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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第30話 妖怪だらけだった……

 玲姉に妖怪の仕業では無いか? と言う問いへの答えは科学で解明できていないところに“妖怪の余地がある“ということだった。


 言いたいことは分からなくはないが大王の理論の延長線上にあるようなもので、まだいろいろと考察の余地がある気がした。


 今日は体幹強化の体操をしながら爺に話を聞いてみることにした。


「妖怪……ですか?」


「そう、爺はどう思う?」


 人生経験が桁違いの爺の意見は凄く気になった。ここにいる爺以外は全員が30歳未満だから浅はかなのかもしれない。


「いると言えばいる。いないと思えばいない。と言うところですかな」


「え? 流石に意味不明なんだけど……」


「結局のところ“定義”によると思いますぞ。

 例えば玲子さんなんて自覚されていないだけで実は無意識のうちに“妖術の使い手”なのかもしれませんしな。

 誰も見たことが無い曖昧な定義の下で“妖怪”としている以上はこれも仕方の無いことだと思います」


 いつも“妖怪の実例”として真っ先に挙げられる玲姉は一体何なんだ……。


 “人外“だと何度も思ったことはあるけどね(笑)。


「また、人はある意味“誰もが妖怪”とも言えるかもしれません。

 テクノロジーを活用すれば他のあらゆる動物よりも早く走れ、高く飛べ、 ることが出来ますからな。

 また一方で、人間が最も他の生物を虐げ、大量生産・大量消費によって生態系を変えたりしてしまっていますからな」


「なるほど……他の生物から見たら人間の技術や自然破壊は“妖術”と言えるかもしれないな」


 深い人生経験を経て今に至っている爺は、大王や玲姉とはまた違った視点を提供してくれた……。


 特にリアルの戦場に赴き、人が人の命を奪い、自然を破壊してきたのだから説得力が違った……。


「ひぃ……疲れた……爺の話を真剣に聞きながら動いていたから気が付けば身体がボロボロに……」


 爺も雑談しながら時折、僕の体を静かに矯正していたが、ある意味回数を増やさせるための作戦だったのかもしれない……。


「お疲れ様です。お水どうぞ」


 僕が大の字で倒れると建山さんが水を飲ませてくれた。冷たくて美味しかった。


 そう言えば、建山さんは僕と爺が話しながら体操をしている間に、独特な動きをしてしていた……。


 この不思議で“異質”とも言える建山さんはどのように妖怪を考えているのだろうか……。


「玲姉は妖怪は認知されていないだけでいるかもしれない。

 爺は人間が自然界から見れば妖怪のようなモノだと言っている。建山さんは妖怪についてどう思う?」


「それなら私が妖怪ですよ」


 そうあっけらかんと笑顔で答えた……。


「は? どう見ても人間だけど……」


「結構色々な方から、“変わった奴“だって言われるんですよ。

 そう言うところは妖怪みたいなのかなって思いまして」


 型破りなところは確かにそうなのかもしれないけど自分から名乗るだなんてな……。


「まぁ、学校で無理やり“平均化された人間”が量産されている状況だから、

 建山さんみたいな知性のある変わった人の方が出世するのかもしれない……」


「学校は特攻局が統治しやすいように依然としてそう言った教育をしている感じですね。

 私の家庭はちょっと色々ありまして、普通の環境じゃ無かったんですよ。

 私としてはごく普通のことをしているだけのつもりなんですけどね」


 ニコニコと明るい声で語るが一体どんな闇があったんだろう……。


「虻利家が裏で力を握ってから成果主義になってちょっとは構造が変わりつつあると思うけどね」


「でも、相変わらず年齢が上の方が重んじられる傾向がありますよ。

 私は何段も抜かして新記録を作り続けて出世しましたけど、やっぱり年配の方からの視線はどこか冷ややかですね」


「あ、成果主義の権化だと思ってた特攻局ですらそんな雰囲気なんだ……。

 居づらくないの?」


「あぁ、私は他人がどう思おうとも気にならないんで影響無いですね。

 一応は規則の範囲内でやりますからね。拡大解釈はしますけど」


 建山さんは自分や周りに対する分析が的確ながらも、

 マイペースに自分の状態や立場を一ミリも動かす気が無いところはある種尊敬するよ……。


 僕も比較的自由に生きている感じはするけど、それでも周りの評価を気にしたり、

 玲姉やまどかの顔色をどこか窺っている感じがあるからな……。


「建山さんはいつも自分を確固とした形で持っているけど、どうしたらそんなにいつも自分らしくいられるんだ?」


「そうですねぇ。私は基本一人でいたので誰にも依存して無いからだと思います。

 法を犯さない程度に好きなようにやって、それで他人にどう思われようとも構わないんです」


「そうなの……」


 釈迦は『人間は他者との関係性が無ければ自分を規定することが出来ない』と言ったそうだが、この建山さんは完全に例外のようだ……。


「しかし、虻輝様はいつも何か難しいことを考えておられるようですな」


「色々と最近は厄介な問題が多いからね……。今まで体験したことが無い無理難題ばかりで頭がパンクしそうだよ……。

 もうゲームについてだけ考えていたいよ……」


「若いうちは色々と迷ったり考えたりすることは必要だと思いますぞ。

 年齢や経験を重ねると過去に縛られて自然と保守的になり、迷わなくなる分つまらない人間になってしまいます」


「爺はそんなに凝り固まった人間には全く見えないけどな……。訓練方法も独特だしさ……」


「私は諸先輩方や同僚の失敗を見てきた中で、分かってきたことがあります。

 過去に固執して失敗する者と今と未来ばかりを見て失敗する者と大きく2パターンあることです」


「なるほど……」


「大事なことはそのどちらかに大きく比重を置くのではなく、過去の経験を大事にしつつも現在や未来に向けて前進しようとすることだと思います。

 ただそのバランスが難しく試行錯誤しているまでです」


「なるほど、爺もある種の“妖怪“みたいなものだよね……」


「ですから先ほど申し上げた通り“定義次第”だという事です。

 虻輝様とてゲームの業界ではとんでもない実績を出しておられますから“妖怪”と言っても差し支えないと思います」


「確かに誰が定義を決めているわけでもないよな……」


「ただ、若いうちだからこそ体を動かさなければ年を取ってから出来ることが減っていってしまいます。

 私も若い頃の積み重ねがあって今、こうして元気に動けているわけです。

 さぁ、今日もVR空間での特殊な訓練を始めますぞ!」


「ぐへぇ~!」


 リアルのストレッチと無駄に難しいことを考えまくったせいでVR空間で耐えられるか心配だな……。

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