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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第38話 分断工作

 “新救世主“の為継からの連絡を有難く取った。


「虻輝様、そちらではトラブルがあったそうですな」


「為継。なんか久しぶりだな。最近大王と直接やり取りしていたから……。

 こっちではまどかに謎の紋章が出てしまって大変なんだよ」


「まどかについては大丈夫ですか?」


「うん。何とか大丈夫みたい……。玲姉が来て対応したけど、落ち着いているから何とかなるのではないかと……。

 ただ、怒りを噛み殺しているような感じもするけどね。

 ところでどうして久しぶりに連絡してきたの?」


 玲姉が僕をいびるぐらい余裕があるんだから大丈夫だと信じたいけどね……。


「実は局長も怒っておられるんです。局長はどうやらK神社がまどかさんに呪いをかけたと思っておられるようで、K神社と交渉したくないと言われているんです」


「えっ! そうなの!?」


 それは一大事だった。折角上手くいきそうな流れだったのに……。


「まどかは今回交渉で初めてついていったのにも関わらず、呪いをかけられてしまったので、K神社に原因があると思っておられるようです。

 私は状況証拠ばかりで何とも言えないと思っているのですが、今回は局長自ら動こうとしているので警戒心が強いのでしょう。

 局長は今、冷静では無いので代わりに私が連絡したという事です」


「確かにそう言う見方もあるか……。為継はここ数日どうしてたの?」


「局長が痣を削除することに関する諸連絡をしている間に、私が局長の代わりの研究をしていました。

 勿論、内容は虻輝様と言えど口外することは出来ませんがな」


「そうだったんだ……」


 聞いたら恐らくは卒倒するような研究内容だろうから聞きたくも無いが……。


「私が局長を説得できるか次第ではありますが、今後の私の方針をお伝えしたいと思います。

 事情を説明に虻輝様にはK神社に再び向かっていただきます。

 今度は玲子さんでも連れていけばどんな相手でも対処できるでしょう」


「そうだね。玲姉もまどかがやられたことで、その相手を突き止めようと燃えるだろうし」


「相手の思考を読めるのは最大の強みですからな。

 局長も玲子さんの言う事であれば信頼性があると評価するでしょうし」


「分かった。まだ話して無いけど必ず説得する」


「私は局長に破滅的な行動を思いとどまらせることに全力を尽くします。

 今の様子のままでは何か理由をつけて爆弾を放って日本宗教連合の全ての施設を吹き飛ばしそうですから」


「キレ過ぎだろ……」


 大王はまどかに対して何か思入れがあるようには思えないから(どちらかと言うとあるとするなら玲姉だろう)、自分の身を案じてのことだろう。


「と言う事で、玲子さんの説得をよろしくお願いします。

 局長の危機は世界の危機でもありますからな」


「分かった」


 そこで連絡を終えた。やはり、大王も自分の身がかかっているから用心するのだろう。

 そう言えば大王は用心のためにロボットにヘンな機能をつけるようなタイプだったな……。


「そうね。今回は私も行くわ。

 まどかちゃんをこんな目に遭わせた奴を八つ裂きにしてやる……。

誰であろうと許せない……。

 やったことを後悔させるぐらいの苦痛を与えないと気が済まないわ……」


 玲姉の方に向き直ると、僕の思考を反映した発言をした。こういう時は話をしなくていいから助かるものである。


「八つ裂きにする相手が見つからないからって僕を代わりに八つ裂きにしないでよね?」


「そうね……」


 手鏡を取り出すとバラバラに片手で粉々に砕いた。


 血が出ていないところが凄い点だ……。


 そして欠片になった鏡の破片を綺麗に電動掃除機でスーッと自分で掃除していった……。……。


 鏡が気の毒になるほどの完全なる八つ当たりだが、気持ちは分かる。

 あれが僕で無かったことを本当に喜ばなくてはいけない……。


 僕はまどかが苦しむ様を間近で見て、そして何も出来ない無力感に捕らわれていたのだから何とかしたいという気持ちは強かった。


「玲姉は一体誰がこんなことをしたと思う?」


「私も輝君と同じくK神社のせいでは無いと思うわ。恐らくは相手の分断工作ね。

 お互いに同盟を結ぶ前に決裂させることで問題解決をさせないようにしているのよ」


「なるほど。相手は大王を狙っている上に、その解決方法が科学技術に無い以上は、

 この作戦はベストに見えるな……。

 具体的にはどこが分断工作をしてるんだ? 怪しいのは本祭神社な気もするけど……」


「そうね。候補の一つではあるかもしれないけど獄門会あたりも連携している可能性はあるわね。ああいう呪いみたいなのを専門的にやっている集団だからね」


「そう言えばそうだったね……。景親に昔やっていたような精神攻撃を得意としているとか……。(第2章31話)」


「私はどちらかと言うと物理的な強さだから、出してもあんまり惜しくは無かったんじゃないかしら? むしろ、制御しきれないお荷物や害悪とすら思っていたかもしれないわね」


「な、なるほど……」


 玲姉は忌々しいことを思い出したかのように言い放った。自分とまどかを見棄てた生家はとにかく恨み続けそうな感じだ……。


「まどかちゃんは心の安定性が私たちの中では低いから相手からするとつけ入れやすいのかもしれないわね。

 それと同じぐらいかそれ以上に危うさを感じるのは輝君だけど」


「はい、気をつけます……」


 僕はゲームに関しては冷静に判断できるが現実世界になるとどうにも駄目だからな……。


「私も大王さんのためには動く気はなかったけど、まどかちゃんのためには動くわよ。

 何だか彼の思う壺みたいな感じで嫌ではあるけどね」


 また狐と狸の――


「化かし合いしてないから! 私は狐でも狸でも妖怪でもないから!」


 どうも玲姉はこのタイプの表現も嫌いそうである……。

 

「えー、でも玲姉が僕と同じ人間とはとても思えないんだけど……」


「それを言うなら輝君だってゲームの時だけは人間離れしてるわよ。

 あれをリアル世界でも実行して欲しいものだわ」


「えー、それはあまりにも難しい……」


「この世は全て仮想世界って言う“シミュレーション仮説”って言うのがあるそうじゃない? それだと思えばいいのよ」


「どうもそうは思えないんだよね。少なくともリアル世界とされる空間ではやはり傷はすぐに癒えないし、時間が巻き戻ったりすることも無いからね」


「現実世界との区別がついていることは良いことだけどね――あ、さっきの話に戻ればゲームの世界の恋愛と現実世界の恋愛は全く違うからね?」


「くぅ……覚えていたか……」

 

 すっかり忘れていたかと思ったが流石の記憶力だ……。


「色々と中途半端なのよね。恋愛はゲームで力が発揮できないのは現実――逆にならないものかしら」


「中々急には……」


「まだまだ子供だと思って気長に教えるしか無いわね……」


「ははは……。

 それより、玲姉は再生能力はあるし、超人的な力もある。玲姉の方がゲームの中から出てきた存在じゃないのぉ?」


「ちょっと! それってどういう意味よぉ! 私はれっきとしたこの世界に生まれた人間よっ!」


 僕達はまどかに配慮しながらこうしてじゃれ合った。


 しかし、まどかは玲姉の膝の上で安定しているようだが(膝が動いていないのが凄いけど……)、そんなに改善している様子も無い。


 2人で楽しそうにやり合っていれば戻ってきてくれるのではないかと言う淡い期待が僕と玲姉の中にあったために阿吽の呼吸で敢えて盛り上がった感じはあった。

 ただそう簡単にはいきそうには無いようだった……。

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