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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第57話 分かっているけどやめられない

気を失っていたのは30分ぐらいだったので、玲姉にはかなりの手加減をしてもらっていたようだった……。


その後玲姉のお説教を聞いた後はお風呂に向かった。何かよく分からないことに巻き込まれ続けていたので体と言うより精神の方が疲れたな……。


「そういや、今日はデザート食べ損ねたな……。烏丸の奴が持ってきてくれなかったから……。冷蔵庫に僕の分残ってるかな……」


こういう疲れた時にはデザートを食べて心身をスッキリさせるに限るからな……。


僕の分が無かったとしても、何か漁ってでも食べてやるぞ……。


と、思いながらリビングに向かったら既に皆がデザートを食べていた。


「ほぉ~。今日はケーキの切り分けか~」


ショートケーキが僕の定位置に置かれてあったのでウキウキで席に着く。


「元気そうで何よりだわ。

輝君は心身を休ませるために甘い食べ物を食べたいみたいだけど。

血糖値を急激に上げるから、むしろ興奮状態になっちゃうのよ。

特に寝る前には食べない方が良いわね。

私と同じケーキを食べることをお勧めするわ」


僕のついさっきの思考をものの見事に読み取っている。


「あぁ、気が向いたらな……」


ちなみに、玲姉のケーキは一度食べたことがあるが、見た目こそ同じものだが、味は”悲惨”ともいえるぐらい無味乾燥としており、本場のケーキよりパサパサとしている。


正直言って二度と食べたくない。


「あたしなんて、お姉ちゃんに説得させられて、お兄ちゃんと一緒に食べに行く時以外はお姉ちゃんや知美ちゃんと同じような健康的なデザートにすることにしたんだよ……」


まどかはゲンナリと言った表情でケーキを食べてる。


いつもは目を輝かせてパフェとか食べてるから気の毒すぎる……。


「健康が大事なのはわかるけどさ。僕は甘いモノを制限してまで健康を維持したいとは思わないなぁ」


散々、甘いモノを食べまくっているわけだが、幸いコスモニューロンの健康管理機能で血糖値が引っ掛かることも無い。


大変有難いことに僕の父上と母上は健康優良児にしてくれたようだった。


「今は若いからそんな余裕があるのよ。一度健康を失ったら、例えば糖尿病になったら一生人工透析をし続ける上に甘い食べ物を全く食べることが許されなくなるのよ!」


「大丈夫大丈夫、僕は風すらもろくにひかない最強の体を父上と母上からいただいているからね。

並の人間と一緒にしてもらっては困るね」


「それこそ輝君のお父さんとお母さんがいただいた体を大事にしなくてどうするの!

輝君の行いが周りの人にも影響を与えるんだから!」


「ま、まぁゆくゆくはね……。」


心配をしてくれているのはありがたいが、玲姉の言葉を無視してケーキを切り分ける。ふんわりとした感触が手に伝わった。


そのままフォークを口にもっていったが、幸福感が口の中に広がる。

そして体中に幸せが広がるこの感覚ーーこれを失ったらゾンビになるも同然だろう。


生きながら死ぬのだ。


「夏休みの宿題だって25日ぐらいにようやく重い腰を上げて、しかも私にやらせているぐらいだったんだから……ホント極限まで追い込まれないと駄目なタイプよね……」


「ハハハハ……それで、さっきは思わず逃げたから聞きそびれたんだけど、玲姉達の方は大丈夫そうなの?」


「そうね。地道にやっていれば何とかキーパーソンに繋がりそうな感じはあるわね」


玲姉は自信がありそうな感じだ。


「そうなんだ……こっちはどんな生物かも分からないから途方に暮れてるよ……」


1日やってみてわかったことだが、再生力が卓越した新生物を探すなんて砂漠の砂の中からで金の一粒を探し当てるぐらい絶望的な話のような気がした。


生物学的専門性も無いために、仮に見つけたとしても既存の生物か新生物かどうか、AIの判定があっているかどうかも分かりはしないのだ……。


ましてや深海にいる生物なんてどれも新鮮で新種のように見えてしまう……。


「途方に暮れていると言いながらもゲームは出来ると……」


「ま、まぁ僕はこれが本業なんで……」


「いや、輝君は学生なんだから本業はどう見ても勉強でしょ……」


「まぁ、僕は最悪は虻利家の一員としてやりながらゲーマーとして頑張るんで……。

勉強なんてしてもどうしようもないかなって……」


「輝君は、勉強の大切さを以前、小学生の子に講釈垂れていたでしょ? (第2章13話)ゲームのスキルだけじゃゲームの業界ですらやっていけないのよ。総合知を出すためにはそれなりに基礎的な知識がないとね。AIの指し示すだけのことをやっているだけじゃ、不必要な人間よ」


何も返せる言葉はない……。


トホホ……因果応報というか正に自分の言ったことが跳ね返ってきたわけである……。


やはり僕は他人に対して何か言えるような実力のある人間ではないということだ……。


「あ、あの時は何というかそう説得するしかやり過ごせない気がしたんだよ。そもそも祥太と僕とでは立場が圧倒的に違うからね。生まれた家柄も違うし、彼の頃にはもう既にシニアで世界ランク2桁は余裕だったからね。

明確なビジョンがあったわけじゃなかったけど、ゲーマーになるんだろうなという感じはあったよ。

祥太はまだ将来の夢すらも決まっていない感じだったからなぁ」


ちなみに、祥太の名前を忘れかけて当時の記録をコスモニューロンで辿ってようやく思い出したのは内緒である(笑)。


「サボる詭弁だけは本当にお得意よね……。

その有様じゃ私たちが境界線問題を遅かれ早かれ解決して手助けすることになりそうね……」


「お兄ちゃんはいつもお姉ちゃんに面倒ばっかりかけて、どうしようもないなぁ~!」


「はははは……」


まどか。お前は僕と同じ玲姉に守られる側だろ……。ついこの間も呪いを喰らって心配させやがって……と言いたくなったが、余計な衝突は避けたほうがいいだろう……。


「人にはそれぞれ実力に応じた”分相応”というものがあるのは間違いないわ。

でも大学に卒業することや自分で引き受けたことぐらいはしっかりやらないと」


「はい……」


「大丈夫ですって、私が明日までにいい感じのシステムを作っておきますから。”尽くすあっちゃん”をご期待ください!」


「そ、そう……頼むよ」


目をキラキラと輝かせながら建山さんはそう言ったが、

そのネタで行くことに決めたんだな……。


なんだか騙すようで気が引けるが、利用できるものは利用させてもらおう……。


ただ、玲姉の言うことも間違いないことではある。


自分のやりたいことだけをやっていたり、AIやコスモニューロン、特攻局のシステムの言う通りにやっていれば、大王などの支配者から見たら「不必要な人間」ということでいずれ処分されてしまうことだろう……。


砂糖だって体や脳の機関を破壊し、正常な判断をさせないために存在している物質だ。依存性を持たせ、心身を隷属させる凶悪な成分を含んでいると言っても過言ではないだろう。


だが――分かっているけどやめられないんだよなぁ(笑)。

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