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4話 剣一本でモンスターと渡り合う男

戦闘描写ムズイんご

 先に動き出したのはトガリワイルドボアだった。

 ドゴンッ、という轟音を響かせるほどの踏み込みと同時に2人へ駆け出した。


 なんの芸もないただの突進だった。

 しかし、巨体からは想像できないほどの速度を繰り出す突進は、イノシシ型モンスター最強格に名の上げるには十分な威力を誇っている。


「くるぞ!」「えぇ!」


 セレスは『風魔法・飛翔(フライ)』で宙に浮かび、ロップは一切の躊躇なくモンスターへ駆け出した。


 猛スピードで近づき合うため、接触するためにかかった時間は数秒だった。


「・・・」


 ロップは走りながら、背負っている得物へ手を伸ばした。

 両者の衝突は免れないと思うほど近づいた刹那、ロップは身をひねりモンスターの牙を避けた。

 タイミングがずれていたら、トガリワイルドボアの牙の餌食になっていたのは間違いないだろう。


 必要最低限の動きで躱したため、ロップはモンスターの横胴体に位置することができた。


 両者がすれ違うと思われたその時、「…ふんっ!」とロップは手にした武器を振るってモンスターへ重い斬撃を浴びせた。


 ボアッ!?っと悲鳴をあげたトガリワイルドボア。


 すれ違ったあと、わけもわからぬまま人間の方へ向きなおした。


 目の前の人間が握っている武器から、赤い血が滴れているのを見て自分の血だということを理解した。


 かつて命の奪い合いをしてきたモンスターや人間からの攻撃を通さなかった、鋼のような体毛と皮膚から為される強硬な守備を目の前の男は突破した。


 ボアアァァッ!!


 自身を傷つけたという事実が、自分の命を脅かす存在だと認識し、怒りを周りに漂わせ咆哮を上げた。


「うわっ、かてーていうか分厚いな」

 トガリワイルドボアを傷つけた張本人は、武器ごしに伝わった手ごたえから冷静に分析を行った。


「生半可な攻撃じゃダメージをくらわねぇか…、


 セレス!動きを止めるから特大のを頼む!!」


「わかったわ!!」と攻撃の準備を始めるセレス。

 両手を近づけた後、魔力の塊を創成させ始めた。


「そんじゃまあ、あともうひと踏ん張りいきますか」

 セレスが攻撃の準備をしている間、再びモンスターへ駆け出した。


 ロップが駆け寄るのを確認したモンスター。再び自分の死角へは入りこませないと首を振り、器用に牙の斬撃を浴びせようとしていた。


「うぉ!?そんなこともできるのかよ」と驚愕しつつも必要最低限の動きで全ての攻撃を躱していく。


 攻撃が当たらないことにストレスを感じたモンスターは横なぎの要領で、ロップの脚を払おうと足元へ攻撃を繰り出した。


「おっと!」ロップは攻撃を躱すべく、バク中で回避した。


 脚が地面と離れたことに好機を見出したモンスターは、ロップを仕留めるべく体当たりを行った。

 今度こそ攻撃は外さないと確信した。


 しかし、ロップは着地をした後、武器を両手で握り「よっこいせ!!」と剣を大きく振り、向かってくるモンスターの牙へ剣を交差させた。


 単純な力勝負ではサイズが大きいほうが有利なのは世の理である。

 ロップがモンスターの攻撃を受け止められず吹き飛ばされると思われた。


 だが、予想は大きく覆った


 ボアアッ!?!?!


 なんと、力比べの軍配はロップへ上がる形で、四足歩行であるモンスターの前足が地面から離れ上体が反らされた。


「単純な力比べで負けるのは初めてか?」


 言うや否や、宙へ浮かされた無防備な前足両方を目にもとまらぬ速さで斬りつけた。


 ボガッ!と前足を斬られたモンスターは四本足で立つことができず横たわった。


「今だ!セレス!」


 攻撃の準備を終え上空へ待機していたセレスへ合図を送った。


「はああぁ!!『雷魔法・雷鳴の昇華(ライジングサンダー)』!!」


 練った魔力の塊が一本の青白い光へ姿を変え、爆音を響かせながらモンスターへ接近する。


 避けることができないトガリワイルドボアは攻撃を直撃した。

 猛烈な電撃が体を貫き、稲妻は容赦なく身体を襲い続けた。


 やがて稲妻が消え去り、後には煙をあげるモンスターの姿だけが残った。


「いよっし!討伐完了っと」

「そうね…というか今回のモンスターもロップ単独でいけたんじゃないの??」


「細かいことは気にすんじゃねえよ。それにセレスがいてくれた方がいろいろ楽できるんだからよ」

「・・・まっ、そういうことにしておきましょうかね。『空間魔法・時空箱(アイテムボックス)』」


 セレスは魔法でトガリワイルドボアを収納した。


「それじゃあ町へ帰るとしますか!?」

「ええそうね、でもまずはギルドへ行って討伐完了の報告をしにいかないとだめよ?」

 疲れた様子を見せず、2人はランブール公爵領へ帰るのであった。


 魔法を駆使して戦闘をすることがスタンダードなこの世界。

 剣一本でモンスターを圧倒する男、バルオ・ロップはあまりにも異端すぎる存在であった。


最後まで読んでいただき有難うございます。

高評価やコメントを頂けますと天に上るほど喜びます。

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