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It's top secret!  作者: 八嶋 黎
1章 RemembeЯ編 (全46話予定)

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第25話 救援の到着

 キィン、ガキン、と金属同士がぶつかり合う音が響く。

 広い室内で音が反響するが、合計3組が戦っているためさらに音数は増えていた。


「――ぐ……っ!!……っああ!!」


 FBI top secret 001の十字石(じゅうじせき)は距離を取り体勢を立て直そうとするが、レヴィは猛攻をやめない。レヴィのナイフは十字石を捕らえ続ける。


「――十字石!!」

「え?よそ見してる暇、あるの?――ほらほらぁ~!!」

「――ぐっ!!」


 FBI top secret 003の黒曜石(こくようせき)(通称:黒磨(こくま))が十字石を心配するが、リゼットに銃剣で追い込まれてしまう。



 ――やっぱり、強い!強すぎる……!!!



 黒磨(こくま)は必死に棒を振るい、防御に徹することしかできなかった。



「――っらぁ!!」

「あら、怖い」


 埒が明かないと判断したのか、十字石は先ほどまで使っていた短剣をしまい、粛清時の得物であるモーニングスターを取り出し振るう。

 だが、レヴィはいとも簡単によけ、手に持ったナイフで更なる猛攻を繰り出した。



「――は!!」

「……っ!!」

「……それだけ?」

「わあぁ!!」


 フレデリックの攻撃をFBI top secret 002の霧雨(きりさめ)が受け、RISA(リサ)の攻撃をFBI top secret 007の斎槻(いつき)が受ける。



 ――嘘でしょ!?フレデリックはWählen(ヴェーレン) Leute(ロイテ)じゃないのに……!!



 霧雨が焦るのも当然の事。フレデリックの実力は高く、霧雨と拮抗していた。

 RISAは本気を出していないようで、斎槻とのんびり模擬戦をしているように見えた。



 (しのぶ)と訓練したとはいえ、RemembeЯ(リメンバー)とは実力差がありすぎる。【Cチーム】は苦戦を余儀なくされていた。



 そこに再び足音が響いてくる。


「どんな感じ――?……って。まぁ、相手にすらなってないわな。知ってたけど」


 登場したのはエルダとフェルド。2人は手にそれぞれの得物を持ちながらゆっくりと歩いてきた。


「あ、エルダ!達者なのは口だけって感じぃー!うける」

「ええ、本当に。……邪魔よね。やっぱり、殺しましょう?」


 リゼット、レヴィがそれぞれ闘いながら言葉を返す。RemembeЯ側にはかなり余裕があるように見えた。


「んー……。終わったから来たけど……どうする?」

「相手になっていませんね。早く帰りましょう」


 エルダの問いに、フェルドが返す。


「そうだな。まぁ、この辺でいいだろう。……おい、帰るぞ――!?」


 フレデリックが意見をまとめ、帰還の判断を下そうとしたとき、1本の医療用メスがフレデリックの眉間を目がけて飛んできた。


「――ミスターフレデリック!?」


 リゼットが目を丸くしつつ危険を知らせると、今度はリゼットの眉間にクナイが飛んでくる。

 更に同じようなタイミングで、レヴィの眉間にも持ち手がブルーブラックのナイフが飛んできた。


「――っ!!」

「うわ!!」

「きゃ!」


 3名それぞれ得物を避けるが、驚いた表情で得物が飛んできた方向を見る。

 そこには4名の少年少女――追加派遣された【Bチーム】が固まっていた。



「――へぇ?帰るなんて言わないで、僕たちも混ぜてよ。……一応、援軍なんだ」

十字兄(じゅうじにい)霧兄(きりにい)黒磨兄(こくまにい)!無事ですか!?」

「仲間が殺されたら寝覚め悪いんだよ」

「これ以上やるなら、私たちが相手になるです」



 ICPO top secret 003のDr.殺死屋(ドクターころしや)、FBI top secret 005の鬼火(おにび)、ICPO top secret 002の紅忍(くれないしのぶ)、腕に【うしゃぎ】を抱えたICPO top secret 009のΣ(シグマ)が戦闘に口を挟んだ。



「鬼火と……知らない奴らだな」


 エルダは鬼火を見つけ、その他の3人を見て不思議そうな顔をした。


「……悪いけど、エルダ――君の相手は僕だよ」

「ん?俺!?いや、もう帰ろうと――!?」


 殺死屋は一気に距離を詰め、エルダに斬りかかる。

 エルダは何とか攻撃を双剣で弾き、距離を取った。


「……は?」


 エルダの目は見開かれている。

 理由は明確。攻撃が重く、腕がびりびりと痺れているのだ。しかも、早かった。尋常じゃないくらいに。


「……ここじゃ人も多いし――隣、行こうか」


 殺死屋はそう言い、エルダに向けて猛攻を開始する。


「……!!クソッ!!」


 激しい猛攻で余裕がなくなったエルダは焦りながら後退し、殺死屋の思惑通り隣の部屋に繋がる通路に出なければならなくなる。

 殺死屋は一気に攻め、エルダを1つの部屋に追い込んだ。



 その光景にRemembeЯ側は驚愕する。まさか、エルダが押されるとは思っていなかったのだ。


「嘘でしょ……?あのエルダが――……っ何――!?」

「――チッ!」


 RemembeЯ側が廊下の方向を見つつ呆然と立ち尽くしていた隙に、鬼火はリゼットに距離を詰め、バタフライナイフで斬りかかる。だが、防がれてしまい、鬼火は舌打ちをした。


「さて。俺は――」

「おやおや。援軍はなかなか楽しめそうですね。……私が相手になりましょう。2対1でいいですよ」


 忍が相手を探していると、フェルドが前に出てきた。どうやらこちらを舐めてかかっているらしい。


「……なら、お言葉に甘えて」

「……私たちも別室に行きましょうか」


 Σの言葉にフェルドは軽く微笑み、(うやうや)しくお辞儀をする。

 フェルドの案内で忍とΣは隣室へと移動し、適当に構える。


 フェルドは口から炎を出し、始めましょうと言った。



 忍はフェルドの様子を見て、相手の情報を整理する。

 フェルドはエリックさんからの情報によれば【元奇術師】の男だ。

 是非、ICPO top secret 006の人食い(カニバリズム)と戦ってほしい相手だ。……導火線に付ける炎、戦闘中に調達できるじゃねーか。勝ち確定だろ。



「どこからでもどうぞ。レディファーストです」


 フェルドは紳士としての振る舞いを忘れない。


 だが、この2人にはその態度は逆効果。火に油を注ぐ結果にしかならないが、フェルドが知る由もない。

 忍とΣは笑みを浮かべ、舐め腐ってきた相手(フェルド)を地獄に叩き落とすことにした。



 ---------------



 エルダは今までにない程焦っていた。

 殺死屋に数回切りかかり、違和感を感じる。どう見ても互角だったし、何ならちゃんとした武術講師が付いている分、殺死屋の方が上手(うわて)だった。



 ――薬で強化された俺と互角だと!?



 殺死屋が何となく仲間――Wählen(ヴェーレン) Leute(ロイテ)であることは分かる。

 だが、何かとてつもなく奇妙な違和感が……物凄く気持ち悪い感覚に陥る。



 ――まさか、こいつも強化兵??



 だけど、色が変わっていない。


 目の前に居るのは【こげ茶の髪色】と【同系色の瞳】の少年だ。被検体関係なら、黒や茶髪はあり得ない。

 西洋人ならエルダのような派手な色にならないと分かりにくいが、東洋人なら見た目で一発で分かるのだ。要は黒髪黒目近辺から外れている人間を探せばいい。


「――っ!!」


 エルダは焦りつつ本気を出す。

 だが、殺死屋も同じように本気を出し、ちょっとした手合わせと言わんばかりに斬りかかる。

 どれだけ斬り合っても互角。決着は着かない。



「ふふ……相変わらずみたいだね」


 殺死屋は手合わせを止め、ひらりと後方へ飛び、エルダと距離を取る。


「あ゛?――誰だ、テメェ」


 エルダも距離を取り、いつでも斬りかかれるよう双剣を構える。

 まるでエルダを昔から知っているかのような殺死屋の口ぶりに、エルダは殺気立った。


 気味が悪すぎるが、エルダを知っているとすれば、あの施設関係者だ。



 ――人体実験していた側の関係者なら、絶対に殺さねば。次の被害者が生まれてしまう。



 エルダは双剣を構える手に力を入れ、殺死屋の前面に飛び込もうとする。――が、殺死屋が放った次の言葉でその動きをすんでで止めることとなる。


「久しぶり、エルダ君。……元気そうで安心したよ」

「――え?」


 殺死屋が見せるどこか儚い笑みに、どことなく見覚えがあった。



 ――まさか……。いや、そんなはずはない!違うだろ……!?



 エルダは目の前に居るのが【彼】じゃないかと混乱する。

 だが、絶対に違うはず。【彼】とは色が違うから。


 エルダは見覚えのある面影に混乱しつつも、目の前に居る殺死屋を注意深く見つめ続ける。すでに殺気は霧散していた。



「……久々の手合わせはこのくらいで()めて、ちょっと話そうか」



 殺死屋は頭に手を当て――《《常日頃から装着していたウィッグを外した》》。その後、袖をまくり、左上腕に巻いていた包帯を外す。


「――……!!!」


 見覚えのある見た目と左上腕の刻印に、エルダは目を見開いた。



 ---------------



「――は……っ!!?」



 ――あり得ない。何だ、コイツら!?



 RemembeЯの一人、フェルドは戦闘中に冷や汗をかいていた。


「――ふっ!」

「――!ぐ……っ!!」


 忍が放つ攻撃はどれも鋭く、フェルドはギリギリの戦いを強いられていた。

 忍の相手だけでも苦しいのに――!!?


「――クソッ!!」

「あ、バレました……。残念です」



 横から体力面を考えないのであれば同じくらいの実力を持つであろう、真っ赤なスーツの女が攻撃を仕掛けてくる。

 あっちで戦っているやつらは全員簡単そうだったのに、なぜかエルダの居る室内とここだけ激戦区になっていた。


他所見(よそみ)してんじゃねぇよ」

「――!!何なんだよ、クソが……っ!!」


 忍の猛攻にフェルドは悪態をつく。


 フェルドは余裕がなくなり、どんどん口調が荒くなる。

 Wählen(ヴェーレン) Leute(ロイテ)だと判明する前に奇術師(マジシャン)として活動していたときのままの紳士キャラで生きてきていたが、もう致し方ないだろう。



「お前ら……まさか――」

「ICPO top secret 002番の紅忍(くれないしのぶ)だ。まぁ、覚えとけ」

「ICPO top secret 009番のΣ(シグマ)です。はじめまして」

「違う!そうじゃない!――うわっ!!?」


 忍の攻撃に押され、フェルドは慌てて後ろに下がる――が、後ろにΣが待ち構えており、その攻撃も(かわ)さねばならなかった。

 頭がこんがらがる。今までこんな戦闘は身内同士以外では殆どなかった。


 これだけ強いとなると、相手の正体は1つだけ。


「……まさか、お前ら2人とも、どっかの被検体……しかも強化版――」

「――もう黙れよ。じゃぁな」


 忍は冷たい黄緑色の瞳でフェルドを捕らえ、手に持った得物で相手の心臓をめがけて刺した。


「――!!!!!」


 だが、フェルドはギリギリのところで躱す。急所は避けたが肩に大怪我を負う。


「……チッ」


 忍は舌打ちをし、再度フェルドを仕留めにかかる。


 本当は【個人的に】小手調べとして適当に組み手をする予定だったが、(フェルド)が忍の逆鱗に触れてきた。なので、容赦なく【上からの指示】である粛清に切り替える。



 ――うちの弟子の過去を思い出させようとすんじゃねぇよ。



 忍は接近し、再度斬りかかる。

 忍の金髪が揺れ、黄緑色の瞳が淡く光を反射する。



 ――それに、()()弟子たちみたいな非人道的な扱いは受けたことねぇんだわ。うちの裏組織舐めんなよ。



 忍は更に速度を上げ、フェルドを追い込む。

 フェルドには余裕なんて残されていなかった。



 そこに割り込んでくる影が1人。


「あら。うちの仲間を虐めないでもらえるかしら」


 Σが飛んできたナイフをすべて弾き落とし、忍は何なく割り込んで来たレヴィに対応する。

 敵の戦力を把握し終えた忍にとって、もうフェルドは用済みだった。……もう1人来たし、一旦放置でいいだろう。いつでも殺せるし、仕込みも終わっている。



「――!……本当に強いのね」


 レヴィは顔を歪めつつ、忍の攻撃をなんとか受け流す。

 彼女の美しい表情には焦りが浮かんでいた。


「レヴィ!!こいつら多分強化兵だ!!」

「もういいから黙れよ」


 忍はレヴィへの攻撃を止め、フェルドを仕留めにかかる。……先に殺せばよかった。失敗だ。


「――!?まさか!」

「あなたの相手は私ですよ。お姉さん」

「!?――ぐっ!!!」


 フェルドの言葉に反応したレヴィに、Σが斬りかかる。

 レヴィは防御に切り替えるも、Σは数度の攻撃でレヴィの方に傷を負わせることに成功した。


 レヴィは後ろに飛びのき、自分の斬られた腕を見てわなわなと震える。



「私を……!――私を刺したわね!!!!」



 逆上したレヴィはΣを殺しにかかる。刃物を構え、鬼気迫る表情で突っ込んで来た。

 Σはこの時を待っていたと言わんばかりに、濃い目のグレーの手袋をはめた手を動かす。師匠と共に戦っている時に、すでに糸の準備は終えていた。



 あと数歩で仕留められる――そんな時。


「やめろ。帰るぞ2人共」


 ドアの外からフレデリックによるストップがかかった。



「だけど……!!」


 レヴィは怒りの表情でフレデリックに食い下がる。


「命令だ。今日は引くぞ。……目的は全て達成したんだ。レヴィ」

「――!!……ふんっ!!」


 レヴィは納得がいっていない様子ではあるが、武器を降ろして戦っていた室内からフェルドと共に出て行った。



 室内には忍とΣが残される形となった。

 忍はΣに声をかける。


「……惜しかったな」

「……はい。仕留め損ないました」


 Σの声には元気がない。

 当然だろう。Σとしてはかなり綺麗に糸を展開し終えており、あとは得物が引っ掛かるのを待つだけだった。……折角だから引っかかって欲しかったのだ。


「展開は凄く綺麗だったし、敵にバレてもいなかった。……次もよろしく頼む」

「はい」


 引っ掛かるまで、あとたったの数歩だった。消化不良ではあるが、仕方ない。

 Σは短く返事を返し、室内に展開した【師匠特製の、超音波振動で何でも斬れる糸】を回収し始めた。


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