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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第2章 悪夢の共闘

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第57話 戦車シミュレーション

「では、皆さんこちらへどうぞ」

 

 父上の警備部長の三浦さんを先頭に僕たちは白い建物に入る。障壁からは少し距離があり安全地帯と言える。それに対して父上は障壁に隣接した防御力が非常に高そうな緑色の建物に向かっていた。


「へぇ~。凄いねぇ~。圧倒的だねぇ~」


 中は博物館のような感じになっていた。まどかが中にある戦車や重火器の模造品を見ながら頷いている。


「ちなみに、そこに展示してあるのは第三次世界大戦まで使われていた兵器だよ。大体3分の1スケールだけどね」


「どうして、今は使われていないの?」


「まぁ、簡単に言えば古くなったんだ。機密なので詳しいことは言えないけどね。

ここには3世代ぐらい前の物を展示しているね。まぁ、もしも今ここで戦うことになったら見られるかもしれないけど」

 

“機密“そのワードが一つ重要になってくる。機密を漏らしたレベルにもよるが即座に特攻局が飛んできて処罰される。最高レベルの国家機密レベルの禁則事項を漏らした瞬間に本人が捕まるだけでなく知ってしまった人も同罪になる。軍事レベルの禁則事項はどれも機密レベルが高いので話すにも繊細な神経を使う。


「そうなんだぁ~。今はどうなってるんだろぉ~」

 

 まどかはそんなこともあまり考えておらず、お気楽そうだ。仮に一般市民が戦場で巻き込まれるように機密事項を見てしまった場合には厳重に情報統制を行う他、機密内容によっては記憶を消すと言った処置も行われるらしい。


「ここでは、シミュレーションで対戦することも出来ます。虻輝様いかがですか?」


 コックピットのようなところに案内されると三浦さんがそう僕に言ってきた。どうやら戦車で戦うゲームのようだ。


「プロの技を見たいというわけだね? まぁ、操作方法さえ教えてくれればそれなりにできると思うね」


 戦車や戦闘機で戦うゲームは2年前の世界大会以来だが、FPSなどでこういった形式のゲームの操作は慣れている。一定以上のクオリティを出せるだろう。


「あたしが相手になるよ! 負けないんだから!」


「プフッ! まどかじゃ相手にならないだろうな――そうだ、折角だからハンデとして片手操作だけで戦ってやるよ」


「言ったなー! お兄ちゃんの舐めプレイがいつまでも通じると思うなよー!」


 ところが現実は残酷である。お互い同じ時間操作方法を教えてもらったはずだが、まどかは戦車を動かすだけでも一苦労だ。僕は途中欠伸をしながらでもノーダメージでまどかに勝った。


「はっはっはっ! 身の程を知ったかい? これがプロとアマチュアの差というものだ! 分かったかね? まどか君?」


「ふえぇぇん! あんまりな言い方だよぉ~! 知美ちゃんも一緒に戦おうよぉ~?」


 まどかが走って島村さんに泣きつく。島村さんはゲームなんて興味無さそうだと思うが……。


「良いですよ。あの人がゲームで負ける所を見て見たいですしね」


 どう言う風の吹き回しか知らないがかなり意外だった……。それとも僕をそこまでして倒したいのだろうか……。それとも仮想的な戦いで殺したいのかもしれない……。


「左手だけで十分だ。僕の実力を見せつけてやる」


 2人が席に着く。とりあえず、作戦としては、明後日の方向ばかりを射撃してくるまどかは無視して島村さんを集中狙いすることにした。


「させません!」


 ところが、島村さんは僕の砲撃を上手い具合に交わしてきて反撃してくる。堅実で直線的な動きではある。だが、こちらは片手でやっているのもあるが、まさかのこちらの方が劣勢だ。


「くっ、しぶとい! どうやらこちらも本気を出さないといけないようだな」


 流石に色々なことにセンスがある。僕は少し持ち方を変えた。動きの切り返しを最小限にして、損害を受けつつも島村さんを砲撃した。


「あっ、しまった……」


 島村さんが思わず頭を抱えた。“大破”のサインが出て敗北が確定したからだ。島村さんの戦車を大破させるとまどかもすぐに倒せた。連携がまともなら確実に負けていただろう。


「ふぅ、薄氷を踏むような戦いだった……」


 今朝玲姉から渡されたハンカチで額の汗をぬぐう。被弾する場所によるがあと1被弾ほどで負けと言って良かった。島村さんも素人と踏んで最初ちょっと油断していたのがいけなかった。アレは“磨けば確実に強くなる”そう思えるレベルの強さだった。


「いやぁ、流石ですな虻輝様。2対1の上に片手とは思えないほど見事な動きでした」


 観戦していた景親が大きく拍手した。


「虻輝様の戦車や戦闘機の動きは、“模範的な動き”としてAIに採用されている部分も多いですからね。今日も大変参考になるデータでした」


「いやぁ、そんなに褒められたものでは無いね。移動か攻撃どちらかに絞らないと難しかった。途中からは移動は最低限にして標準を絞ることに重点を入れたね」


「ですが、地面がぬかるんでいる時などを想定すると“手が塞がった虻輝様の動き“というのは一定の参考にはなりますね」


 三浦さんは大きく頷いている。確かに言われてみればそう言う想定も十分あり得る。


「毎度思いますけどゲームだけは一流なんですね……。躍動感や表情が全く違います。移動はどうやって行っていてたんですか?」


「ん? 小指1本でやってたね。ここぞという時は薬指も使ったけどね。基本は指3本で標準を合わせて残りの親指1本で砲撃した。標準を合わせるのが意外と大変なゲームだったからね」


 僕は手の形で示して説明した。皆一様に驚いたようだ。


「指1本で移動とか……もう人間業じゃないですね」


 島村さんは関心というより呆れと言った表情だ。


「いや、島村さんも良い動きだったね。正直あそこまで追い詰められるとは思わなかったんで、序盤は油断してたよ」


「確かに途中から動きが変わりましたね……正直予想以上でした」


「はっはっはっ! もっと褒めてくれたまえ!」


「ゲームだけそれだけ出来ても仕方ないですけどね。現実の肉体に反映されなかったら意味が無いです」


「ぐっ……」


「お兄ちゃんはホントゲームだけは超人レベルだよぉ。もっと他のことにも力を入れて欲しいね!」


「1つだけでも世界一なんだからいいだろぉ。お前がいないほうが島村さんは勝てたかもなぁ!」


 まどかの頭をポンポンと叩いた。


「リアルではメチャ弱いクセにぃ! ゲームだと上から目線なのがムカつくぅ~!」


 まどかはほっぺたをパンパンに膨らまして微笑ましい。それをプニッと僕の手で潰すのも楽しい。島村さんも笑顔で見守っている。

 まどかのお陰で島村さんの殺気も減ってきたような気がする。まどかを連れてきて本当に良かったと思った。

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