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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第23話 カフェでの平和的な攻防

 玲姉は島村さんへのプレゼントを買った後、家にすぐ帰るわけでは無く、どうやら僕を連れまわしたいようだ……。


 僕は外が苦手だ。ゲーム界隈では圧倒的な有名人でもあるわけなので、

写真を撮られたり、囁かれているのが分かるからだ……。


 玲姉も経営者としてはそれなりに名が知れている上に、

「モデルの歩き方」をしているために知らない人からしても圧倒的に目を引く。


 外から見たら「僕がモデルの彼女を連れて歩いている」ようにしか見えないだろうから、週刊誌などもうるさくなるのだ。


「輝君は本当に不思議よね。他人からの評価を気にしていないのかと思えば、週刊誌の報道を気にするんだから」


 会員制の喫茶店に入ると玲姉がそう切り出してきた。


「いや、だってよく考えてみろよ。僕たちは実際には弟と姉なのに、付き合っていると勘違いされているだなんて異常じゃないか? 全く事実とは異なっているんだぞ?」


 玲姉の頬っぺたがプクッと膨らむと共に無言の圧を感じる……。


 しかしその間に玲姉は何か逡巡していたらしく、頬っぺたの膨らみは解かれた。


「まぁ、輝君はそう言う子だから仕方ないわよね……」


 このまま玲姉のペースで行かれるとあんまりなので最近疑問に思う事をぶつけてみることにした。


「何となくなんだけど、玲姉は今回の“大王痣事件”に関して何か消極的なイメージがあるんだけど一体どういう意図があるの?」


 何か“僕を成長させたい“と言う意図以外のモノを感じざるを得ない。


「あら、輝君に分かっちゃうほどだから露骨過ぎたかしら……。

 輝君は大王さんと私があまり良い仲ではないけど決裂しているわけでも無いというのは知っているわよね?」


「そうだね。実験に貢献はしたけどもう二度と参加したくないという何か微妙な距離感を感じるね」


「そもそも、大王さんの人類をデジタル的に進化させようという考え方に賛同していないのよ。健康上の問題についても長期の視点では欠けているし、自分の意思で行っているのかどうかも時期に危うくなってくるわ。

 人間全般を支配したいという発想が奥にはあるのだと思うのだけどね」


 玲姉の発想は前々から聞いて完全には賛同できないものの理解はできる。


「まぁ、玲姉はそんなことをせずとも勝手に能力を拡張している存在とも言えるわけだがね……」


 僕の場合は元のスペックが低い分、コスモニューロンで「拡張」しなくてはやっていけないのだ。


「私は私で色々と大変なんだから。いずれにせよ、機械を体の中に埋め込んでそれで本当に生物として成長しているの? って思うのよね」


「確かに“際どいライン”だとは思うよね。

 それで、どのみち僕の思考が分かるだろうから堂々と失礼なことを聞くけどさ、

 今回の一件は玲姉は関与してるの?」


 しかし、言ってみたものの玲姉はどうにもそのようなことをやりそうなイメージは無い。“呪い”みたいな間接的なやり方どっちかって言うと真逆で正々堂々と相手と対峙して倒していそうな感じがある。


「全く関係ないわ。これは断じて言っていい。

 ただ、一つだけ言うのなら“この手のやり方は見たことがある“ということね。

 でも私はその解決に関して貢献はしたくないのよ」


「つまり、玲姉は大王を“間接的に呪い殺そうと”しているってこと?」


 そうなると玲姉は“身内”の犯行を分かっていて見過ごしている可能性があるのではないかと思った。

 “スピリチュアル“を極めようとしている獄門会ならば可能性はある。


「誰が何をしたかまでは分からないけど、大体の見当はつくわね。

 でも、あくまでも私は“中立”であって大王さんには今後も活躍して欲しいと思っているわ」


「ゴメン……そんなつもりじゃ無かったんだけど……」


「良いのよ。それにしても輝君は面白い考え方をするのね。誰でも疑うという発想、嫌いじゃないわ」


「あ、ゴメン……相手を疑う事はゲームの駆け引きでも多くてね……。

 玲姉はこの地上で一番信頼しているのは間違いないよ」


「でも、あまりにも信頼を置きすぎると、裏切られた時のショックがあまりにも大きいからね。人間何事もほどほどにしておいた方が良いようにも思うわね」


「それじゃ、僕の知り合いの中じゃ相対的に一番信頼しているってことで良いよ。

 頼りになることは間違いないわけだし」


「輝君は本当に面白いことを言うわね……。

 ま、相対的な信頼でもしてくれるだけ嬉しいわね」


 濃密な話をして疲れたのでケーキが進む……2つ目を注文した。

 

「あんまり糖質取り過ぎないことね。特にケーキは白砂糖と言うというだけで体に良くないんだから」


 すかさずそんなことを言ってきた。

 玲姉は紅茶しか注文しておらず、砂糖もシロップも入れていない。

 ここはイチゴのショートケーキが美味しいんだから信じられない……。


 実際に玲姉が家で作ってくれるお菓子は白砂糖ではなく黒砂糖だったり天然のモノであることが多い。


「白砂糖が体に悪いだなんて、以前から言われているし色々な研究結果で明らかになっているから分かっちゃいるんだけどさ。

 白砂糖入りの食べ物や飲み物を飲むと頭の爽快感が違うんだよね。パーッ! と言う感じで幸せが溢れかえるようなそんな感じすらするんだよ」


 実際今も頭の中がハッピーな気持ちでいっぱいになっている……。


「完全に白砂糖の奴隷で中毒者ね……。もう私と最初に会った時はお菓子大好きだったから手遅れだったのかな……」

 

 玲姉はそう呟いた。一度味わってしまうとこういうのは中々抜け出せそうにないのは事実だろうな。


 どうしようもない会話がその後続いた。主にお菓子を食べるな、いや! それでも食べる! を繰り返していただけだった(笑)。

 そして会計になると思ったので僕が立ち上がると――。


「あら、私が払うわよ」


「いや、良いよ。ここはよく使うからポイントも貯まってるし」


「私だって接待や社員の皆でよくこのお店を使うわ」


「お金は僕が持ってるだろうからさ――あ、勿論たまたま世界大会の賞金が高いだけで、玲姉が劣っているとかそう言う事じゃないから……」


「それは、当たり前でしょ」


 玲姉は“私が年上なんだから奢らせないっ!”と言う威圧感を感じさせた。

 

 これ以上粘っても、不機嫌になって帰ってから僕がサンドバッグになるだけだ……。


「あ、いや。是非とも奢らせていただきます。ご馳走になります」


 結局折れるしか無かった……。


「うん、最初からそれで良いのよ」


 玲姉は紙幣を財布から取り出して支払う。コスモニューロンならレジのIDにアクセスするだけだから、ことごとくアナログな人だと思うが、これが別次元の強さなんだからな……。


 でも、アナログかデジタルかの問題では無く“玲姉だから”と言う回答に尽きると思うがね……。


「ところでちゃんと覚えているわよね? 知美ちゃんの誕生日が11月29日だってこと」


 店を出たところでそう隣から声をかけられた。


「流石に分かってるよ。これで忘れたら流石にヤバいって(笑)」


「え~。輝君の記憶力は怪しいから。帰るころには忘れてそうだけどねぇ~」


「いや! それぐらいしか経ってなかったら覚えてるって!」


 しかし僕の実績からすると怪しいのは間違いない。コスモニューロンにメモしておかなくては……。


 その後は玲姉に店を連れまわされ“これ似合う?”と言う事を永遠と聞かれ続けた。


 “似合うよ”とことごとく返事したら睨まれた。いや、スタイルが良いし、事実だしどうしてそう怒るのか僕には分からない……。


 ゲームをしながら待つとまた怒るし、僕はどうしていいか分からない……。


 それでも微妙な心の機微を察知してか、僕が心なしか良さそうに陰ながら思ったアクセサリーなどを少し買っていた。


 そして、その日の終わりに思った。島村さんの誕生日プレゼントを買いに来たはずなのに、

 どうしてか知らないけど玲姉とデートをしているみたいになってしまったと……。


 ま、まぁ。実際のところは玲姉とは付き合っていないし、ただ単に買い物をしているだけだ。


 問題は、世間がそうは見てくれないという事だ。


 世の中話題に飢えているからどうしても、有名人である僕と誰かをカップリングしたがる。そして、女の子がいっぱい同じ家に住んでいるから“深刻な誤報”が増えてしまうのだ……。

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