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気づけば全部のフラグをへし折っていた転生悪役令嬢ですが何か?  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@第8回ESN大賞奨励賞受賞
第一章 公爵家追放編

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 私はジャックさんの言葉に目を丸くする。私を守るとは、どういう事?


「確かひまりさんは言っていたね? 『儀式で使用した測定器が光らなかった』と」

「はい」


 成人の時に行われる、魔力量や使える属性を調べる儀式。

 あれで魔力なし判定になった私は、公爵家から追い出されたのよね。あの時は、「ヒャッホー!」って喜んでいたけれど、これがスタージアと関係があるってどういう事? 私は首をひねる。

 私が疑問に思っているだろうと察しているであろうジャックさんは、すぐに教えてくれた。


「多分、その理由は『スタージアくんの魂が、ひまりさんの魔力を外に出さないよう、守っていたから』じゃないかな?」

「……え?」

「私はこれでも賢者と呼ばれていてね。相手の魔力量を大体推し量る事ができるんだ。ひまりさんの魔力量は……非常に多い」


 その言葉に私は目を見開いた。

 つまり、私の体内には魔力が存在する……しかも大量だけれど、スタージアの魂によってそれが封じられていた、という事らしい。そう訊ねれば、ジャックさんは頷く。


「そういう事だね。あの儀式に使用する測定器の仕組みは、体内から漏れ出る魔力によって判断しているんだよ。分かりづらいと思うから、例えると……ひまりさんを箱とするならば、スタージアくんが鍵なんだ。箱の中の物を取ろうと手を伸ばすけれど、鍵が付いていると箱の中の物は取れないだろう? それと同じ現象が儀式で起こったって事だね。ただ、何故スタージアくんの魂がそれをしたのかは分からないけど……ひまりさんが『貴族籍を抜けたい』って想いが強かったのなら、それに呼応したのかもしれない」

「スタージアが……」


 私は周囲を見回す。ジャックさんが言うには、まだ私の周りにスタージアの魂の気配があるらしい。確かにスタージアの魂が私の魔力を隠していなければ、私は公爵令嬢として学園へと通う事になっていただろう。

 正直、学園に通う必要がなくなってありがたかった。けれど……まさか、それがスタージアのお陰だったかもしれないなんて。


「……ありがとう。あなたのお陰で私の死亡フラグが遠のいたわ」


 誰にも見えないけれど、魂がそこにいると信じて、私はそっと微笑んだ。



 翌朝、早い時間からジャックさんは「準備にはいくつか必要な物があるから」と小屋を出ていく。小屋を出る前にジャックさんはエクスにも何かのメモを渡していたので、どうやら儀式に必要な物の準備を頼まれているようだ。

 ジャックさんが出ていくと、エクスは大きなため息をついた。


「エクス、どうしたの?」


 メモにはいくつかの名前が書かれていた。私が見ても、それが何なのかは分からない。

 必要な道具がどんな物なのか分からないのかな? と思ったのだけれど、そうではないらしい。エクスはもう一度ため息をついた。


「あの倉庫に行くのが嫌だ……」


 

「なるほど、これは……すごいね?」


 エクスのため息の理由が分かった。倉庫は物が散乱し、足の踏み場もない。この中から探すのは、なかなか大変なのではないだろうか。

 壁には棚もついているけれど……置かれている、というよりは突っ込まれていると言った方が正しいかもしれない。


「師匠は……昔から……整理整頓が苦手なんだ。俺がいない間、それを心配していたんだが……案の定だな……。幸い、危険物とそうでない物は分けているようだから、片付けるか……」


 遠い目をしているエクス。確かにこれは腕がなるよねぇ。


「私も手伝うわ」

「ああ、助かる。右奥は危険物で俺が片付けるから、左側を整理してくれるとありがたい」


 こうして、エクスと二人で物探し兼片付けが始まったのだった。


 しばらくして、ある程度片付けが終わった頃。

 頭から血を被ったジャックさんが帰ってきた。なんでも、魔法陣を描くのに必要なインクを作成するための花を取ってきたんだとか。その途中で現れた魔物を倒した時に、血を浴びたのだと言う。

 ジャックさん自身は浄化魔法を使えるそうなのだけれど、何度も掛けるのは面倒臭いからと毎回そのままで帰ってくるらしい。


 エクスがまたまた大きなため息をついてジャックさんに浄化魔法を掛けると、彼は満面の笑みでエクスにお礼を告げた。ジャックさんの感謝にまんざらでないところ、かわいいなと心の中で思う。


 採取した花も見せてもらったが、青く透き通っている。その中心には、まるで星の欠片を閉じ込めたような光の粒が宿っている。まるでガラスで作られたように美しい……いや、ガラスよりも繊細なのかもしれない。指で触れるだけで壊れそうだもの。

 この花を煎じた液といくつかの材料を混ぜ合わせて、魔法陣を描くのだ。


「本当に規格外だな、師匠は」


 肩をすくめたエクスが教えてくれた話によると、この花はリュミエールブルームと言って、この大陸最高峰の山の頂上にしか生えない花らしい。しかも、その山はこの山以上に危険な魔獣が多数生息しており、入山した者は帰ってこないという言い伝えから『死の山』と呼ばれているのだとか。

 この花も採取難易度が非常に高く、普通に茎を折ってしまうと光の粒になって消えてしまうのだとか。


「だから形状を保っている一瞬の間に、時間停止魔法を無詠唱で掛けてるんだろ?」


 エクスの言葉に私は耳を疑った。

 なんて事ないように微笑むジャックさん。そうね、エクスの言う通り規格外な方だわ。

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