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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第32話 抗えない流れ

2055年(恒平9年)11月28日 日曜日


 昨日はまどかについて考えていた。


 一体全体、本当はまどかのことをどう思っているんだろう? 


 普段は“ただの妹”として扱っているわけだが、どうにもこうにも“現実はそうではない“気がしてならなかった。


 先日の無人島の一件だって(第5部37話)島村さんがあのタイミングで登場してくれなければ――欲望のままに襲いかかり“手遅れ”になっていたことは間違いない。


 それはまどかを確実に“女”として意識していたことを意味するんだ……。


 これまでずっと誤魔化し続けてきた。でも、何かしらの形で“決着”をつけなくてはいけない時が近い将来に来るのかもしれない。


 それがまどかが他の男を連れて来る時なのか、僕がまどかを襲ってしまう時なのかそれは分からないけども……。


 その時一体僕はどういった感情になって、どんな行動をしてしまうんだろう? 考えたくも無かったが、亡霊のように頭に勝手に浮かんでくる――そして振り払おうとして頭を振って忘れようとする。


 そんなことを無数に繰り返した。


 その時になってみなければ絶対に分からないだろうに……。


 そんなことを考えていたら全く眠れなかった――ゲームはそれでも続けて勝ち続けていたんだけど(笑)。


 鳥の声が聞こえてきた。朝が近いのだろう。

そんな中で半分寝るようにしながらゲームをしていると、6時を回ったところで大王から連絡が入った。


 大王の話だなんてロクな内容で無いことは明白だが、それでも出ないわけにはいかなかった。


「大王。どうしたの?」


「もう次の神社の行き先について話はつけておきました。是非とも本日行っていただきたいのです」


 ある程度予想通りとは言え、空間がグニャ~と歪むほど眩暈がした。単に寝不足なのもあるのかもしれないけど……。


「今日は日曜だぞ……。僕に休日は無いのかよ……」


 手元にある水を飲んで空間の歪みが徐々に収まってくるのが分かった。


「先日の祝日には玲子さんと買い物に出かけたとお聞きしました。それで十分ではありませんか?」


「いや、あれはあれで疲れるんだよ。僕の休日と言うのはゲームが出来る日々のことでなぁ……」


 世間ではあの日を“美人とのデート”だと捉えそうなものだが、僕にとってはゲームが出来ずにファッションショーを見せられるという拷問に近い状況だからな……。


 かと言って“僕なりの家族サービス“しておかないと玲姉が怒り狂いそうだし……。


 まぁ、そのサービスをしていても玲姉の逆鱗に触れることが多いんだけど……。


「いずれにせよ、今からお断りの連絡をすることは私の信用問題に関わることになります。

 私の信用が落ちるという事は――お判りですな?」


「……分かったよ。引き受けた」


 僕に大王から逃れる術はない。逃げてもロボット部隊が捕まえに来るだけだし、その後実験材料にされるだけだ……。


 かと言って大王を納得させられるだけの反論する力も無く、あまりにも無力だ……。


「大学についてはご心配なく。玲子さんがレポートを仕上げずとも私の方から“圧力”をかけさせていただきますので」


「そう……」


 喜ぶべきポイントなのだろうか? 玲姉は権力を使って単位を取るようなことをしたら激怒しそうだしなぁ……。


 思考も読まれるだろうし、本当に周りによって僕の行動は束縛されている……。


「本日の行き先につきましてはデータを送っておきますのでご覧ください」


 今日は都内にあるK神社だった。これまでの2つの神社と違い、室町時代から存在し、歴史と風格があることで知られていた。


 国家的な行事や名家の菩提寺としても活用されており、ニュースなどでも何回も名前を聞いたことがあるほどだ。


 そんなところに言って大丈夫なのだろうか……と思いながらリビングに向かうと皆はもうスタンバイしていた。


 気が付けば朝食を食べる7時になっていたのだ。


「あら、今日も神社にお出かけなのね」


「別に遊びに行くわけじゃないからな。毎日ビクビクしながら死線を乗り越える感じだよ」

 

「あっ! 今日はあたしが付いていきたい!」


 まどかが元気よく手を挙げた。


「えっ……こんな奴役に立つのか?」


「そんなこと言わないの。まどかちゃんだって輝君よりは1万倍ぐらいは強いわよ。

 前までのイメージが強すぎるのかもしれないけど……」


「でも、お前。紋付き袴持ってるの? やっぱりちゃんとした服装で向かわないとさ」


 昨日の夜からまどかについて悩みまくっていたことを考えると、ここで一緒に行動したくはなかった……。


 何か事件が起きて“過ち”を犯してしまう可能性もあるから……。


「あら、それなら私がまどかちゃんのサイズに合うようなのを仕立ててあるわ」


「え……いつの間に……」


「輝君のを仕立てた時にここにいる皆の分も作っておいたのよ。

 これで誰でも輝君と一緒に行けるわけ」


 玲姉の用意が良すぎることで反論できるポイントが無くなった。


 無理やり拒絶すればまどかがショックで塞ぎ込んだり、関係が完全に破綻する可能性もある……。


 元気印のまどかが沈んでいるのは見るに堪えないし、そんな風に追い込んだら玲姉に半殺しにされるだろう……。


「私も付いていきたいですっ!」


 建山さんが隣にサッと現れて僕の手取ってきた。


 この人は何か危険なにおいがするのだが、僕の今日のメンタルを考えるとまどかと2人きりよりかはマシなのかもしれない……。


「……前も言ったけど建山さんは特攻局に所属しているんだから、ここぞという時以外はついて言っちゃいけないわよ」


「それなら日本宗教連合を逮捕するような材料を無理やり作りますっ!」


「それはあまりにも暴論過ぎるでしょ……。無理やりにでもやろうとするなら私を倒してからにしなさい」


「そ、そんな……それは無理です……」


 建山さんはガックリと肩を落とした。


 特攻局の幹部なのに完全に馴染んでいるからつい忘れちゃうんだよな……。


 自由っぽい雰囲気も相まって警戒心を下げさせる天才だ……。


「まぁ、でも景親も付いてくるわけだし大丈夫か……」


「俺は遠慮しておきますんで2人で頑張ってきてくだせぇ。俺も素振りに精を出さないと」


 景親が妙に空気を読むような発言をしたのでギョッとした。


「おい。景親、お前はいつでもどこでも木刀をフルスイングしようとしてるだろうが! お前でも僕の“当たり判定”が下げられているかもしれないんだからさ……」


「え……ですがねぇ……」


 景親が頭を搔いて何か言いにくそうだ。その視線の先を見るとまどかが景親を睨んでいた……。


 まどかと景親が話している印象が無いので、あまり相性が良くないのかもしれないな……。だからついてきて欲しく無いのだろう。


「何事も経験よ。違うコンビで行くことも大事じゃないかしら?

 私もその神社の近くで商談があるから、ちょっと耐えてくれるだけで飛んでいけると思うしね」


 玲姉にそう言われると誰も反論することは出来ない。

 “お助けボタン”は最近使って無いけど、御守りぐらいの役には立っているんだよな……。


 朝食を食べ終わって解散する際にここまで一言も発していない島村さんは口を曲げるようにしており、極めて不満そうな雰囲気を出しながら部屋に戻っていったのが印象的だった……。


 しかし、玲姉によって僕とまどかが強制的に行く流れが出来てしまった。

 

 一体何の意図があるのだろうか……。


 超人的な頭脳を持つ玲姉の思考パターンは全く不明だ……。


「それじゃ、着替えてきま~す!」


 島村さんとは対照的にまどかは鼻歌を歌いながらご機嫌に玲姉に連れられて部屋に戻っていった。


 多少大人っぽくなったとはいえ、相手はあのチビで頬っぺたがモチモチで伸びるまどかなんだ。


 今まで通りの“茶番”をやっていけばいいんだ……。


 そう言い聞かせながら準備をすることにした……。

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