8話 メンタルの前借りと朝食と
毎日投稿を続けられていることに感動
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「良し!君はいま『叶えたい大いなる目標』を掲げ『自分の壁を超え続ける』ことを誓ったわけダ!!」
…目の前の大柄な男の人は、僕に対してこんなことを言った
「そして、おめでとう!!
たった今、君の目標は現実となることが確定事項となったわけダ!!」
???僕にはこの人が言っていることが理解できなかった
「ゴールが設定され、一歩でも前に進み続けていれば、やがてゴールへ辿りつくことができるというわけサ!!
それが、10年後かもしれないし100年後かもしれない。
もしかすると1億年後かもしれない!!」
…めちゃくちゃだ。ていうかそれなら本末転倒じゃないか?
「ん?1億年後に叶うのなら意味がないだろうって?
HAHAHAHA!!細かいことを気にするBOYだな!」
ニッ!!っと濃い肌とは対照的な白い歯を見せながら笑ってきた男に、僕は圧倒されていた
「まあ実際そうかもしれない!でもそうじゃないかもしれない!世の中わからないことだらけだしな!!
そんな君にアドバイスだ!!」
まだ何かあるの?僕の頭は破裂しそうなんだけど…
「遅かれ早かれ君の目標は実現する。
これは紛れもない確定事項なんダ!!
だからさ!メンタルの前借りはしちゃってもいいはずなんダ!!」
???
「理想像の能力や姿ってのには、まだもう少し時間がかかるかもしれない。
それならいっそ気持ちの部分では、先に理想像と同じにしちゃえってことサ!」
・・・
「君の理想の自分ってのはどんな思考をしているのかい?
どんなメンタリティなんだい?」
メンタルの、前借り…
僕は胸に手をあて、少し前の出来事を思い出していた
もしあの時、理想の自分ならどのように解決したのだろうか…
どんな気持ちでいたのだろうか…
僕は… 俺は・・・・・・・
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「…ふがっ!?」
目を覚ましたロップは体を起こし、窓の外を見て朝を確認した。
朝といっても薄っすら太陽の光が空へ差し掛かっているくらいで、肝心な太陽の姿は見えないくらいの時間帯だ。
「懐かしいもんを見た。それもこれも全部、昨日のせいだろ」なんて愚痴をこぼしつつ、身支度をする。
動きやすい恰好へ姿を変えて家をでた。
日課である朝のトレーニングを行うために、広場へ歩いていると女性が声をかけてきた。
「おはようロップ、いつもより早いね。新居ではよく眠れたかい?」
声の主は孤児院の館長のナサリであった。
朝早くから掃き掃除をしていたようだ。
「おはよう、まあ寝るところがあればどこでも変わらないといった感じだな」
ロップは才能を授かる年だという事で、昨日から孤児院をでて、自分の部屋を借りて暮らすようになった。
と言っても、家の近くには孤児院があり、ご飯もナサリからの提案でご馳走になることになっている。
とどのつまり、寝るためだけに部屋を借りただけで、それ以外は何も変わらないというわけだ。
「朝ごはんはどうする?昨日のシチューが残っているけど?」
「ああ、それで大丈夫。あとはいつも通り卵かけご飯をお願い」
「はいよ、それじゃあご飯も炊いておくわね」
「ありがと、じゃあ行ってくる」
ナサリに見送られながら、再び広場へ歩き始めたロップ。
「・・・・・」
ロップは昨日の帰り、サンサロッサから今後の方向性についての助言を思い返していた。
「…やれることをやっていくしかないか。ていうか結局いつもとかわらねぇな」なんて考えていると広場へ着いた。
「今回の戦いでの、俺らの役割はドラゴンの侵略によって、混乱して暴れるであろう魔物を抑えることだけど…、準備をするに越したことは…、ないわな!」ロップは駆け出した。
ランニング・筋力トレーニング・剣の練習合わせて、これまでの5割増しの量をこなしていった。
トレーニングを終えたロップは自宅へ戻り、軽く汗を流したあと、孤児院へ向かった
孤児院の敷地に入ると朝食を食べ終え、遊んでいた子供たちから声をかけてきた。
「「おはよう!ロップお兄ちゃん!」」ロップへ駆け寄ったのは、トリとジュリーの双子だ。
「おはよう2人とも、今日の予定は?」
「今日はねー、勉強前に近くの畑のお手伝いをするんだー」「お手伝いしたら沢山お野菜もらえるから頑張るよー」えいえいおー!と淡緑の髪の毛を揺らしながら気合を入れる
双子と別れ、食卓へ入ったロップ。すでに朝食を食べている人たちは誰もいないと思っていたが、少女が1人食卓の机で勉強をしていた。
「おはようロップ、引っ越ししてもいつもと変わんないね」少女の名前はナナミでロップの1つ下だ。
三つ編みに眼鏡と地味目な印象を受けるが、顔立ちは整っており将来は美人になることが約束されているといっても過言ではない。
「よっ、ナナミは新しい本を使っての勉強か?」
「えへへっ、一応ロップが抜けて孤児院の最年長が私になったからね。なにか新しいことを身に着けて貢献できるようになりたいと思ったんだ。
冒険者よりも私は机で行う仕事の方が合ってるしね」
すこし恥ずかしながらも語ったナナミ
「ま、もしかすると1年後に冒険に特化した才能を授かるかもしれないしね。
少なくともどっかの誰かさんよりはいい才能は授かると思うし」なんて言いながらロップの朝食を食卓へ並んだ
うるせい、とロップは軽口をたたきながら手を合わせ「いただきます」と食事を始めた。
「相変わらず朝ごはんはお米なんだね。みんなは朝食パンなのに」
「卵かけご飯を食べないと一日が始まらないからな」と勢いよく飯をかきこむ
ん?っとそこでナサリの前掛けに気付いた。
「その前掛け、まだ使っていたのかよ。いい加減新しいのを買えばいいのに」
「ああっ、これかい?まだ使えるからいいんだよ。なんでもかんでも新しいのをばかり買っていると基準がおかしくなりそうなんだよ」っと優しく前掛けを撫でた
ナサリが使っている前掛けは、ロップが冒険者で初めて稼いだお金で買ったものだ。
まあ当の本人は忘れていたわけだが。
「それに、ただでさえあんたが家事用の魔道具を買い揃えていくからさ。今ではほとんど労力いらずだよ。
まあそのおかげで勉強を教えることができているわけなんだけどね」
ロップのおかげで時間に余裕ができたナサリは、施設や近所の子供たちに読み書きを中心とした勉強を教えている。
もとは学院の教授だったこともあり、評判は物凄くいい。
「ふーん、まあ楽になってるならそれでいいじゃんか」と再びご飯をかきこむロップ。
フフッ、ナナミはそんな2人の会話を楽しみつつ、勉強をしていた。
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