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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第15話 夢と期待

 2055年(恒平9年)11月25日 木曜日


 ガバッ! と起きると夢だったことにホッとした。


 最近妙にリアルな夢を多く見る気がする……今朝方は何だかよく分からない不気味な存在に周りに取り囲まれている夢だった……。


 これが完全に現実化するかは分からないために予知夢ではないが、似たようなことは確実に起きている。このイメージになるべくならないように注意していかなくてはいけないのは最近の傾向にあるのだ……。


 何か薄気味悪さみたいなものがある。一体全体僕の身に何が起きているのか……玲姉に聞いてみるか……。


「ふーん予知夢みたいなものねぇ……。私も見ることがあるけどね」


 玲姉に紋付き袴を着付けをしてもらいながら相談すると実にあっさりとそう返ってきた。


「え……そうなんだ……」


「そうそう。事前に予習しているような感じで輝君と同じように危機を回避できたことがあったわ」


「玲姉とそんなところで共通しているだなんて夢にも思わなかったよ……」


「いわゆる“デジャヴ”と言われる奴の“強化版”みたいなものかもしれないけどね。

 そんなに気に病む必要は無いと思うわよ。

 別にそれで苦しんだりすることは無かったからね。

 まどかちゃんにはそう言ったことは無いみたいだけど虻利家の血筋に稀に起きることなのかもしれないわね」


「へぇ、それは興味深い話だね。ちょっと親戚の皆にも聞いてみるか……」


「何か身体に異常があると思うのなら大王に検査を依頼することね」


「それはちょっと嫌だなぁ……」

 

 大王にはあまり関与させたくはない……。あまりにも怖すぎるから……。


 取り敢えず僕の身体に何か異常が発生しているわけでは無いのは安心して良さそうだった。


「出来たわっ!」


 玲姉に言われてハッと顔を上げて大きな鏡を見ると確かにいつもと違う僕が立っていた。


 ある程度普段の下着を着けさせてもらったが、とんでもなく着心地が悪い……。

 このボワッとした感じが何とも慣れないのだ……。


「うん! とっても似合ってるわよ~!」


 玲姉は僕を着せ替え人形に出来たのでとっても嬉しそうだ……。


「なんか目立っていそうで嫌なんだけど……」


「大丈夫よ。輝君は元々有名人だから常にある程度は目立っているからね~」


「それは根本的な解決に全くなっていないような……」


 僕は世界大会に参加する日以外は静かにゲームをしていたいだけなのだが、その要望は残念ながら叶いそうには無かった……。


 勝手に周りが僕の役割を決めつけてそれを強制してくるのだ。こっちの気も知らないで……。


 ただ、よく考えてみればこれは僕の立場が極端なだけであって、普通に暮らしている人たちだって似たり寄ったりなのかもしれない。


 勝手に期待され勝手に役割を与えられ、小学生になる前から受験勉強させられたり、社会に出た後は結婚したり出世競争などに晒されていく……。


 誰もが思い通りになんて生きていないんだ。


「いや……どうしてそんなに、どこか遠くに思考を巡らせているのよ……。

 そもそも、日本宗教連合の人なんて輝君のお爺さんに比べれば大したことないのではないかしら? そんなに緊張するような相手でも無いわよ」


「そりゃ、比べる先が違い過ぎるよ……。

 ご隠居様は人をバラバラにする過程で悶絶しているのを見られるのを愉しんでいるぐらいだからな……」


 ご隠居は普段は仏頂面なのに他人が苦しんでいる姿を見ると至福の喜びの表情をされるからな……。それが尚更体中に戦慄を走らせる……。


「そうそう、そうなる可能性だけは無いんだから気楽にやれば良いのよ。

 やっぱり虻利家の“名前”はあまりにも大きいわよ。

 迂闊には強硬な手段は使わないと思うわよ」


「まぁ、そうなのかもしれないけどやっぱり怖いよ……。

 特に初めてのところは緊張する……」」


「なぁに小学生みたいなこと言ってんのよ!

 それとも、そんなに委縮しているならこの私が輝君をバラバラにする過程を愉しもうかしらぁ~!」


 玲姉が手をワナワナさせながら迫ってきた!


「ひぃぃぃ! それだけはご勘弁を~! 何とかしてみます~!」


 玲姉がそんなことをするとは思えないのだが、どうにも幼少期から玲姉に植え付けられた恐怖と言うのが体中に染みわたっている……


「そう言う心がけなら、私の手を煩わせないように色々と頑張って欲しいわね……

 輝君の肩には色々な人の命が懸かっているんだから……」


「はい……とても荷が重いけど……」


「つべこべ言わずに、さっさと行く! もうそんなに時間が無いわよ! ただでさえ慣れていない服なんだから早めに出ないと! 途中で投げ出したりしたら承知しないんだからぁ!」


「ひぃぃぃぃ!!!!! 誰か助けてくれぇぇぇぇ!」


 僕がウダウダとしていると玲姉は般若のような表情になった。角が生えていないか一瞬探したほどだ……。


「虻輝様、大丈夫ですって! この俺が護衛についていますから!」


 景親が僕と玲姉の間に入ってくれた。実力は玲姉に遠く及ばないまでもその厚みのある体はやはり頼りになった。


「そうやって甘やかすから輝君はダメになるのよ!

 いい? 輝君がひ弱になっていっているのは私たちの責任でもあるんだから!」


 玲姉の頭の中がどうなっているのか全く分からないが、時折僕に対して厳しくいこうとしたりする……。その都度僕はボロボロになっていくわけなのだが……。


「玲子さんも虻輝様1人じゃ流石に襲撃された時にどうしようもねぇですって! 日本宗教連合本拠地なんですから、何されるか分かんねぇですって!」


「確かに……ただし、窮地に陥った時以外はあんまり手出しをしないようにね。

 輝君を運んだりしないように。これも輝君の成長のためなんだから。

 小早川君に後でどうだったのか分析してもらうわ」


 おぉ……玲姉が景親なんかに説得されることがあるんだな……。

 

 玲姉は意固地になったりせずに着地点を探ることが最近は更にうまくなってきたような気がするな……。


「よっしゃあっ! 虻輝様も大船に乗った気持でいてくだせぇ!」


 景親は勢いよく自分の胸を叩いた。


「ああ、頼りにしてるよ……」


 物理的な障壁に関しては景親は頼りになるが、相談にはまともには乗ってくれそうにない。

 為継や大王は相談に乗ってはくれるが、気持ちは楽にならない。


 まどかや島村さんといると“欲情しないように”と緊張はするのだが、下らないやり取りをしているだけで気持ち的には楽になるのだから不思議なものだ。


 この間の島に流れ着いたときだって、一人で流れ着いていたら孤独で確実に駄目になっていたことだろう。


 男同士だと気軽に話すことができるというプラス要素はあるが、どこかしらか殺伐とした雰囲気があるんだよな……。


 そう考えると女の子の存在は本当に偉大だし、華があるかないかは大きな違いだなと心の底から思うのだった。

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