41話 Aくんと模擬試合
土日は社員旅行に行っていたので投稿できませんでした…
対戦相手Aくん(といあえずそう呼んでおく)はカモを見つけたように余裕そうな笑みをこちらに向けていた。その目はよく知っている。おれが幼かった時に、暴力を振るってきたやつらの顔だ。どうしてほとんどのやつらは弱者を見つけた時にそんな表情をするのかねぇ。
「お前ってさ、留学生のくせして貴族でもないんだろう?それに加えて魔法も使えないゴミなわけだし、皇国はよっぽど人材がたりてないのか」
Aくんはおれに対して好き勝手いいながら舞台に立った。ああいうやつに対しては無視することが一番だ
「そんな雑魚みたいなお前に対して、相手をしてもらう俺に対して感謝とかしないわけ?ていうか将来を約束されている俺に対して試験だったとしても時間をくれてやってんだぞ、むしろ謝罪しろよ」
こいつ一生喋ってるな、ていうか喋る内容もほとんどテンプレートじみて、ますますAくんというあだ名が当を得ている気がする。
「よろしく」おれは最低限の言葉だけを発した。
「はあ?まともにしゃべることもできないのか。ますますゴミじゃねぇかよ」
それは飛躍しすぎじゃないか?もうなんでも噛みついてくるな
「どちらかが降参するか、審判である私が止めるかで勝負の勝ち負けは決定する。結界が貼られているので魔法は思う存分使用してもらって構わないし、死ぬこともないので安心してくれ」
審判が軽くルールの再共有をしているときですら、Aくんはおれに対して突っかかってくる、元気だな。
「では両者位置について」審判が指定する場所へたったおれとAくん。
「そういや、お前と一緒に留学してきた公爵家のお嬢様はめっちゃ美人だったな。なんでお前みたいなやつが仲良くしてんだ?まあ、おれがお前をボコボコにしてもっといい男がいるんだぜってことを教えてやるとするか」
「いいぞ!やっちまえ!」「おれもアイツをボロボロにして、あの子に口説いてやりたいぜ!」
いつの間にか周りには多くの観戦者がいた。というか9割がたおれに対する野次になるわけだ。なんで、短時間でおれは人気者になってしまったんだ( ˘•ω•˘ )
言いたいことを言い終えたAくんは戦闘態勢を取った。それに続いておれも木製のナイフを構えた。準備ができたことを確認した審判は「始め!」と戦闘の合図を出した。
Aくんは戦闘の合図とともに、両手の掌をこちらに向けて魔法を放とうとした。
「さっさと死ね!『雷魔法・雷鳥の群飛行』」!」魔法を唱えると鳥の形をした雷の大群がおれ目掛けて飛んできた
さすがテーゼ魔導国中のエリートと呼ばれる奴らが集まる試験だな。魔法の発射速度も威力も申し分ない。
魔法の能力だけでいえば、十分中級冒険者としてやっていけるレベルだ。そう感心していたら、魔法がすぐ目の前まで迫っていた
「黒焦げになっちまいな!!」Aくんは当たることを確信しているのか物凄く下品に笑っていた。顔がお汚いですわよ。まあ普通はここから外れるなんて考えないよな。だが…
「遅い」おれは上体を横にそらして鳥たちの間をすり抜けて躱した。
「はあ!?」Aくんは攻撃がかわされたことに対してかなり驚いていた。
確かに、魔法の精度は申し分ないわけだけれども、おれはその何百倍もレベルが高い魔法を扱うやつと修練してきたわけだ。こんなもの余裕で躱せる。
「はっ!?いい気になってんじゃねぇ。まぐれに決まっている!」呆けていたAくんはすぐに気を取り直して再度魔法を放ってきた。
次は躱せないようにという意思からなのか、雷の鳥たちの量が増えた。たしかにこれだと、体をそらすだけでは対処できないだろうな。だからおれは最低限横移動をいれつつ攻撃を躱した。
「「「「「!!!???」」」」」
Aくんだけではなく、周りにいる観戦者も状況が把握できないでいた。
至近距離で放たれた魔法を、魔法で防ぐという手段を取らず躱すというのは、今までの経験から積み重ねてきた常識から、大きくかけ離れていたようだ。
「そろそろおれも攻撃してもいいか?」「なっ、調子にのるな!!」焦った表情を浮かべたAくんは絶え間なく魔法を放ってきた。顔から察するに、よほど攻撃が当たらないことに対して信じられないようだ。
いつだって弱者だと思っていた相手が、自分の予想以上の実力だったと知った時、全員が同じような表情をする。
人に優劣をつけて、弱いものに対して強くでる相手に対する有効な対処法は、相場で決まっている。それは圧倒的な実力差を心と体に身に沁みさせることだ。
「じゃあそっちに行くぞ」躱すだけだったおれは、Aくんの方へ歩きながら向かった。
もちろん歩いている最中も、体を最低限動かして攻撃を躱し続けている。
「くそっ、くそっ!なんで当たらねぇんだ!?」いまだに捉えることができず、自分の方へ向かってくるおれに対して怖いものをみる目で見てきた
ゆっくり、ゆっくり、おれは歩を進めた。
そして、手を伸ばせば触れることさえできる所まで距離が縮まった。
「どうも~」おれは朝の挨拶をするようなのりで声をかけた。
「ふざっけるな!!」Aくんはおれを迎撃しようと、雷を纏わせた剣でおれを斬ろうと振りかぶった。もちろんそんな攻撃はかすりさえしない。
Aくんの斬撃を躱したおれは、胸元と袖をつかみ柔術の投げを行った。「死なないらしいから安心して刺さっとけ!」そしておれはAくんの頭を地面に叩きつけた。
ドカーン!!
強く叩きつけ過ぎたのか、上半身がまるまる地面に埋まってしまった。
足はぴくぴくっと動いているので大丈夫なことはわかる。
戦いの一部始終をしていた連中は、信じがたいものをみたという様子だった。
まあ、魔法を使わずに勝つなんて普通じゃありえないもんな。
「特にだれ優れているとか強いなんて興味はないんだけどな。穏やかな留学生活を送るために圧倒させてもらうわ」
おれは残りの試合も勝つことを宣言した。




