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第45話 意識の変化

2055年(恒平9年)10月31日日曜日

 

 昨日は死んだように寝たために夢を見ることすらなかった。


「んんぅー! いい朝だ」 


 時刻は6時50分。健全な睡眠をとった感じがある。連日死線を潜り抜けているので疲労感もあるが充実感もある感じだ。窓からの日差しも暖かく爽やかな朝だ。


「そういや、昨日が土曜なのもあってか依頼は無かったな。幸いではあるが」


 とか言っていたら為継から連絡だ。もはや、恋人同士なのではないかというぐらい頻繁にやり取りしているな(笑)。


「おはよう、どうした?」


「おはようございます。虻輝様には今日は依頼が無いようなので再び私から依頼です」


 僕もそう言われてコスモニューロンで確認したが確かに依頼が無い。


「へぇ、どうした。何かあったか?」


「景親についてなのですが、昨晩目を覚ましたようなのです。容体につきましてはこの間のように暴れるということはなく、普通に会話ができるようなのです」


「ほ、本当か!? そりゃ一大事だ! 僕も聞きたいことはたくさんあるからな」


「特攻局もすかさず話を聞き、一気に特別審判まで行うということです。そこで、虻輝様にもお越しいただければと思ったのです」


 特攻局の仕事量はAIなどで処理をしているとはいえ、監視をしなくてはいけないので尋常では無い。

 そのために、余程の重要人物でない限り次々と“審判“を行うのだろう。この特攻局の審判は裁判の判決と同じだけの効力を持つようだ。


「本当に特攻局は動くのが早いなぁ。もちろん行くさ。約束だしな。それで、何時に来てくれる?」


「15時に審判が始まるとのことです」


「今日僕は、父上に最近起きた出来事を報告しようと思う。昨日のマフィアに早めに退院されたようなのでね」


「それが良いでしょうな。14時に虻利本社前でよろしいですかな?」


「そうだな。それがいい」


 伊勢については色々と興味がある。まず、なぜテロリストに加担したのか、誰から師事を受けたか。誰から洗脳されたか。

 そして、それらの記憶は残っているかなど興味は尽きない。正しく答えてくれるか分からないが、彼の親友と言える為継がいてくれるならば話の信憑性が上がると言っていいだろう。


 更に僕がいるだけで特攻局の処罰が少しでも軽くなればと思う――何か特別な弁護ができるわけでは無いのが歯がゆいが……。



「というわけで、今日は午前は父上に挨拶に行き、午後から伊勢のところへ為継と一緒に行くことになった」


 朝ごはんが終わった後、今日の予定を皆に説明する。


「昨日来た案件は吉岡君と佐藤君とサポートで虻忠君に任せることにしてあるからね。公園の清掃ですって」


 掃除の案件は僕の通知に届かないようになっている。ここのところアイツらは地域の清掃ボランティアか大学の清掃担当者かというぐらい掃除をしまくっているらしい……玲姉の指導の下で掃除の達人になっていることだろう。昨日も体がボロボロだと嘆きの知らせが届いた……。


 流石に1日30万円で掃除をしてくれという案件はそうそうないだろうから僕にはそんな要請は来ないだろうと胸をなでおろす――しかし、よく考えてみればそれ以上に命の危機を感じる過酷な案件や事件が発生しているけどね(笑)。




僕はその後玲姉に弁当を渡されて出発し、今は父上のいる社長室前にいる。


「父上、ただいま参りました」


「入りたまえ」


「退院おめでとうございます……どうやらさらに警備を強化されたようですな」


 ここに来るまでの間にすれ違った量産型ロボットが増えたように感じた。そして前回までいなかった警備員もいる。


「虻輝様、お初にお目にかかります。三浦明澄と申します警備部長を務めています。よろしくお願いします」


 確かに胸に並の警備員ではないという紋章が光っている。


「どうも、父上の警護をよろしくお願いします。父上が強化させたのですか?」


「いえ、虻頼様からのご命令です」


「あ、そうだったんですか」


「私は、別に必要無いと言ったのだがな……」


「その割には包帯グルグル巻きですね……。ご隠居様も父上のことが心配なのでしょう。もうちょっと入院期間が長いということも聞いていましたが、状態はいかがなのですか?」


 三浦さんは警備部長という割には為継と同じ具来の年齢でかなり若い。彼もやはり多大な功績を挙げてきたのだろう。


「うん、仕事の都合上あまり空けておけないからな。あまり無理をしない程度に業務をこなそうと思っている。そういえば、お前も昨日は大変だったみたいじゃないか?」


「いやぁ、昨日は本当に電話で“お話“することになりましたがご迷惑をおかけしました」


「流石に焦ったぞ。まさかお前が捕らわれてしまって身代金を請求される事態になるとは」


 父上も涙声だったそうですね……と言いたくなったがここは迷惑をかけた手前ツッコむのは野暮だろう。


「ホント……面目ないです」


 ロボットが手早く視界に現れて紅茶とお菓子を出してくれている。今日はあまりにも惨めで食べる気すら起きなかった……。


「――まぁ、私もこの有様だし人のことを言っていられない。

つまり、お互い身の振り方を考えて命を大事にしようということだ。

それより、一昨日から玲子に鍛えられているようじゃないか」


「ええ。昨日からは心を入れ替えてボチボチやって行こうかと思っております」

 

父上は目を丸くして口をパクつかせている。


「お、お前がそんなにも変わるとはな」


「流石に連日女の子に救われるようじゃ情けないと思いまして。自衛能力ぐらい身に着けておかないと思いまして」


「お前の周りには強い女があまりにも多過ぎる感じはあるがな……並の強さでは玲子には救われ続けることにはなりそうだがな」


「玲姉は正直言って強いとか弱いとかの次元を超えてますからね……比べる対象ですらないかと」


「ははは、そうかもな」


「とりあえずは、玲姉が来るまでの間の時間稼ぎができるように頑張りたいです。

 最低でもまどかぐらいのレベルにならないと」


「まぁ、現実的にはそうなるよな」


「あと、コスモニューロンで報告したのでご存じだとは思いますが、伊勢景親と言う小早川の親友を保護しました」


 父上は少し真剣な顔になる。


「それも聞いた。今日の午後が特別審判らしいじゃないか」


「はい。僕も出席することになっています」


「お前にしてはずいぶん活発的じゃないかどうしたんだ?」


「まぁ、世界大会も近いんですけど今回はFVなんで比較的自信がありますからね。ある程度手を抜いても大丈夫と言うのはあります」


「ゲームを仕事にすることについては何も言うことはないが、流石に入れ込み過ぎだとは思っていた。色々なことをすることで視野が広がることだろう」


 ちなみにこの生活をする前までは1日12時間~16時間eスポーツをするのがデフォだったからな……。家族が心配してくるのも分からなくもない。


「まぁ、それについては分かりませんけど、1戦における集中と言うか大切さと言うのが分かりましたね。前までは漫然と回数をこなすことで上達と言うか感覚を養ってきたという面がありましたので」


「そうだ。時間をいかに効率的に使って結果に繋げていくかが重要になってくる。人生は長いようで短い。特にまだお前は10代だからまだ分からないかもしれないが、20代からは飛ぶように時間が過ぎ去っていくぞ」


「へぇ、そうなんですか。僕は最近特に毎日が長いですけどね」


 特に島村さんが来てからの数日間だがウンザリするほど1日が長い……。濃厚な日々であることは間違いないんだがね……。


「20代からは飛ぶように過ぎ去るぞ。特にだな毎日同じようなことを繰り返していくと、あっという間にオジサンになっているぞ」


「分かりました留意しておきます。特に毎日を大事に過ごすということに関しては僕も最近痛感しているので」


「お前は能力はあるがあまり活かす気が無いというか、方向性が違うというか、虻景や虻忠とは違った意味で心配させてくれるからな」


「昨日の件と言い本当にご迷惑をかけていることは本当に申し訳なく思っています。今後はなるべく迷惑をかけないように善処します」


「ハハッ、その言い方お前らしいな。今後は色々なことが物凄い勢いで起きてくるだろう。瞬間、瞬間を大切にな」


「ええ、その瞬間を生きるのだけは得意ですのでお任せを」


「そうだったな。今日はご隠居に挨拶に寄らないのか?」


「……流石にあまり得意では無いので、義務的ではない限りちょっと勘弁願いたいです」


「うむ、私が何か言い訳を考えておこう。伊勢については頼んだぞ」


「はい任せて下さい。では失礼します。三浦さんも父上の警護よろしくお願いします」


「勿論です。任せて下さい」


 僕は黒塗りの部屋を後にした。この後為継が来るまでの間は10階のレストルームで休んでおくかな。

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