くて使えないのよ。


「冒険者ギルドでこれ以降属性を聞かれることはないだろうが、気をつけておけよ?」

「うん、分かった。ありがとう」


 自分がいかに規格外であることに気付かされた私は、気合を入れるために両手を握りしめた。


 そんな話が一旦終わった頃、部屋の奥にいたジャックさんが戻ってくる。

 ジャックさんの手には、一本の杖と黒いローブがあった。彼はテーブルにそのふたつを置いて椅子へと座る。


「ひまりさん、一応これを持っていくといいよ。魔術師は普通杖を使って、魔法を使ったり、魔法陣を描いたりするから」

「ありがとうございます!」

 

 私は感謝を告げたあと、杖とローブを手に取ってみた。どこかで見たことのあるような杖とローブだな、と思っていたが……そう、世界的なベストセラーを叩き出したあのシリーズの映画に出ていた物とそっくりなのである。杖は短めではあるが。

 私は早速ローブを羽織り、杖を持ってみる。まるで私のためにあつらえたのか、と言うくらいぴったりだった。


 ジャックさんはふにゃりと笑う。


「ちょっとローブには色々つけてみたよ」

「色々……?」


 エクスは不思議そうな、何かを疑うような声で呟く。師匠であるジャックさんのことが信用できないらしい。エクスが訝しげな表情でジャックさんを見ていると、彼は楽しそうに話し始めた。


「そうだねぇ、浄化の魔法と、軽い認識阻害の魔法と……あと自動修繕の魔法くらいかな?」


 私は凄いなぁと思ったあと、首を傾げた。

 浄化の魔法と、認識阻害の魔法と……ん、あれ……みっつもついてる?

 呆然としていた私より先に反応したのは、エクスだった。


「師匠! 流石にそれは付け過ぎだ! 国宝級のローブになってるぞ!」

「……え?」


 エクスの言葉に私は耳を疑った。

 コクホウキュウ? 漢字に変換すると、国宝級? いやいや、まさか私ごときにそんなそんな……。

 言葉を理解した私は、悲鳴にような声を上げた。


「えええええ?! いやいやいやいや、これは流石に着られないですって!」

「えー、これでも減らしたんだけどなぁ」


 口を尖らせるジャックさん。いや、可愛らしい仕草に騙されてはいけない……! 逆に盗まれそうで怖い。そう話したら、「じゃあ盗難防止の魔法陣を……」と言い出したので、私とエクスは「やめて!」と叫んでいた。

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