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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第25話 地獄の沙汰も金次第

 ――ここは神社だろうか? 何か神殿のような場所にいつの間にかいて、そこで頭を下げていた。


 何かお願いをついでにしておいた方が良いのだろうか? そうだなぁ……やっぱり、あまりにも不甲斐ないから周りの皆についていけるだけの“力”が欲しいな。


 “ゲームの中だけでの英雄”とかあまりにも虚しすぎるから……。

 

 ――それはお前に過ぎた力だ。


「え!?」


 真上から声が聞こえる! バッと天井を見るが何も無い……。


――過ぎた願いをする者は悲惨な末路を辿るだろう!



 2055年(恒平9年)11月27日 土曜日



「はあっ! はあっ!」


 恐ろしい夢だった……。


 まさか、願い事をしただけで“神の声”に警告を受けてしまうとは……。


 一般的に言う“神様”と言う存在について信じていないのでああいうお願いことをするところに行ったことが無かった。

 しかし今度からは、その機会があってもあんまり利己的なお願いはするべきでは無いのかもしれない……。


 それだけ虻利家と言うのは存在しているだけで罪深い存在なのだろう……。


「うぅぅ……痛い……」


 起き上がって着替え場に移動しようとしたときに腰に痛みが走った……。


 島村さんから撃ち抜かれたお尻の辺りは未だに痛むんだからどれだけの威力だったんだ……。


 恐らくは玲姉とデートをしたと思い込んでしまったのだろう。現実は誕生日プレゼントを迷って何も買えず、玲姉のファッションショーに付き合っただけだったのだが……。


 ふぅ、しかし幸いにも今日は土曜日で授業も少ない。


 久しぶりにゆっくりと過ごせそうだから養生しよう――と思った次の瞬間に大王から連絡が入った。


「虻輝様お喜びください。次の交渉先が栄宮神社に決まりました」


「それは全く喜べる情報では無いのだが……」


 大王は僕の心理状態を弄ぶかのような連絡のタイミングをしてくる……。


 最近は大王の映像を見るだけでも逃げ出したくなる……。


「しかし、虻輝様の本日の予定は授業が1つ入っているだけではありませんか?」


「あぁ、そうだけど……」


「では、問題ありませんな」


 大王は唐突に話をまとめて僕に予定を伝えて来るので本当に困ったものである……。


 しかも僕の予定をコスモニューロンによって完全に把握しているので“予定が入っているから”という言い訳すら通用しないのである……。


「……それで、いきなり交渉と言う事なんだけど一体今日行くところはどういう特徴を持つ神社なの?」


 もう半ば諦めの気持ちで聞いた。


「今日虻輝様が伺う事になる栄宮神社と言うのを簡潔に申し上げるとするのであれば、本祭神社のライバル関係にあるところです。

 大体同じ時期に創設されたわけなのですが、本祭神社は誰でもお布施をすれば救われると伝えているものに対して、栄宮神社はしっかりと修業をしなくてはいけないという考えを持っているようです」


「本祭神社はお金がかかっているなぁ、と思っていたけど“地獄の沙汰も金次第”と言う感じなのね……。

 栄宮神社の方が真っ当なことを言っているみたいだけど……」


「しかし、現実問題として訪れる参拝者数や登録信者数はどちらも本祭神社が10倍以上あります。

 恐らくはお金を払えば救われる方が分かりやすく、また経営状態が良くなる方向に繋がるのでしょう」

 

「結構短絡的な人が多いのね……」


 お金で本当に救われてしまうのであればご隠居のような人が一番救われてしまうわけだ。


 そう言う世界であって欲しくないわけだが、“あの世“がどういうシステムで存在しているのか分からないからな……。


 今だって金や権力がモノを言うようなトンデモナイ世界なわけだし、可能性としてはあり得るよな……。


「ただでさえ日常生活に追われている中で、過酷な修行をしてまで救われたいという者は少ないのでしょう。

 そもそも極楽浄土や天国と言われている場所があるかどうかも分かりませんからな。

 神社では守り神になるという発想のようですがな」


 どちらかと言うと、今朝の夢に観たような、“過ぎた願い”をするだけで警告を受けるような神であって欲しい……。


 死んだ後まで理不尽な世界だったら誰もやっていけないだろ……。


「未だに死んだ後どうなるか現在の科学においても解明されていないみたいだからね」


「私もその点は非常に気になりますので是非とも解明したいところですな。

 様々な手を使って解析をしても何も分からないところを見ると、もしかすると死んだ後は“無”である可能性も大いにあり得ます」


「それなら生きている間に悪いことをしてもバレなければ“逃げ切り”が可能ってことか?」


「解明できていないために全ての可能性について検討も必要ですが、

現時点においてはその可能性も高そうですな」


 大王も人体実験で何十万人と葬り、身体がまともに動かなくなった人はその何十倍といることから結構“ヤバい位置“にいると思うのだが、全く悪びれるそぶりすら見せない。


 大王はむしろ「人類の進化・発展のために尽力している」と確信しているから、罪の意識など全く無いのだろう。


 それを認識すると改めてゾッとした……。


「いずれにせよ、栄宮神社が本祭神社と対立していることやライバル視していることは間違いなさそうです。

 ライバル心を焚きつけるような交渉をされると良いと思います」


「断られたことが逆に功をなすかもしれないわけか……」


「日本宗教連合の中にも栄宮神社の方を支持している団体は多いようです。

 虻輝様の手腕に期待したいですな。

 勿論交渉中は前回同様私が全力でサポートいたしますので、ご安心ください」


「あぁ、分かった……」


 何気なく打ち合わせを行ったが、改めて大王の恐ろしさを密かに痛感したのだった……。


 朝食を食べ終えると木刀を廊下の真ん中で振り回すといういつもの狂気ぶりを見せつけている景親に声をかけた。


 最後の一振りは僕の鼻の頭を掠めて本当に危なかった……。


「景親、今日も大学終了後に神社に交渉に向かう事になった。

 そんなわけで護衛を頼む……」

 

「分かりやした! しかし虻輝様は凄いっすね! あの大王からそんなに期待されているだなんて!」


「ただ単に僕が使い勝手のいい都合の良い存在と言うだけの気もするけどね……。

 

「そんなことないっすよ! この間だってビシバシっと言って痛快でしたよ! また相手が調子に乗ったらあれぐらい切れ味よくお願いしますぜ!」


「あれも敵地にいる中で半ば賭けだったんだから、あまり言いたくない口上ではあったがね……」


「そうだったんすか!」


「それと、廊下の真ん中で木刀振り回すのやめてくれよな……。

 公園になりそうなぐらいの広大な庭があるんだから外でやってくれ。

 僕はいつもその木刀に殺されかけているんだ。

 ほら、この鼻の頭ちょっと皮膚が剥けている……」


「虻輝様もこれぐらいキチンと避けてくれないと困りますぜ! 回避訓練だと思って下さらないと!」

 

「いやいや! 改善するよう努力しろよ!」


「いつどこから何が飛んでくるか分かんねぇのでこれも必要な動きなんすよ!

 これも護衛の一環なんすよ!」


 コイツはいつも前向きで気楽に考えることができて幸せそうだな……。


 僕が護衛のお遊びによって命の危機に陥るという事態は改善してくれそうにないわけなのだが……。

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