12話 十三帝国神将の真の実力
完敗する主人公に需要はあるのかどうか(笑)
予定もなく始まった帝国最強戦力の1人との模擬試合。
結果は魔法無しでの体術戦ではロップに分があり、魔法ありきでの闘いでならリンクの完勝という形で終了した。
「すがすがしいくらいにボコボコにされたんですけど。
未来に希望溢れる若者をいじめて楽しいですか?」
尻もちついていたロップはジト目でリンクを責めた
「ははっ、私も若者ですしね。そして、どちらかというと私は攻められる方が好きです」
手をさし伸ばすリンク
だから聞いてねぇよっ、差し伸ばされた手を掴み立ち上がったロップ
先ほどまでの闘いを振り返り、リンクへ問いかけた。
「『消音』で魔法や爆風などの音を完全に打ち消すのは、かなりの高等技術が必要とされるなんていうどころの次元ではないです。
確実に音に関する才能を授かっていますよね?」
「ふふっ、よく『消音』についての特性を抑えていますね。あまりメジャーな魔法ではないんですけどね♪」
ロップの魔法に対する博識さに舌をまくリンク。
「一方的に知っているのは不公平になりますので、私の才能も教えちゃいますね。」
馬鹿げた戦い方を生み出す根幹となる才能に興味が尽きないロップ
「私の才能は【隠音】ハインドといい音や気配を消すことに特化した魔法や
それに加えて気配を消す体術習得を助長といったものになりますね。
まあ盗賊よりの才能です♪」
「…なんすか、その暗殺者と密偵に特化した才能は。
子供が考えた暗殺者の設定詰め込みましたっていう感じですね」
「おっ鋭いところつきますね。実は表舞台でってよりは、裏世界で暗躍するほうが得意なんですよね」
リンクの説明を聞き、納得するロップ。
「確かに、いかにも暗殺者に特化した能力って感じですからね。こんなのにターゲットにされちゃあたまったもんじゃないですね…
いや~、どうやったらまともに戦えるんだろ」
ロップはさきほどまでの戦闘を踏まえて、対策案を思慮深く考えていた。
「・・・・・」
そんな様子のロップを見て、リンクは昨日の執務室でのアンドロス達との会話を思いだした。
武術オンリーの世界なら世界最高峰に君臨していたのは間違いない。
しかし、魔力に恵まれず魔法をほとんど使えない男。
そして、才能も魔法どころか身体能力や武術すら関係ない、よくわからない才能を授かっただけ。
魔法の重要性が大部分を占めるこの世界で、
自分が同じ立場なら、剣を握るのをすでにやめているだろう
しかし、目の前の青年には、止まるという選択肢なんてのは、はなからないほど上を目指し続けていた。
そんな姿に、不思議とリンクは惹かれていた。
そして…
「なら経験してみます?」
?
なにを言っているのか理解ができなかったロップはリンクのほうを向いた。
「その暗殺者に狙われたターゲットをって奴ですよ」
説明を聞いても意図がつかめないでいたロップ
「聞けばロップ君。あなたは絶望を感じることが好きだという性癖の持ち主らしいですね」
「なにその特殊すぎる性癖…、てかだれだよ、そんなこと言ったやつは。
何を経験させるんですか?」
リンクへ本題を話すよう促した。
「私の【隠音】をふんだんに生かした擬似暗殺をですよ。
ロップ君の今後のためになればいいなと思って」
そこでやっとリンクの意図が分かったロップ
「…暗殺されることがためになるってどういうことですか?
まあでも、正直興味はありますね」
ロップの返答を聞き、にこりと微笑み
「では早速♪」
リンクはロップに迎撃の構えを取らせながら、少し距離が離れたところへ立った。
向かい合う2人。
「では行きますね♪」
手に持ったダガーをひらひらーと振りながら宣言するリンク
リンクの言葉を聞き、警戒度MAXにするロップ。
(どうか、折れないでくださいね)
「…来る」
音・気配・匂い全てを見逃しはしないというほどの集中力を発揮していたロップ。
いつでも反撃できるように捉えているつもりだった。
しかし次の瞬間、ロップは信じられない光景を目の当たりにした。
なんと目の前にいたリンクが前触れも無く姿を消したのだ
「っ!!??」
気配や姿を消すといっても魔法や動作は読み取れるかもしれない。
その情報を頼りに対処をと考えていた。
しかし、リンクのそれはそんな生易しいものではなかった。
姿どころか、音、匂い、気配に加え、はなからここには誰もいなかったのではと記憶が改ざんされるほどだった。
くっ!対処しようと考えたが、どう対応すればいいのか分からず、まったく動けないでいた。
全身に大量の汗を流しながらも、どうすることもできなかった。
ただ時間がすぎるのを待つしかなかった。
自分はこれから命を刈り取られる。
その事実をただただ受け入れるしかなかった。
時間にしては数秒、その数秒が永遠の時間を感じるほど恐怖していた。
そして、
とんっとんっと胸をかるく叩かれたことに気付いた。
視線をしたにさげると、その正体がダガーの柄であることがわかった
「…、!??」
少しテンポが遅れて、今の自分の状況に気付いたロップ。
そして、ダガーを握っている正体を確認するために視線を戻した。
目の前には、日常の一コマを切り抜いたように、優しく穏やかな顔をしていたリンクがたっていた。
ここで初めて、実践の場だと死んでいたという事が理解できた。
「どうでしたか?暗殺されるという体験をしてみて」
緊張感から解放され、いますぐ座り込みたいと思っていたロップは
「あー、とりあえずリンクさんの暗殺対象にならないよういい子にしておきます」と返すことが精一杯だった。
「ふふっ、そうならないことを私も願っておりますよ♪」
こうして、十三帝国神将の実力を思わぬ形で体験したロップは、ばたんっと音をたてながら寝ころんだ。
【陰音】は
隠れる(ハイド)+音を合わせた造語です。
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