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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第47話 「真の独立」への道

「私も帰りは自動車にするわ……」


 と玲姉がポツリと呟いた。あの大王と対峙することはとんでもない圧力を受けるからな……。隣にいただけの僕ですら恐ろしい気分を味わったぐらいだから……。


 まどかが元気になってよかったはずなのに“敗北”したような雰囲気で、

 迎えに来てくれた美甘の飛行自動車の下に行く。


「しかし、大王について知っているつもりだったけど、今回は改めて驚かされたな……。

 本当に手段を択ばないってこういうことを言うんだなと……」


 シートベルトが3回目でようやく入る。それぐらい動揺は大きかった。

 “明日は我が身”とは文字通りこのことを言うのだろう……。


 まどかより心身ともに弱い僕が大王にやられるのもやはり時間の問題だ……。


「全く、大王さんがまどかちゃんに呪いをかけたと分かった瞬間は吐き気がしたわ……

 こういう心理的、間接的に私をコントロールしようっていうんだから」


「今思い出したけど、確かにこの間玲姉が言っていたようにどうすることも出来ない相手だね……。権力、金、テクノロジーを掌握しているから最強だ……」


「真の意味であの人から独立したいわね。

 昔はコスモニューロンさえ導入しなければ抵抗できると思っていたけど、今は色々な手を使ってくるからね。

 アッチ側も進化しているのよね。

 今回の件が上手く成し遂げられたとしても“独立”できているとは言えないわ」


「“真の意味での独立”って具体的にはどういうこと?」


「大王さんの管理下から脱すること……かしら?」


「なかなかハードルは高いと思うんだけど……だってコスモニューロンって持ってない人の方が少ないわけでね。あとはそこら中にある電子機器とか便利な調理器具、汎用ロボットなどから話を聞かれてるよ?」


「じゃぁ、まずは輝君がコスモニューロンを頭から抜き取りなさいよ」


「ええ~! 嫌だよ~! これはまさしく“仕事道具”とも言える奴なんだから。

 リアルデバイスだけで参加できる大会ばかりじゃないんだから!」


「確かにハードル高そうね……輝君は捻じ伏せれば何とかなるけど、他の子に関しては話は変わってくるからね」


「僕に対しても“捻じ伏せる”以外の選択肢を取って欲しいけどね……」


「輝君は良いのよ。私のことをよく理解しているし、逆に言っても聞かないときは聞かないから、力技が一番効果があるって経験則もあるから」


「酷すぎるだろ……。大王からの独立なんてハードルが高すぎて考えただけで僕はもう諦めそうだよ……。 僕は死んでこの世から独立することぐらいしか思いつかないな……」


「輝君には死ぬ勇気すら無さそうだから良いけど、そういう破滅的な考え方の人が出てきても不思議では無いわよね……」


「僕はゲームも出来ずに、玲姉が育ててくれてなかったら大王に媚売りまくって地位を得ることに努力をする奴になってただろうな」


「情けないわねぇ……。輝君はゲームで不可能と思える局面ではどうしてきたの?

 話を聞きかじっただけだけど、輝君は劣勢を幾度も逆転してきたという話じゃない?」


 これまでのゲームでの世界大会を思い出した。“奇跡の大逆転“と呼ばれたような試合はどうだったのか……?


「やるだけのことをやった感じかな。これまで経験してきたことフル活用させて、

 細い勝ち筋を探したりする感じ。

 普通に考えて勝ち筋が無い場合は、どうにかして勝てるパターンがないか考え直す感じかな。起きる確率が低いと思ってもそれを信じてやるしかないからね」


「どうしてゲームの話だと声色すらも鋭いものに変わるのかしら……。

 私としてはそれと同じような気持ちで取り組んでいるのだけど?」


 仮にゲームだとして2人が対峙した場合どうなるのか? について少し考えてみた……。


「なるほどね……ただ、大王はあまりにも考えていることが分からないからな。

 僕は玲姉と大王が直接対峙したら戦いのレベルは互いに“底知れない“といことで互角だと思うけどね。

 今回みたいに大王は玲姉“だけ”を見ているわけじゃないからな。

 まどかとて弱いとは思わないが、玲姉と比べれば残念ながら劣る。

 そこを有効に攻めているのだと思うね」


 大王が本当に恐ろしいのは、まどかが苦しみ玲姉が心を痛めているのを分かって、笑いながらやっていることだろう。自分以外の全てを切り捨てることが出来るぐらい血も涙もないのだ……。


 対する玲姉は“心“がある分強さでもあるが弱点でもあると言える。


「まどかちゃんを巻き込むぐらいなら、最初から大王の言うことを聞いた方が良かったのかな……? 大王の狙いが私だってことは少し前から分かっていたから……」


 玲姉も僕の口に出していない考えを汲み取ってそう落ち込みながら溜息を吐いた。


「でも、大王の言うことと玲姉の理念は日本と地球の反対側のブラジルぐらいかけ離れてるよ。

 玲姉も大王と同じぐらいプライドも高いから大王の要求を積極的には受け容れられないだろうし……」


「私のプライドが高くて悪かったわね!」


「い、いや……そっちがメインの話だったわけでは……」


 目の前までいきなり迫ってきたのでビビった……。


「確かに、何度同じような場面に遭遇しても同じような選択を取ったような気がするから、

 そんなに外れている話でもないわね……」


「それに、大王としてもまどかは“人質”にまではするけど、殺すことまでは考えないんじゃないかな?

 まどかがいない玲姉とか何の足枷も無い状態と一緒だから、本気で殴り込みに行くことは目に見えているし……」


「輝君の中の私のイメージってどうしてそんなに暴力的なのかしら……」


「い、いや……僕に対して容赦ないから……」


「輝君は甘やかしすぎるとすぐに調子に乗るから、ある程度手を挙げないと全くいうこと聞いてくれないじゃない? 私だってもっと優しくしたいんだから……」


「僕の責任ということで良いよ。もう……。ただ、今回のことで玲姉がそこまで責任を感じる必要ないんじゃないかな?

 そもそも、まどかが前よりも元気になったように見えるから“禍を転じて福と為す“みたいな感じになってないか?」


 元から元気一杯の奴だった気はしたが、あそこまでやかましかったか? とは思った。


「時には断食みたいなことをすることも良いことなんだと思うわ。

 ある意味解毒ができたのだと思うわ。

 私の指導不足なのかもしれないけど、輝君とまどかちゃんには甘い食べ物を食べさせ過ぎなのかも……」


「体に悪いだろうということは100も承知なんだけど、ついつい食べちゃうんだよね。

 あの食べた瞬間の高揚感や至福の幸福感は何事にも代えがたい……」


「そう言った甘いもの食べて幸せそうな顔されるとどうしてもね……。

 “中毒”に近いような気もするんだけど。これが現代社会の闇なのかしら……」


「食べるなと言われると余計にストレスが溜まるからな……。

 でもそう言う玲姉も似たようなの食べているような気がするけど大丈夫なの?」


「あぁ、私は大抵砂糖抜き自分専用に作り直しているのよ。見た目は似ていても味は全く違うわ」


「あ、そうだったんだ……そこらへん徹底しているんだね」


「美貌や健康は一度失ったら中々取り戻すことはできないからね」


「早い睡眠も徹底しているし、食べ物もそこまで気を付けてるなら玲姉は何歳になっても美人だと思うね……」


「ふふふ、お世辞でも嬉しいわ」


 本当に嬉しそうに笑っていた。


 その後はまどかが元気になり過ぎたら大変だとか、ひたすら他愛もない話を続けた。


 玲姉はまどかに対する責任は僕よりも大きく感じており、随分と落ち込んでいる感じがあったから少しでも励ますことが出来たのなら本当に良かった……。

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