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第25話 頼りになる助っ人

15分後、タクシーが止まり一人の大男が出てきた。僕たちを確認すると走ってきた。


「あの、虻輝様でしょうか?」


「ええ、そうです。小早川さんの知り合いですか? ……もしかして以前お会いしたことがあります?」


 僕は何だか既に以前会ったような気がしたのでそう聞いた。


「実は、この間のバーでの事件の際に会話した警官ですよ。北条輝成と申します。よろしくお願いします」


 北条はそう言ってコスモニューロンによる名刺を取り出した。役職は警部補だった。


「これは失礼しました。虻利ホールディングス副社長の虻利虻輝です。

こっちにいるのは僕の妹のまどかです。なるほど、あの時の警察の方でしたか、あの時はあなたがいればとてもこの街は安心できると頼もしく思った程です」


 僕も名刺を渡す。まどかは僕と同様に人見知りするタイプなのでさっきまで元気に騒いでいたが、今はそれが嘘のように借りてきた猫のように静かにしている。


「敬語はやめてください。為継みたいに部下みたいに扱ってくださればと思います」


「あ……そうなの? その方が圧倒的に楽だから遠慮なくこういう喋り方をさせてもらうけどね」


 お言葉に甘えて砕けた口調にした。どうも年上が相手だと最初は敬語になってしまう。まぁ、基本的にはこちらの方が社会的地位が高いことが多くてもその方が無難ではあるけど。


「ところで、あのセント・バーナードですね? 任せてください」


 北条はそう言って真ん中のほうを持つと一気に持ち上げた。腕が太くパワーがあるからこそできる芸当だ。


「へぇ……大したものだねぇ。僕はこのようにもやしっ子なものだから」


「流石に前が見えにくいので何かありそうなら言って下さい」


「分かった。北条が降りてきたタクシーの隣に僕たちの車があるからその道中は特に何もなかったと思う」


 僕はそういいながら北条を先導する態勢に入った。だが、北条は安定していたために特に何も指示することなく慎重に運びつつ5分ほどで車に到着した。


「美甘、後部のドアを開けてくれ」


 一番後ろのドアを開けさせそこに入れておいた大きな檻を北条が入れやすいような角度にしておいた。


「あたし、手伝うよ!」


 まどかも気が付けば元気になっており最後の仕上げのところで手伝っていた。


「いやぁ、北条助かったよ。ホント、ありがとう。僕たち完全に途方に暮れてたからな」


「お兄ちゃんが男子なのに頼りなさすぎるんでしょ……」


「仕方ないだろぉ。僕はスーパーインドア派なんだからさぁ」


「ふふっ、虻輝様は愉快な方だと為継から聞いていましたがその通りですな」


 おい、為継。一体どういうことを吹き込んでるんだよ……。


「とりあえず、このバーナードを飼い主に届けるとして、北条はこの後のことを知っているか?」


「ええ、景親を助けるという話ですね。その協力も是非ともさせてください」


 僕たちは飛行自動車に乗り込む。北条は汗を拭きながら答えた。


「ところで、為継や伊勢とは一体どういう関係なんだ?」


 車が静かに発進し、景色が流れ出す。まどかや北条のためにクーラーが作動し始めた。僕はほとんど動いていなかった都合上全く暑くなかったのでむしろ寒いまであるが、メインで働いた

2人のためならば仕方ないだろう。


「為継とは高校の同級生で、景親は2つ下の後輩です。ちなみに3人とも野球部に所属してました」


「あ、そうだったんだ。僕も野球部にいたよ……半分幽霊部員だったけどね(笑)。いやぁ、何と言っても上下関係とかダルすぎてね(笑)。しかし、為継が野球部ってのはちょっと意外だな。なんか今の仕事がオフィスワーカーだから屋内での作業をしている文芸部みたいな印象だったよ」


「確かにそう思われても仕方ない感じはあります。しかし、人は見かけによりませんからな」


 そうこうしているうちに依頼者である佐久間さんの家に到着した。


「こんにちは、バーナードのマロンちゃんを無事捕まえたのでお届けにあがりました」


 僕はインターフォンを鳴らした後そう言った。


「まぁ、ありがとうございます! まさか、こんなに早く見つけて下さるなんて。」


 直ちに佐久間さんは出てきた。いかにもセレブのお嬢様と言った感じのヒラヒラした感じの服装だった。僕の隣にいた北条がバーナードが入っている檻を佐久間さんに渡した。


「あらぁ! マロンちゃん! 無事でよかったわっ! マロンちゃんは家族以上の存在なので本当に助かりました!」


「マロンちゃんは、麻酔銃が効いているので大体あと1時間半ぐらいしたら起きると思います。檻もこのまま差し上げます。もしもマロンちゃんの体調に何か問題があったら教えてください」


「まぁ! 檻まで頂けるだなんて! また何かあればよろしくお願いしますね」


 正直そんな檻があっても仕方ないからな……あ、玲姉が僕を拘束する際に利用しそうではある――そうなると余計に佐久間さんにあげるべきだろう(笑)。


「ええ、僕達でできることであれば。何なりとお申し付けください」


 そう言って、報酬である30万円を受け取り佐久間さんの家を去った。これからは伊勢を探すための調査に乗り出さなければならない。


「やっぱり、感謝されると嬉しいね!」


「いやぁ、何度この瞬間を味わってもまた体験したいと思っちゃうねぇ。お前達のお陰だよ! ありがとうまどか、北条!」


 体の内側から湧き出る高揚感というのはeスポーツの世界大会で何度も味わったが、それとは違った感覚だった。そして玲姉予想した通りこの“万屋プラン”はやはり僕にとって相応しかったということだろう。そもそもの話としてあまり人と接する機会が少なすぎたので感謝されるという機会そのものが無かったのだが(笑)。


「お兄ちゃんもあたしのことを見直してくれてた!?」


「うん、想像以上だった。次の伊勢との戦いでも期待してるぞ」


「任しといて! あたしが全部解決しちゃんだから!」


 北条はまどかの様子を見て微笑ましく笑っていた。ただ、伊勢という男も相当強そうだ。この勢いのまま行けるかどうか五分五分という感じはするがな……。

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