絵本の住人
ある日の事。
赤い頭巾の似あう少女は母に頼まれ
おばあちゃんの家に向かっていました。
そしていつも通り寄り道をして狼に話しかけられました。
「また花を摘んでるの?向こうにもっと綺麗な花があったよ」
「いつもありがとう。教えてくれたのね。また行ってみるわ」
少女は慣れた足取りで綺麗な花があるところまで歩き始めました。
狼も又慣れた足取りでおばあちゃんの家まで歩き始めました。
狼はおばあちゃんの家に着くと
おばあちゃんがいつも同じようにベットで寝ていました。
「あら、狼さんまた来たの?今日も食べていくんでしょ」
「おばあちゃん今日もいただくよ」
狼はいつもと同じようにおばあちゃんを丸飲みしました。
おばあちゃんを飲んだ後、
狼は慣れた手つきでおばあちゃんの恰好に着替えました。
すると花を摘んできた少女がおばあちゃんの家に着きました。
「おばあちゃん、また聞いても良い?」
「また質問かい、いいよ。質問してごらん」
「どうしておばあちゃんの耳はいつも大きいの?
「またその質問かい。それはねお前の声が良く聞こえるようにだよ」
「どうしておばあちゃんの口はいつもそんなに大きいの?」
「またその質問かい。それはねお前を丸飲みするためだよ」
少女は昨日と同じように狼に丸飲みされました。
おしまい。
「ままーまたこの絵本読んでよぉ」
「またそれ?いつも本の途中で寝ちゃうくせに好きだねぇユウ君は」
(きっと少女は彼のせいで
本当のおばあちゃんの顔を忘れてしまったと思う。
絵本の住人たちも飽きただろう。つまらない劇を繰り返すのは。)