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クリストファー王太子1

クリストファーは2話あります

 シェリル・ソルレイン子爵令嬢の存在を知ったのは、王立学園入学直後。

 同じクラスの、少し離れた席に座るシェリルは、見た目だけでなく所作も美しかった。

 王太子である私の周りには、高位貴族や護衛を兼ねた子息達が常にいて、それ以外の同級生はタイミングを見計らって話しかけてくるという状態だったが、シェリルは私の存在など眼中にないようにいつも離れた場所にいた。

 私はシェリルを観察するのが日課となり、よく目で追っているせいか、彼女が優しいことはすぐにわかった。

 しかし彼女とは、一向に会話をするタイミングがなかった。

 隣に座るどこかの令嬢が、移動のときに話しかけて荷物を持つどこかの子息が羨ましい。

 なぜシェリルは私に話しかけないのか不思議だったが、待つばかりでは駄目だ、私が側に行かなくては誰かに取られてしまうと思い至り、すぐに行動を開始した。

 朝の挨拶に始まり、隣の席を確保する。

 移動のときも隣を確保。荷物は持たせてもらえなかったが。

 ランチもランチルームで向かいあって。

 帰りは馬車寄せで別れるまでは一緒に。

 シェリルには勿論、周りにもシェリルの隣は私だと周知させた。

 逃げ腰だったシェリルも、一ヶ月もすれば慣れてきたようで自然体の笑顔を見せてくれるようになった。

 他愛もない話も、勉強についての話も、シェリルと一緒にいるとすべてが楽しく思える。

 しかし、休みにお忍びで街へ出ようと誘っても、王城へおいでと誘っても、ふっと表情が落ちて断られてしまう。

 学園が休みの日は家庭教師がきている、というのが断りの言葉だ。

 ソルレイン子爵家は裕福だと聞いている。だから幼少期から複数の家庭教師をつけていて、今でも継続しているらしいが、本当にそれだけが理由なのかこっそり調べさせたことがある。

 結果とすれば、確かに家庭教師が毎週入れ替わりでついているらしい。

 ただ、マカラ公爵夫妻も家庭教師として通っているのは不思議だった。

 

 マカラ公爵は、両陛下と因縁がある。

 いつ誰が教えてくれたのかは忘れたが、マカラ公爵令嬢と両陛下の話を聞いたことがある。

 私個人の感想といえば、現在離塔へ幽閉されている王妃の悪行は、なぜ生かしておくのかと憤りを覚えるし、マカラ公爵の悲しみは想像以上だろうと思う。

 そういえば以前、侍従になぜ王妃は離宮ではなく離塔へ幽閉なのかと聞いたことがあった。


「離宮より離塔の方が人員が少なくすみますから。使用人も、警備も。経費削減です」


 そんなにはっきり言われる王妃の人望のなさに笑ってしまった。

 

 シェリルは学業も優秀で、人格も優れている。

 そのため、学園中の憧れの的と言っても過言ではない。何故か婚約者が決まっていないが、これはもしかすると、私が常に隣にいるということを子爵が気にしているのかもしれない。

 子爵がどんな人柄か知らないが、娘が王太子妃の可能性があるなら夢を見るものではないだろうか。そのために様子を見ているのかもしれないと思うと、私の王太子としての立場に初めて感謝した。

 

 十六歳のデビュタントの少し前のこと。

 この国では、十六歳から十八歳までの間にデビュタントを迎える。

 通常十六歳で済ませるので、シェリルもそうかと聞くとそのつもりだと。

 私は王太子ということから複数の令嬢とダンスをしなくてはいけないが、最初と最後のダンスはシェリルと踊りたいと伝えると難しい顔をした。


「王太子の最初のダンスは高位貴族と踊ることになっているし、最後のダンスは将来を決めた相手と踊るべき。我が家は子爵家なので最初のダンスは無理だし、私は子爵家に見合う家柄のご子息と婚約することになると思う」


 衝撃だった。

 絶対に喜んで了承してくれると思っていた。

 他の男と婚約する?

 私を好きではなかったのか?

 

「クリス」


 そうだ。この宰相令息でさえこのように親しげに呼びかけるのに、シェリルはクリストファー殿下と呼んでいた。


「クリス」


 そうだ。まずはシェリルにもクリスと呼んでもらえるくらいにならないと。


「そろそろ現実に戻って来てほしいんだが」


 はっと意識が戻った。

 いつの間にか馬車に乗っている。しかも、目の前には宰相令息が残念な子を見るような目でこっちを見て座っている。


「あー、私も常に一緒にいるわけではないので確認なんですが、お二人は気持ちを伝え合うことはありますか?」


 未だにクラクラする頭をフル回転させ、今までのシェリルとの会話などを思い出しても、確かにシェリルから好きとか言われたことはなかった。

 というか、隣にいるということに満足して、私からも伝えていなかった気がする。

 これはまずい。

 私が十七歳になる時、婚約者選定の議会が開かれる。

 それまでにシェリルから婚約の了承を貰わないと、私は他の誰かと婚約することになってしまう。

 できれば今年のデビュタントまでに、それが無理でも一年以内にシェリルを口説き落とさないといけない。

 これからは毎日愛の言葉を伝えなくては、決意した私を見た宰相令息は大きく溜息をついた。


 そんな決意の翌日から、シェリルは学園を休んだ。

 三日間休んだところで心配になり、シェリルと親しい令嬢に聞いてみると、子爵家の事業で付き合いのある隣国の商会から創立パーティーに招待されたので、二週間ほど隣国に家族で行っているとのこと。

 子爵夫妻はわかるが、何故シェリルも?私に一言くらい言ってもいいのではないか?

 もしかすると、隣国で婚約者を探してくるのだろうか。先日のシェリルの婚約の話が頭をよぎり、居ても立っても居られない。

 しかしあと十日は不在だ。どうしようもない。

 このような話も教えてもらえないのが今の私の立ち位置だと理解し、今後について策を練る時間にした。

 帰国予定日の一週間後にはデビュタントの舞踏会がある。

 それまでには話ができるだろうと思っていたが、シェリルは二週間どころか一ヶ月休んだ。

 当然デビュタントは不参加だった。


 何があったのかと子爵家に使いを出すと、長旅の疲れからか熱が出ているので休みをいただいている、と言われ、ならば見舞いにと花束を持って訪ねても、病気をうつすといけないから、と会わせてもらえなかった。

 誰かと婚約するという不穏な話の後、既に一ヶ月。

 私の精神の限界が見えてきた頃に、やっとシェリルは学園に来た。

 確かに少しやつれたような頬。


「おはようございます、殿下」


 少し元気のない笑顔を見たらたまらなくなってしまい、思わず抱きしめてしまった。


「で、殿下?!」


 私の胸元で焦ったシェリルの声も、ふわっと香った花のような香りも、もう全部このまま離したくない。学園はやめさせて、王城で王太子妃教育の名の下に閉じ込めてしまおうか。

 不埒な私の考えをいち早く察知した宰相令息が、何してんですか、とりあえずこちらへ、と私とシェリルを引き剥がし、廊下へと手を引いた。

 勿論私はシェリルの手を離さなかった。

 そのまま宰相家の馬車に三人で乗り、宰相家へ向かった。

 応接室へと案内され、シェリルと二人で話し合う時間をつくってくれた彼には感謝だ。

 ソファでシェリルの横に座った私に何か言いたそうな宰相令息だったが、ふっと息を吐いて歩きはじめ、扉の側に立った。二人きりにはさせないが、話は聞こえない距離ということか。


 シェリルがポツポツと話す内容は

『二週間隣国に行っていたけど、特別に誰かと会うということはなかった』

『初めての長旅は、想像以上に疲れた』

『デビュタントは、事情があり少し騒がせる可能性があったことと、体調不良も事実なので今年は不参加とした』

『花束は嬉しかった』


 花束は嬉しかった、と言ったときに、シェリルの頬がふわっと赤くなったのは自惚れても良いのだろうか。

『一ヶ月会えなくて辛かった』

『隣国で婚約者を決めてくるのかと不安だった』

『シェリルを大切に思う。愛している』


 私の気持ちを伝えなくてはいけないと思い、すべて言葉にした。

 シェリルからも何かしら答えをもらえたら、と思っていたが、『まだ、覚悟が···』と言ったきり俯いてしまった。

 覚悟ができたら受けてもらえるのだろうか、と聞くと『···そう···そうですね。その···覚悟を決める前にもう一つ不安もあるので···その···』と苦しそうに答えた。

 じゃあ不安を先に払拭できるように協力します、と伝えたが、やっぱり苦しそうな泣きそうな表情で前向きな返事はもらえなかった。

 なんだか可愛そうになり話題を変えた。


「そういえばデビュタントで騒がせる事情とは?」

「···それが不安の内容なんです」

「それならば尚更協力しますよ。来年のデビュタントは心おきなく参加してほしいので」


 宰相家から子爵家へシェリルを送り、我々二人は学園へ戻った。

 しかし、王太子妃になるのに覚悟がいるというのは解るとして、その前の不安って何だろうか。

 少しゆっくり考えたくて、私だけ医務室へと向かった。ベッドに横になり考えたかったからだ。

 医務室には誰もいなくて、先生も『すぐ戻ります』と書いた紙を扉に貼って留守にしていた。

 奥にあるベッドに向かい、仕切りのカーテンをひいてからゴロンと横になった。

 不安がわからないことには手伝えないなぁ。無理して聞くこともできない感じだし。

 考えを巡らせていると、扉が開いて複数の声が入ってきた。

 

「座ってー、お茶淹れるからー」

「ありがとう。ミルクティが良いなぁ」

「あら、我儘ねぇ」


 医務室の先生と二人の女性教師か。

 賑やかになりそうだから退出しようかと起き上がりかけたとき、


「そういえば、今日からソルレイン子爵令嬢が登園したのね」


 シェリルのことだ。

 私は音を立てないように静かに聞き耳を立てる。


「お家の都合で休んだあとは熱だったかしら」

「その間に舞踏会は終わったわね」

「あーデビュタントね。でも、不参加で良かったと思うわ、私は」

「そうね。国王から側妃に望まれるかもしれないものね」

 

 心臓が大きくはねた。

 国王の側妃?なぜそんなことに。


「それ以前に、王妃から殺されるかもしれないわ、また」

「あー、やりかねないわね」

「アウリティア様にあんなに似ているとね」

「本当にね、双子みたい」


 驚きに声が出そうになった。

 マカラ公爵令嬢に似ているから、デビュタントで騒ぎになるかもしれない。シェリルはそれを心配していたのか。そして、似ているということから王妃からの危険についても考えているのだろうか。

 考えるといろいろ合致してくる。マカラ公爵夫妻が子爵家へ行くのは、娘に似ているシェリルに会いに行っていたのか···とか。

 今までのシェリルとの会話を思い出していると、じゃあ時間だから、と二人の先生は医務室から出て行くのがわかった。


「あら?誰か休んでいたのかしら?」


 その声と同時に私の横のカーテンが開く。

 ばちっと目が合ってしまい、寝たふりができなかった。


「···今の話、聞こえてましたか?」

「···そうですね」


 とても気まずそうに、しかし何か決意したかのように先生が言う。


──殿下の気持ちは、皆微笑ましく見守っている。しかし、マカラ公爵令嬢を知っている年代は、殿下とシェリル嬢の婚約は不可能だと思っている。両陛下のせいで──


「殿下、諦めることも相手を大切にする手段です」


 もし、私がシェリルを王太子妃にと望むなら、少し無理をすれば叶うだろう。しかし、その時からシェリルは王妃から何らかの害を受けることになるかもしれない。今は幽閉されていて、側付きも少なく動かせる人間は限られているが、誰がどう動くかわからない。そして王妃のみならず国王が関与する可能性もある。

 これがシェリルの不安の一つかわからないが、再度二人で話し合いを持たないといけない。そして、シェリルと共にあるため私がどう動くべきか、しっかり考えないといけない。

 

「どうしてあの人たちのせいで、私が諦めないといけないのですか」

 

 私の声は、思った以上に冷ややかに聞こえた。


 翌日からも、私はシェリルの横を譲らない。

 シェリルには、事ある毎に気持ちを隠さず伝えた。

 愛している。貴方を守る。どうか私を信じてほしい。

 シェリルは少々困惑の表情を浮かべつつ、それでも頬を染めてほんのり笑うのが可愛らしい。

 やはり、これは自惚れても良いのではないだろうか。

 そんな自信がついてきた十七歳にあと半年という時、私はプロポーズをした。

 婚約者に指名する、と。

 しかし、シェリルは暫く考えたあと、やはり身分が···と言い、断ってきた。

 現在の王妃は男爵令嬢だったと言うと、無礼を承知ですがだから(・・・)です、と言い切った。

 何度言っても同じなので、これでは埒が明かない。

 身分に関しても何か手を打たないといけないし、以前、シェリルが不安に感じていたことも解決しないといけない。

 子爵とも話し合うべきかと思い、数日後、シェリルに大切な話があると伝えると、翌週の学園が休みの日に子爵邸への招待を受けた。


 子爵邸へはお忍びの形をとった。

 シェリルがマカラ公爵令嬢に似ているのなら、慎重に行動するほうが良いと判断したから。

 

 子爵邸の玄関には子爵夫妻とシェリルが出迎えてくれた。

 今日の家庭教師はすべて断りを入れたから、時間はあるとのこと。ありがたい。

 応接室へと案内され、まずは子爵夫妻も交えて話をすることになった。


 お茶の用意が終わると人払いされ、部屋の中には子爵夫妻、シェリル、私の四人だけ。

 挨拶の後ふと見ると、かなり緊張した面持ちのシェリルは顔色が悪かった。

 心配になったが、まず確認すべきことを聞くのが先か。


「シェリル嬢がマカラ公爵令嬢に瓜二つというのは事実ですか?」


「私は学園時代、アウリティア様の一学年下でした。すれ違う程度でしか近くで拝見することはできませんでしたが、それでもそっくりだと思います」


 この質問は想定内だったのだろう。

 子爵夫人が事もなげに答えを返してきた。


「そっくりなシェリル嬢と両陛下を会わせることに、不安がおありでしたか?」


 一瞬子爵夫妻はグッと息を呑んだが、子爵がゆっくりと言葉を返してきた。


「殿下は、どこまでご存知ですか?無礼を承知でお答えいたしますが、両陛下はシェリルにとって害にしかなりません。国王陛下はまだしも、苛烈な王妃はシェリルに掴みかかるだろうということは、容易に想像できます。知っていますか?あの王妃、自分が産んだ子供の色が国王と違うから、それは自分の子供ではない、殺してこいと産婆に命令したんですよ。赤ん坊はまだ産湯にもつかっていないのに」


──あの女は、自分の地位を脅かす存在は容赦なく殺す──


 私が息を呑む番だった。

 不義の子は死産だと聞いていたのに、王妃がそのような命令をしていたとは。

 自分の子供でさえそうならば、赤の他人など躊躇ないだろう。ならば子爵夫妻の、そしてシェリルの不安は当然だ。

 その場で手を出さなくても、マカラ公爵令嬢の二の舞になることもあり得る。どこで襲われるかわからないなら、いっそのこと両陛下の目に触れない方が良いのでは。噂で似ていると耳にするのと、実際に確認するのでは違うだろうから。

 確かに今年のデビュタントは見送って正解だったのだろう。しかしそうなると、私はシェリルを諦めなくてはいけないのだろうか。

 少なくとも王妃が完全に幽閉状態になるまでは、シェリルは安全とは言えない。

 私は絶対に諦めたくない。

 王妃が動けなくなるような方法はないだろうか。

 

「あの、私も大切なお話を殿下にしないといけないのです」


 既に打ち合わせてあったのか、シェリルのこの言葉の後すぐに、子爵夫妻は退室した。無理はするなと言い残して。


 子爵夫妻が退室しても、シェリルはなかなか言葉を発しなかった。

 私もあえて促すことはせず、ただその時が来るのを待つ。


 少し張り詰めた空間の中、やっと決意ができたのかシェリルが話し始めた。


「両陛下とマカラ公爵家との話は、ある程度ご存知だと、そのように解釈した上でお話しいたします。···私はマカラ公爵の次女です。···アウリティアの妹です」


 先程とはまた違う衝撃だった。

 シェリルは、私の心が落ち着くのを少し待ち、続きを話してくれた。

 

 なぜ、公爵家で誕生の届けが出なかったか。

 なぜ、公爵家から格下の子爵家へ養女に出たか。

 そして、デビュタントでシェリルが周囲の大人たちから期待されていること。


「私がアウリティア姉様のふりをしたら、両陛下がどんな状態になるかわかりません。周りにはデビュタントの貴族子女がたくさんいらっしゃるし、かなり騒ぎになることだけは想像できます。しかし、私が姉様のふりをして両陛下に姿を見せることは、マカラ公爵家とソルレイン子爵家の念願ですし、私もこの仕返しは成功させたく思っています。ただ、周りに迷惑をかけない方法が見つからなかったことと······それを実行している姿をクリストファー殿下にお見せする覚悟ができませんでした」


 デビュタントでは姉様になりきって行動するので···と今にも泣いてしまいそうな顔をする。


 そんなに悲しそうな顔をしないでほしい。

 シェリルがやりたいというのなら、私も可能な限り手伝いたい。あの二人が顔を歪ませるなら、それを見てみたい。

 そこまで思って、ふと気がついた。

 これは私が考えていた『二人への罰』になるのではないか。対外的には何もないが、精神的に効果はあるのではないか。

 私ならば相応しい場所を提供できる。その、シェリルの計画を実行しても騒ぎにならない場所を。

 

「ねえ、シェリル。貴方が私と結婚してくれるなら、騒ぎにならない状況を提供できると思いますよ」


 シェリルはその言葉を、愛の言葉と聞いたのか悪魔の囁きと聞いたのかはわからない。ただ、続きを促すように私をじっと見ていた。


「両陛下との初顔合わせが、舞踏会のような場所でなければどうでしょう。例えば私的な場所とか。シェリルがデビュタントを迎える前に婚約者になれば、可能だと思いませんか?」


 シェリルが肯いてくれたら、私が万事調えましょう。あなたの不安は、すべて私が消し去ってあげるから、どうか私と共に···


 今が攻め時とばかりにたたみ掛けた。

 シェリルは暫く考えていたが、両親にも相談してお返事いたします、と答えてくれた。

 まだまだシェリルと一緒にいたいが、子爵にも話をしたほうが良いだろうと思い、シェリルに子爵を呼びに行ってもらった。


 程なくして子爵が入ってくる。

 今は子爵と二人だけなので、端的に済ませる。


「話は聞きました。その上でシェリルに一つ提案をしたので子爵家で話し合い返事を。私は最善策を提示したつもりなので、良い答えしか欲しくないが」

「わかりました。ただ申し訳ありませんが、シェリルから聞いてからでないと何ともお答えしかねます」

「それはわかっています。ただ、計画を成功させるために、私は利用されてもやぶさかではないと承知しておいてください」



 今日はここまでだ。シェリルの気持ち次第だが、公爵家子爵家にとっておいしい話だと思う。そして何より、シェリルの負担が軽くなるのではないか。

 どうか良い返事を。私はシェリルを手放す気はさらさらないのだから。


 ジリジリしながら待った返事が来たのは一週間後。

 そしてそれは『否』という、私を苛立たせる答えだった。




次もクリストファー



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