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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第2章 悪夢の共闘

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第78話 ”ライバル”を増やす意味

 獄門会の猛攻を何とか凌ぎ、美味しい料理に舌鼓をうったその夜、寝る直前にまどかが話しかけてきた。

「ねぇ、知美ちゃん起きてる?」

 真っ暗な部屋の中まどかちゃんの声が響いています。


「はい。もうすぐ寝ようと思っていましたが、お話をするならもう少し起きています」

 私も玲子さんに見習って遅くとも11時には寝ようと思っています。今はまだ10時半なので許容範囲内でもあります。


「あのさ……知美ちゃん。実はお兄ちゃんのこと好きになっちゃったでしょ?」


「えっ……な、何を急に言い出すんですか……」

 あまりにもいきなり過ぎた発言だったのでとても驚きました。


「なぁんとなく、前とお兄ちゃんを見る目が変わったなって」

 鋭すぎますよまどかちゃん……。


「……正直に言いますけど、前と印象が変わったのは間違いないです。

 以前は偽善で建前で良いことを言っているんじゃないかって疑っていたんです」


 虻利家が中心となって推し進める政策が本音は素晴らしく中身が全体管理社会と人体実験のことしか考えていないからと言うのもあります……。


「でも今は違うんだ?」


「はい。今日は身を張ってでも私を助けようとしてくれたり、手を銃でちぎってでも私だけを生かそうとしてくれた姿を見て――もしかしたら信用しても良いかもしれないって思いました。

 少なくとも、彼の周りにちょっと変わった人たちが集まるのは何となく分かるような気がしましたね」


「なるほどね~」


 なぜか分からないのですが、まどかちゃんはとても嬉しそうに話しています。

 まどかちゃんがあの人のことを好きなのは知っていますが、ライバルが仮に増えたとしたら嫌なのではないでしょうか? ちょっと私の理解の外にあります。


「あの……仮に私があの人のことを好きになったとして、まどかちゃんは問題には思わないんですか?」


「んー。知美ちゃんならライバルに相応しい相手だと思うよ――っていうかお姉ちゃんがそもそも認めていたしね」


「玲子さんについてはほとんどのことは理解して共感しているつもりなのですが、

このことに関してはよく分かりませんね。

 ライバルを増やすことに意義があるのでしょうか?」


「うーん、お兄ちゃんを巡って皆でレベルアップしていこう――ってことじゃないかな?

 あたしにもよく理由そのものについては教えてくれないんだよね……ただ、何となくだけどそう言う気がするんだ」


「玲子さんは以前おっしゃっていました。『まどかちゃんは“私がなりたかったけどなれなかった私”』だと。つまり、玲子さんは何か“無理”をされているんでしょうか?」

 その発言をされた時の玲子さんは何か遠い眼をしているような感じがしたのが凄く印象的でした。


「お姉ちゃんは責任感が凄く強いからね。視野も凄く広いし、“何か”を言うことがあたしたちのデメリットになるんだと考えているんじゃないかなぁ?」

 

 まどかちゃんは凄く明るく、いつもあの人に馬鹿だとかイジられている感じがありますけど、

 非常にまともな考えを持っているように感じます。


「その可能性については私も考えました。でも本当に途方もないことを考えておられるんですね。

 まどかちゃんに対してもほとんど何も話されていないだなんて……」


「んでさぁ、話が逸れちゃったけど。お兄ちゃんについての話に戻るけど。

 やっぱりあたしが好きになった知美ちゃんが、あたしが好きなお兄ちゃんのことを理解してくれるのが凄く嬉しく思うんだ~」


「そう言うことなんですね……やっぱり玲子さんもまどかちゃんも凄く優しいですね。

 私は心がとても狭いのであまりそう言う心境にはなれないような気がします……」


 私は特に誰かを特別に好きになったことは無いのですが、何となくですが独占したくなってしまうような気がします……。

 本当に自分の心の狭さに悲しくなってきます……。


「まぁ、あたし達の方がちょっと変わった考えで、知美ちゃんの考えの方がむしろ自然なことのような気もするけどね~」

 

「はぁ……もしかすると、そうなのかもしれませんけど。

どうにもあの人の周りには“普通じゃない”考えの方が非常に多いような気がするので、

 “世間の考えと同じであるか”と言うことにあまり意味が無いような感じもします……」

 

 もしかしたら私もその“普通じゃない人”なのかもしれませんが、それにしてもとても個性が強い人が揃っているような気がします……。


「あたしは思うんだけど、最後はお兄ちゃんが誰か1人に決めることがあっても、

 それを他の人が笑って認める――そう言うことがあっても良いんじゃないかと思うんだよ。

 だからお兄ちゃんが誰かを決めるそれまではお互いに高め合おうとしてるんだと思うね。

 お姉ちゃんもきっと同じようなことを考えているから凄く寛容なんだと思うね~」


「なるほど……」

 私が果たして“笑って認める”と言うことが出来るのかどうかはよく分かりませんが、理念としてはとても良く分かりました。


「でも、よく考えてみたらあたしじゃお姉ちゃんの相手にならないよね。

 あー、あたしも夢見てるのかなぁ~」

 

「玲子さんは確かに圧倒的に素晴らしい方ですが、まどかちゃんが女性として玲子さんより下回っているとは思えません。

 玲子さんは大人の魅力は凄いですが、まどかちゃんはとても元気で可愛らしいと思います。

 それでありながらしっかりした考えを持っているように思えます」


「うーん、そう言われると嬉しいけど。あたしはお兄ちゃんから馬鹿だって言われてるからな~」


 多分あの人の“イジリ”の一環なので本心では無いように感じますけど、まどかちゃんは完全に“自分が馬鹿だ”と信じ切っていますね……。


「あの……まどかちゃんはとても聡明だと思いますよ。

 あの人もきっと悪意があって言っているわけじゃなく、昔からの流れで言っているだけのような気がします」


「うーん、そうなのかなぁ……って密かにお兄ちゃんを庇ってるし! やっぱりお兄ちゃんのこと……!」


「ち、違います。私が感じたことを言っただけです。今度真意を本人に問いただしてみたらどうでしょうか?」


「確かに聞いてみないと分からないよね」


「まどかちゃんのことを馬鹿だと言っているのもきっと勉強ができないからだと思いますよ――まぁ、あの人も落第点ギリギリのようなので人のことは言えないと思うんですけど。

 あの人を見返すためにも私と一緒に勉強しませんか?」


「ちょ、ちょっとそれは困るかなぁ~。知美ちゃんも本当に好きなのかどうかよく自分の心に聞いてみてね。じゃぁおやすみ~」


「あ、おやすみなさい。また明日頑張りましょう」

 何だか自由な感じはあの人になんとなく似ているような気がします……。


 ですが、これ以上はヘタにあの人には近づかないようにします。本当に好きになってしまっては困るから……。

 仮に、あの人の本音があのままだとしたら、やっぱり私なんかよりも、玲子さんやまどかちゃんの方が相応しいと思いますし……。


 そんな複雑な感情を抱きながら私は気が付けば眠りについていました。

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