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第19話 誘惑との戦い

島村知美が店に戻ってくるほんの少し前。虻輝は野々谷カレンに追い詰められていた。


「の、野々谷さん落ち着こう……」


 僕はベッドに押し倒されて、上半身は裸にさせられ野々谷さんの下敷きになっている。


「フフフ……ウチがシャワーで戻ってくるまでそこにいてね……」


 僕は片方の手錠で右手とベッドで繋がれた。野々谷さんはシャワーに勇み足で向かって行った。


「こ、この間に何とかしないと」


 ここで警察を呼べば助かると言えば助かるが僕としては何も成果を挙げずに終わってしまうだろう。全て警察のお手柄になるか、何もなければ完全に負け犬みたいだ。


 この部屋はシャワー室とトイレと最低限の設備しかついておらず、手の届く範囲で物を探すことができる。ただし、片手がベッドと繋がれていて封じられているので手間がかかる。時間が足りないかもしれない。


「まずは……ちょっと気が引けるけど……」


 僕にも任務はあるので背に腹は代えられない。

プライベートの塊である野々谷さんのバックを開く。何だかよくわからないが化粧品みたいな物が多くある。薬物には粉のものもあれば錠剤みたいなものもあり、既に液体になっているものもある。しかし、それらしき怪しい物は見つからなかった。


「次は、こっちだ……」


 この部屋の備え付けの家具を物色する。中はほとんど空ばかり……たまに入っているものも空き瓶みたいなものばかりで証拠として取り上げられそうにない物ばかりだった。


「上がったわよォ~」


 野々谷さんはシャワー室から出て体をふき始めたようだった。僕は急いで開けっ放しだった引き出しを戻し、野々谷さんのバックから出したものを戻した。


 そんな時、ふと目に入ったものがあった。それは手書きの楽譜だった。何やら作曲していたらしいということは分かったが――何か引っかかって決定的な言語化は出来ないまでも“重要な意味”を持つということだけは感じた。


「フフフ……アタシは実は芸能界入りしたのはもう一つ目標があって、音楽でメジャーデビューしようとしていたんだ」


 真後ろから声が聞こえてきたので思わずビクッと震えて振り返った。


「そ、そうだったんだ……勝手にバックの中を見てゴメンね……」


 率直に頭を下げて謝った。悪いことをしたのは間違いない。


「そんなことはイイんだよ……それより、アタシ最近作曲の調子が良いんだ。何かドンドン新しいインスピレーションが湧き上がってきていて、『新世界』に到達できそうな感じなんだァ!」


 野々谷さんの言葉を聞いて先程手書きの楽譜を見た時に言語化できなかった“重要な意味”を『新世界』という言葉を聞いた途端に気づいた。


 そうか……野々谷さんは恐らく、本当は音楽の道やアイドルになりたかったのだろう。

しかし、夢叶わず仕方なくグラビアの道を行っている。そして、もう一度音楽の世界に入ろうと薬物に手を出したのだ。


 覚醒剤などを使用することで一時的に五感が覚醒し、色や音や空間など様々な感性が普通に生きているだけでは味わえない世界に行くことが出来るということらしい。ただし、その代償として依存性と深刻な体へのダメージが伴う結果となる……。


「ネェ……子供何人欲しい?」


 彼女は目を潤ませて僕の手を握る。野々谷さんの手は風呂に入ったばかりだというのに柔らかいが冷たかった。


「え……いきなり何を……」


「実は、今日は危険日なんだァ~。だから、中に出してくれたらすぐにデキちゃうと思うんだよねェ~。そしたらすぐに、結婚式あげよォ~」


 ヒィィィィ!!!! 僕は握られた手を振り払う!


「ホラ、これがさっき言ったキモチヨクなれる。とっておきのモノだよォ~。」


 そう言ってタオル1枚の野々谷さんは、さっき僕が物色していたバックの中から化粧品のケースを取り出し、中から白い粉の入った小さなビニールを取り出した。

 何ということだ、あの化粧品だと思っていたものの中にあったとは……よく考えてみれば、“白い粉”という意味じゃファンデーションみたいなのも含まれるから偽装しやすいのか……。


 しかしこれはある意味チャンスだ。現行犯逮捕という形にできる。音声を外部モードにして為継に繋げよう……奴ならば上手くやってくれることだろう。あとは、僕が欲望に呑み込まれないように耐えるだけだ。


「ぐ、具体的にはどういう効能があるの?」


「お互いの性〇に塗って〇ックスをすることでェ~。トベルんだってェ~。なんでも海外から特別に輸入したものなんだって~」


 もう既に野々谷さんの眼が焦点が合っていない。両手も震え始めており、化粧品の容器も震えている。徐々に薬物への禁断症状に近いものが出ているのかもしれない。


 僕もネットのCMなどに出演しているので芸能界との繋がりが多少なりともあるので、噂レベルで聞いたことがある。こういった“特別な会員制”のところで薬物中毒になっている人というのが性行為によって広まっているという話だ。野々谷さんはそういった感じで薬物の快楽に手を染めてしまったのだろう。


「そうねェ~。まずはこうやってェ~、ここに流し込みまァ~す」


 G88と言われた素晴らしいバストの谷間に粉を流し込んだ。


「そしてェ~。ここにアナタのモノを~挟みま~す」


「や、やめろぉ!」


 一瞬釘付けになったが、野々谷さんの声で正気に戻った。僕は少しでも時間稼ぎをしようと、必死になって狭い部屋の中でなるべく野々谷さんから距離を取る。無理やり暴力を振るえばもしかすれば逃れることもできるかもしれないが、彼女は傷つけたくない。


「もォ~逃げないでよォ~」


「ぼ、僕はもうちょっとこういう関係になるのはもっと後でいいと思うんだ。お互いのことをもっとよく知ってからだな……」


 何とか手錠で縛られていながら交わしていたが、ついに捕らえられた。


「そんなことはササイナ事だよォ~。キモチヨクなればそれも忘れるからァ~」


 もう、何でもいいから思いついたことを言うしかない!


「じじじじ実は僕、アレが大きくならないっていう病気なんだよね~だ、だからご要望に応えられないと思うんだ!」


 そんなことは全く完全なでたらめだがとにかく1秒でも稼がないと……野々谷さんは流石に一瞬、野々谷さんは停止する。


「ふぅん、本当にそうなのか確かめるねェ~」


 うわあああああオシマイダ……僕は薬物中毒の廃人になると共に性奴隷に成り果てるんだ……。


「ちょちょちょ! 僕もシャワー浴びてくるよ!」


 僕は強引にベッドの足を蹴り上げ、腐っていたのかベッドの足が折れた。

 手錠はついたままだが一応体は自由になった!


 とりあえず時間稼ぎをするために急いで浴室に向かい。ドアを閉め。ドアに体重をかける。これで開くことは無いだろう――と信じたい。



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