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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第59話 社会勉強①

昨日とは違った待ち合わせ場所に集まりました。今日は私が最後だったようです。


「お二人とも遅れて申し訳ありません」


私は息を整えながら頭を下げました。


「まだあと10分あるわ。でも、さっさと向かわないと向こうの都合もあるからね。今回は結構急に訪問するから」


玲子さんはそうおっしゃるとスタスタと歩き始めました。


「手掛かりあんの? 昨日の感じだとどうしようもないような気がするんだけど……」


まどかちゃんが玲子さんを見上げながらそう言いました。私はその半歩後ろを歩いている感じです。


「手掛かりが掴めなかったところが手掛かりというところかしら」


「何か哲学的ですね……」


「全然意味が分かんないよ……」


玲子さんが別次元の視点で物事を見られているのでたまに全くついていけないことがあります……。


ただ、玲子さんが全く意図なく説明も無いままに意味不明なことをされることはあり得ないと思いますので説明を待ちましょう……。


「簡単に言うのであれば、私の想像通りである可能性が高いということよ。

私は獄門会の色々なところを知っているからね。

彼らが何とかして大王さんを消そうとしているということね」


「大王さんは玲子さんの”宿敵”とも言える相手の一人だと思うんですけどどうされるおつもりですか?」


「私にとって獄門会も大王さんも同じぐらいのレベルだから今の境遇を考えれば大王さんの側に立つしかないわね。

獄門会と対立していても生活はできるけど、大王さんに逆らえばこの世界の人間としての生活ができないからね」


玲子さんの事情もいろいろと複雑なんですね……というかよく考えてみれば私たちの周りって敵とも味方とも断定できない人たちに囲まれていませんか?


大王さんはとんでもない技術を研究をしていて私たちの身を害しかねませんが、当面の間はその技術と立場に頼らないと生活すら保障されていないと言えます……。


獄門会の方たちは玲子さんを迫害していたとはいえ、大王さんに対抗できる唯一とも言っていい勢力と言えます……。


「なるほど……そうなると、どういうアプローチをされるおつもりですか?」


「私も皆には内緒ではあるけど色々な人と関わり合いがあるのよ。

私なりに対処できることはあるのよ」


「玲子さんはお強い上に虻輝さんの夢に出てくるぐらいまで想われていて本当に羨ましいです……」


それに対して玲子さんは笑顔のような泣いているような何とも言えない表情になりました……。


「うぅ~ん。ちょっと”輝君の夢”ってのは普通の人の夢とは違うみたいなのよ」


「何がどう違うんですか?」


「どうやら輝君は予知夢に近い夢が見えるみたいなのよね。

本人が全く行ったことがない場所でも、そのシーンが浮かぶみたいだからね」


「それって予知夢じゃないの?」


「そこがちょっと違っていてね。輝君の場合は”似たような未来”を見ているような感じなのよ。

現実的にはそうはならないことも多いということね」


「そうなんですね……」


「ただ、参考にはなると思うわ。私は常にあらゆるパターンを想定して行動しているけど、範囲が絞られればより対応できるからね」


「玲子さんはそんな夢を見られることはあるのですか?」


玲子さんの答えはなんとなく私たちに”配慮”してくださって、取り繕っている印象も受けますけどね……。


「うーん。いわゆる”デジャブ”と呼ばれるような感覚に陥ることがあるけど、そんなにハッキリと先の未来が分かるということはないわね。

あれは輝君の特殊能力に近いものじゃないかしら?」


「お兄ちゃんなんかにそんな力があるだなんてぇ。あたしももっと何かできることないかなぁ……」


「まどかちゃんはよくやってるわ。元気で訓練してくれればそれで良いのよ。ただ、もうちょっと勉強とかもしっかりして欲しいわね……」


まどかちゃんは顔を歪ませました。どれだけ勉強が嫌いなのでしょうか……。


「夢では幽霊みたいな敵に囲まれるというお話でしたけど――私やまどかちゃんの攻撃が通用する気がしないんですけど……何か手伝えることはあるのでしょうか?」


「基本的にはあまりないような気がするわね。

もしも相手が襲ってきたら私が対処するから。もしかすると、普通の物理的な攻撃は効果がないかもしれないからね」


つまり、玲子さんの強さみたいなものを”直接学び取れ”ということを意味しているんだと思います……。


本当はお一人でも大丈夫なところをわざわざ連れてきてもらっているわけですから足手纏いにならないようにしなければ……。


「お姉ちゃんのパンチはどうして幽霊みたいなお化けにも攻撃が通るわけ?」


「……私はそれこそ様々なことを生家と親戚から受けてきたからね。それに対抗する手段ができたってことよ。

ただ、あまりにも力が付きすぎたから追放されちゃったってわけ。

ちょっと一朝一夕では難しいかもしれないわね。

ま、2人は社会勉強だと思ってついてきてくれればいいから」


まどかちゃんは”社会勉強”と聞くとあたりを見回し始めました。


「って、お姉ちゃんよく見るとここはK神社じゃない!?」


まどかちゃんは顔をスッと青くしました。


K神社はまどかちゃんが帰り際に呪いで倒れたこともあって良い印象が無いのでしょう……。


「そうね。まどかちゃんは一度悪い印象を持つと途端に出来なくなってしまうことがあるからね。

そういったトラウマを解消していかないと。特にK神社さんのせいじゃなくて大王さんのせいだし、

もう健康面でも不安はないのだから問題ないのよ。


「う、うん……分かったよ……」


私たちに経験が足りないから実際に一緒に行くことで経験を積ませようとしているんでしょうね……。


「K神社で一体何をしようとしているんですか?」


「一番いいのは大王さんに呪いをかけている張本人を聞き出して辞めさせること。

次にいいのは境界線が分かるような資料を出させること。

最低でもそのヒントになることが分かればいいからね」


「なるほど。この神社は相当規模も大きいですし、前回問題も起きましたからね……色々知っている上に協力してくれる可能性はありますね」


「ま、相手も相手だし一筋縄では行かないとは思っているけどね――2人とも少し下がった方が良いわね」


「え?」


「噂をすれば、というところかしら。お迎えの方々が来られたみたいね」


玲子さんが近くにいる安心感からか油断してしまいましたが――私たちは幽霊みたいなものにに囲まれてしまったようです……。


普通のお迎えの方とは随分と印象が違うように思えますね……。

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