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気づけば全部のフラグをへし折っていた転生悪役令嬢ですが何か?  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@第8回ESN大賞奨励賞受賞
第一章 公爵家追放編

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 それから一週間は、魔力操作の練習だった。最初は身体を動かす部分へと意識的に魔力を集めたり、手以外の場所にかき集めてみたり……ジャックさんの教えてくれた事を意識的にやっていく。

 ずっと訓練していたからだろうか……数日経つと、あまり意識せずとも魔力をひとつの場所に集中させる事ができるようになっていた。

 それを見たエクスが「お嬢はやっぱり規格外だな……」と呟いていたので、どうやら凄いらしい。


 ジャックさんにはこれを毎日続けていくと、精度が上がっていくと言われたので、これからも続けていくつもりだ。


 そしてついに魔法を使う日が来たのである。


 その日はまた、家の裏にある広い空き地……二人は裏庭と呼んでいるらしい。その裏庭に私とジャックさん、エクスがいた。

 エクスも久しぶりに基礎の確認をしたいと、ジャックさんの魔法講座には参加する事にしたようだ。


「今日から実際属性魔法を使うんだけど……ひまりさんは、筋が良いとは言え、まだ初心者だ。もし練習したい場合は、エクスか私のどちらかを伴って練習するようにね?」

「分かりました」

「……お嬢は暴発とかしなさそうだけどな」


 エクスの言葉に私は恐れ(おのの)いた。暴発って何?! 怖くない……?

 その後教えてもらったけれど、魔力操作を失敗する時に起こるらしい。魔力を込めすぎて、魔法がうまく発動しなかった場合、魔力が暴走して爆発する事があるんだとか。


「エクスか私なら、その暴発が起こるのを察知して防御魔法を張れるからね。ひまりさんを守る事ができるよ。規模にもよるけど、暴発したら腕が無くなった人もいるから、気をつけないとね」

「あ、ありがとうございます……」


 魔法って怖い……けど、確かに日本だって正しい用法を守らないと危険だって道具もあったもの。それと似たようなものよね、きっと。私の顔から血の気が引いていたらしく、ジャックさんは私をなだめるかのように優しく話しかけてくれた。

 

「大丈夫だよ。最初は私も付いて教えるから。ひとつひとつやり方をゆっくり覚えていけばいいからね?」

「師匠、お嬢に対して優しくないか? 俺の時とは全然違う気がするんだが……」


 ぶつくさと呟くエクスの話をまとめると、彼の時は何度も何度も身体に叩き込まれたらしい。私が一週間訓練していた魔力操作も、エクスの時は一ヶ月以上かけて行っていたとか。

 

「エクスは魔法の仕組みを話しても理解できていなかったからだね。身体に叩き込むしかなかったんだよ。ひまりさんはきちんと話せば理解できる、そこの差かな?」

「……確かに今聞けば理解できるが、あの時に理解は……いや、無理だな」


 ジャックさんの話にエクスは納得したらしい。その事実を受け入れたエクスと共に、私たちは魔法の発動の仕方をジャックさんに学んだ。



「そうそう、上手だね。手に魔力を集めながら、使いたい魔法を頭の中で想像するんだ。精度が高ければ高いほど、魔法の威力も上がるし、魔法の発動速度も早くなる。得意属性はそれが大雑把でも意外となんとかできるんだけど……それ以外の属性は頭の中でうまく思い描ければ描けるほど、上手く使えるようになるよ。だから、得意属性であっても、イメージは大切にね」

 

 現在私は、得意属性である水魔法から行っていた。最初に行うのは、魔力を利用して水を出す魔法だ。

 最初は全てに詠唱が必要なのかと思っていたれど、単に水を出す、火を出すだけだったら詠唱は要らないらしい。これを生活魔法と言うのだとか。

 ジャックさん曰く、生活魔法も攻撃魔法も規模が違うだけで一緒なんだけどね、と言っていた。なるほど、世間では生活魔法と攻撃魔法は違うものだと認識されているらしい。


「何故、生活魔法だと詠唱は要らないんですか?」

「詠唱は想像が足りない場合の補強のためのものなんだ。だから実は頭の中で魔法を思い描く事ができれば、詠唱は要らないんだ。水と火は大抵の人が幼い頃から見ているから、描き易いんじゃないかな?」


 考えればそうよね。水だって幼い頃から触れてきているし、この世界だとかまどを使っているらしいから、火もよく見ているよね。


「エクスも昔は詠唱を唱えていたけど……今は違うよね?」

「ああ、俺もよく使う魔法は最低限の詠唱にしている」


 じゃあ、私は結構日本で漫画やアニメを見てきたから、詠唱がなくても使えるかもしれない……と思うけど、最初は心配だから詠唱は必要かも。

 ん、ちょっと待てよ?

 

「あれ、もしかしてイメージさえできれば、新しい魔法を作る事もできるんですか?」


 今の所どんな魔法があるかなんて知らないけれど……もしかしたら、この世界にない魔法があるかもしれないじゃない?

 あのアニメのアレとか、コレとか、ソレとか使いたいなって思う魔法は一杯あるのだけれど……。

 期待の目でジャックさんを見ると、彼は最初目を見開いていたが、笑い始めた。


「そうだね。想像が大事だからね。けど新しく作り出すには、正確に思い描かないといけないからね。練習あるのみかな。それでも生涯でひとつ……ふたつできたら凄いと言われているよ」

「……この顔は作る気満々の顔だな」

「だって、魔法を使うのが前世の夢だったのよ? 叶う可能性がなかった夢が、まさかの今叶えられるんだから嬉しいのよ!」

「そう言えば、前世は魔法の使えない世界だって言っていたな……」

 

 子どもの頃の憧れよね! 夢見たものよ……魔法で宿題やってもらえないかなーとか、重い荷物が軽くならないかなーとか。

 エクスと話していると、ジャックさんが声をかけてきた。

 

「それは良かったよ。さて、ひまりさん。そろそろ集中しようね。魔法の発動は危険だから」

「あ、はい! 分かりました」


 そして私は魔法の発動に集中していった。

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