プロローグ
300年前、大陸同士の大きな戦争があった。
勝利と栄光を重んじる軍事帝国「アークライト」と、自由な文化を誇る「ソレイユ連合王国」の前身である国との間で繰り広げられた、大陸の覇権を巡る争い。
その戦火は、当初中立を保っていた小さな島国にも容赦なく広がった。
強大な魔力の源「ティダー」とその地の高度な魔法を我が物にしようと、帝国は懐柔と脅迫を執拗に繰り返した。
さらに、信頼していたはずの海洋王国「ヴァルナ」にも裏切られ、四面楚歌となった島は、戦火の中心で多くの血を流した。
この地に、後に伝説となる一人の天才魔法使いがいた。
その名を、アイセリア。
ティダーの恩恵に頼らずとも大国と渡り合えるほどの、後にも先にも現れることのない絶大な魔力を持つ彼女は、これ以上仲間を失うことを良しとしなかった。
散っていった仲間たちの意志が眠るティダーを守り、残された民が安寧に暮らせる未来のために。
彼女はたった一人で、戦争ではなく退避の道を選んだ。その絶大な魔力をもって島を大地から切り離して空へと浮上させると、二度と外部から干渉されぬよう巨大な魔法により結界で閉ざしたのである。
その偉業と彼女の名を冠した空中都市、それが現在のアイセリアである。