7話 大量のドラゴンが攻めてきます
話が進んでいるのか進んでいないのかわからない現象
十三帝国神将といえば、世界でももっとも戦闘能力が高い騎士団の1つとして評されている。
そんな組織から2人も行方がつかなくなるというのはかなり大事である。
「確かに、これは無視していい案件ではなさそうですね。
それに、最も先代帝王を支持している2人が行方を晦ませたのなら、祈願を果たそうという動機もわかります。
しかし、なぜ近々争いがおきるかもしれないという事と戦争がおきるかもしれない場所がここだということが予想できるのでしょうか?」
セレスは思い浮かんだ疑問をそのままリンクへぶつける。
「これはあくまで予想の範囲内でしかありません。しかし、確かな予測だといっても過言ではありません。」と絶対的な確信を持っているかのように断言するリンク。
「そのヒントはドラゴンにあります」
リンクの言葉にいまいちピンとこないロップとセレス。
「アリスター・ドレークの才能は【蜥と心を通わすも者】といい爬虫類全般の考えがわかったり、意思疎通ができるようになりやすいものになります。」
それがドラゴンとどう関係あるのか?と思う2人
「魔法や武術と言った才能と比べると地味に思えてきますよね。
しかし、奴は与えられた才能を素直に研鑽し続けたことにより、ついには高ランク帯のドラゴンにまで意思疎通ができるようになったのです。
【蜥と心を通わすも者者】×テイム魔法、この化学反応が、歴史上数少ないドラゴンテイマーへと名乗りを上げた。それがアリスター・ドレークという男なんです。」
・・・・・
ドラゴンをテイムするというあまりにも非常識な事象に絶句するする2人。
ドラゴンは最低でもワイバーンの危険度Bになる。
基本、危険度Bの魔物をテイムできるのは、人生の大半をテイム魔法に時間を費やしたものや、テイム魔法を助長させる才能を受け取った者の中でさえも数%とされている。
それだけでも、ドラゴンをテイムできるということがあまりにも異質すぎることがわかる。
しかし、ドレークの異端さはそれだけに留まらなかった
「そして、ドレークの真の恐ろしさはテイムができる数の上限がないという所にあります。」
またしても驚愕な情報を耳にする。
「それは可能なんですか?
俺が知る限りだと、1テイマーがテイムできる生き物の数は精々5匹までだったはずですが?」
「それはあくまで平均値がってことになります。優秀なテイマーであれば2桁や3桁の数をテイムする人も存在します。
そして、ドレークがテイムできる数は1,000を超えるという情報があります。」
セレスは驚き疲れてきたのか何もリアクションを起こさず、静かに話を聞くようになっていた。
その様子をみたリンクは苦笑をした。
「話が長くなってしまいましたね。
話を強引にまとめますが、1カ月前にドラゴンが生息しているゲネルド霊山から1匹残らず姿を消しました。
そして、帝国と皇国の国境であるルワンダ山脈と麓に広がるシルバーレイクの森で魔物の動きが活発になり始めた時期とタイミングが重なっております。」
顎に手を置いて考えるセレス
「確かにそれらのことを考慮すると、脱国した元十三帝国神将の2人がドラゴンを率いてここへ攻撃を仕掛けるかもしれないという考えになるのも納得できます…
十三帝国神将2人ならば、小国の軍事力以上の脅威がありますしね…
てかもし本当に戦いが起こったのならちゃくちゃヤバイじゃないですか!?
ていうか一匹残らずってどんだけの数のドラゴンが攻めてくるんですか!?」
いきなり立って焦り出すセレスに声をかけるロップ
「まあまあセレスちゃんや、焦った所で状況が変わることじゃないんですから。
ここは一杯昆布茶でも飲んで気持ちを落ち着かせましょうよ」
ロップはセレスに淹れたて昆布茶を渡した。
「・・・なんでおばあちゃんキャラなのよ。ていうかいつの間にそんなもの淹れてたのよ」なんていいつつ昆布茶を受け取り、あつっと言いながらゆっくり飲み始めた。
落ち着いたのを確認したリンクは再び話をつづけた
「確かにめちゃくちゃやばいですね。だからこそ、今ここには私がいるんですよ」
「・・・、どういう訳ですか?」
「もとはと言えば帝国自身の問題ですからね。
いわゆる尻ぬぐいをするために皇国の防衛に加わるようになったんですよ。
ここには私が、そしてもう一人で王都へ派遣されました。
下手に軍を動かすと混乱を招きますからね。
元十三帝国神将2人なら、現十三帝国神将2人をぶつければ問題ないという考えです。
ていうことでセレス様・ロップ君、一緒にランブール公爵領を守りましょう♪」と話をしめたリンク
「えっ、俺たちもですか…。面倒くちゃい( ˘•ω•˘ )」とロップは気怠そうな表情を浮かべた。
話が終わったのを確認してサンサロッサが話始めた。
「ま、そういうことになるサ。今回の戦争相手は魔物だからね。2人も貴重な戦力というわけサ。
才能も授かったしタイミングがいいから、明日からはもう少し先に進んだことを始めていくぞ!!」
ここで話が終わった。
(・・・へ?【根性】の先に進んだことってなに?)
話が終わり、その場で解散となった。
ロップは自宅の孤児院へ帰るべく、サンサロッサはギルドマスターへ戦争の話しをするために一緒に屋敷をでて歩いていた。
「しっかしドラゴンか、亜種のワーバーンとかなら何とかなると思うけど、それ以上の危険度帯のドラゴンとかなら確実に死ねる自信があるぞ」
「もしものことがあった時に、自分の身を守れるくらいで構わないサ。
十三帝国神将に加えて私もいるわけだしサ」
「だよなー、てか師匠1人でなんとかなるんじゃねえの?
今日の話しいく意味あったのか…」とぶつぶつ小言を漏らすロップ
そんな様子にサンサロッサは疑問に思い、質問をしてみた。
「しっかしロップよ…」
「あん?なんだよ?」
「案外君は元気だな。さすがの私でも今回の事はもっとショックを受けてるかと思ったゾ」と今朝の才能の件について触れた。
「っ…、さすがに今でもショックすぎて倒れそうだよ。でもそれをずっと引きずってても変わらないし(ぶつぶつ)…、はあーっ」
ロップは大きくため息を吐いた。そして前方にある夕陽へ顔を上げた
「1億年後かと思ってたのにさ…、これじゃあ2億年後になっちまったよ」
「ッ!?」サンサロッサはロップの言葉を聞き、目を見開いた。
そして、優しい笑みを浮かべた後、ロップに続き夕陽を見上げた。
「いんや…、おそらく逆になるんじゃないか…」
この日の夕陽は、ロップを含め、才能を授かった若者に祝福を送るかのように、暖かな光が町中を包み込んだ
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