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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第2章 悪夢の共闘

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第13話 世界大会への約束

 祥太のところに戻ってみるとNPC相手に練習していた。

このままさっきの清美さんの話を先送りにしていたら永遠に話すことはないだろうし、何か重荷を背負って残り時間を過ごすことになる。

夏休みの宿題を全部残して終盤を迎えたようなあの気持ち悪さは嫌だ。思い切って今行くか!


「祥太、なかなかうまくなってきたな。さっきより切り返しが上手くなってきている。ところで将来はプロゲーマーでも目指すのか?」


「んー、分かんない。でも、特になりたい職業も無いし、やってみたい気持ちはある」


 まぁ、この年だとそんなもんだろう。僕もまぁ祥太ぐらいの年の頃は人よりはゲームができたが、別にプロとかになろうとは思わなかった。誰よりも強くなりたいとは思っていたけどさ。


「そうか、ところで話は変わるが学校に行きたくないらしいじゃないか」


「え……。虻輝さんまでそんなこと言うのかよ……。ね、姉さんの差し金だな!」


 祥太は後ずさり、一気に僕から距離を取った。その眼には怯えのようなものを感じられた。こ、これは嫌われないうちに何とかしなければいけない。


「まぁ待て。学校に行きたくない気持ちはとてつもなくわかる。僕も学校に行くのはめちゃくちゃダルかった。先生はたいして説明もうまくないから授業中はいつもゲームのプレイングのことばかり考えていた。だから成績は良くないしね(笑)。

 全く面白くない行事には無駄に参加させられるし、何で行くんだろうって毎日思ってたな」


「じゃ、じゃぁ何でそんなこと言い始めるんだよ……」


 さっきから必死になって考えていたことを祥太に頑張ってできる限り分かりやすく説明しようと思った。


「なら、言おう。僕が世界王者であるためにはゲーム以外の強さだと何が必要だと思う?」


「え……ゲームが強い以外で? うーん……ま、全く分かんないや……」


「例えば、優勝してインタビューを受けるとする。すると、そこで話すためには国語力が必要だ。人気な選手ほど受け答えが上手だからな」


「……」


 祥太は黙って聞いている。納得しているのかどうかわからないが、さっきみたいにあっという間に僕から離れて行ってはいない。

今のうちに僕のできることは言いたいことをどんどん話していくしかない。


「次に物理学、結構ゲームでも物理学をそこまで無視することはできない。

 現実的ではないとクレームが来るからな。ゲーム制作側も物理学に極端に反することはやってこないからな。

 あと、さっき言った細かい仕様など何%スピードが上がるとか下がるとかもそういった数字の感覚がないとよくわからなくなってくる。」


「そうなんだ……」


「あと学校行事とかも、僕はとにかくやる気が無くて目立たたずに黙って参加していることばかりだった。

 でも、強ければ強いほど強制参加の行事とか表彰式とかが増えるんだ。

 その形式上の行事が存在していること自体に不満はあれど、折角自分のためにある行事なんだから黙って参加する。そういう耐えることも意味生きる力だ」

 

 マジで学校行事は早く過ぎ去ってくれないかなぁ~とばかり思ってこなしていた。当初はボイコットしていた。

でも、先生と無駄に対立しまくって、疲れて黙っていたら逆に何も言われなくなった(笑)。


「確かにそうかもしれない……」


「あと友達な。別に、何か具体的に役に立っているわけじゃないけど、チーム戦になったときとか交流できないと問題になるんだよ。

まぁ、僕は今だって特別、人と接するのが得意というわけでは無いけどな」


「ハハハ! なんだかわかる気がする!」


「おい! そこは否定する場面だぞっ! まぁ、とにかく直接的に役に立っていることって言うのは少ないんだけどさ、なんかちょっとしたことで学校に行っているのといないのとで地味に差がついてくるんだよ。僕もこれは後年になって気づいたことだけどな」


「へぇ~」


「あとは、下手に不満とかを先生に漏らさないほうがいいかな。漏らすと先生から“要注意人物”のレッテルを貼られてマークされちゃうからな(笑)。

僕は最初にマークされていたけど、静かにしていたら何も言われなくなった(笑)」


「確かに黙っていたほうがいいかも! 俺もずっと不満ばっかり漏らしてた! マジで先生小言ばっかりでウザイからな」


「それな(笑) 学校に不満があるのは分かるし、時間の無駄な感じはある。教育はもっと生徒に寄り添うように改善して欲しいってずっと僕も思ってた……でも今は我慢する時だ。年齢が上がれば上がるほど自由になっていくからな」


 まぁ、自由になる分責任も増えるがな。僕はそれでも自由にやらせてもらっている分かなり有難い身分ではあるのだが。


「分かったよ! とりあえず、虻輝さんと同じく大学生になるまで我慢する!」


「そうそう、適当に学校行って凌いで本業のプロゲーマー目指せばいいんだよ。プロゲーマーなんて成功しちゃえば学歴なんてさして関係ないからな」


 しかし、これはある程度建前と言える。今何が流行っているかの環境調査や相手の動きを先読みする能力、また状況を瞬時に記憶しておいてそれを試合に活用する能力などが必要だからか意外と高学歴若しくはIQが高い連中が上位を占めているということは言わないでおこう。


僕ですらも色々コネを使っているとはいえ表向き上の学歴は私立トップの帝君大学だしな……だが、そういった夢を壊すのはやめておこう。


「俺、虻輝さんと世界大会で戦うのを目標にするよ!」


「よし、約束だ。世界大会で必ず対戦しよう。そのためには、とりあえず学校に行くんだ」


「約束だぞ! そっちが先に引退とかでい無くなんなよな!」


「もちろん!」


 僕は祥太と指切りをした。何とか伝わったようで心の底からホッとした。最初切り出した時はかなり緊張したがな……。


 その後しばらく祥太と遊んでいると、高橋清美さんが戻ってきたようだった。


「ただいまー」


「あ、清美さんお帰りなさい」

 島村さんがすぐに迎えに行った。


「あの、2人とも良い子にしてました?」


「ええ、とても可愛くて時間を忘れるほどでした」

 2人のやり取りを横目に。祥太が訴えかけるような眼で僕を見つめてきた。


「帰っちゃうの?」


「まぁ、また会えるさ。それまで、さっきの約束を忘れるなよ」


「うん! 清美姉ちゃん! 俺、明日から学校に行くよ!」

 清美さんは目を丸くした。その後僕に笑顔を向けてきた。


「あら……ちゃんと説得してくださったのですね。本当に、ありがとうございます!」


「いやぁ、大それたことはしていませんよ」


「あの、3000円だけでは申し訳ないと思いまして、お土産をお持ちください。東京駅での名菓子店です」


「おぉ、これは僕も目が無いものです。では僕からはサインを祥太君にあげましょう。何か書いて欲しいものとペンはありますか?」


 と言った途端に祥太がサインペンと色紙を持ってきた。


「早いなっ(笑)。祥太君へ世界eスポーツタイトル5冠王虻利虻輝。恒平9年10月27日っと」


 先日、サインを書きまくったお陰かそれなりの物ができた。


「ありがとう! 一生大事にするよ!」


「本日は本当にお世話になりました!」

いやぁ、こうして本当に心の底からお礼を言われるというのは本当に気分がいいものだ。


「それじゃ、またな!」

 そう言って高橋邸を出た。お土産は何種類もあるらしく重みはあったが、これが1日の働きの成果だと思うと誇らしい。


「大変疲れた1日でしたね」

島村さんがそんなことを言ってきた。


「まぁ、最初はどうなるかと思ったけど祥太がゲーム好きで助かったよ。それ以外のコミュニケーション方法を知らんのでな……」


「ゲームをしている時とそうでない時とで表情に差があり過ぎですよ。やる気がないときは死んだような眼をしていますからね」


「え……そんなに酷い目をしてる? 確かに、ゲーム以外で話せることってほとんどないけどさぁ……」


 ハッキリ言って島村さんとどう交流していいか全くわからんからな……。今共通の話題があるうちになんとか会話を繋げておくか……。


「島村さんは今日のベビーシッターはどうだった?」


「ええ、とてもいい経験になりました。これまでは復讐のために先のことはあまり考えてこなかったので、将来のことについても考えることが出来るきっかけになりましたね」


「あ、そうだよね……そのために生きていたんだからね。とりあえず、早くご家族の無事が確認できて再会できると良いね」


 僕が言えることはそれだけだよね。本当に島村さんの家族には惨いことを虻利家はしてしまったのだから……。


「これまで全く情報が無いんですから、気長に情報を集めます。今は私の理想としている玲子さんから少しでも色々と吸収するために我慢の日々です」


 その“我慢”の一因となっているのが僕との活動なんだろうと思うと何とも言えない気分になってくる。

そんなことを言いながら歩いていると、たちまち美甘の待っているところに戻ってきた。


「あ、お疲れ様です。いかがでしたか?」


「いやぁ、ホントどうなるかと思ったけど何とか任務完了できたよ」


「この人の精神年齢が低いからか思ったよりも子供と対話できていましたよ。」

 島村さんの毒舌が酷過ぎるだろ……。


「島村さんだって、最初は色々と苦戦してたじゃないか!」


「最初だけですぐに順応できました。だから問題ないです」


「ああ、そうですかい」


 オムツやミルクなんかに苦戦していただろと言いたくなった。しかし、更なる反撃が怖すぎたのでこれ以上の追及はやめておこう……。


「2人とも仲良くなれたようで良かったです」


「いや美甘……どこが仲が良いんだよこれで……」


 確かに最初よりは距離が詰まったかもしれんが、それにしても苗字ですら呼ばれたことがない僕の存在感の無さよ……。


「そうです。私も選べるならこんな人と一緒に居たくないです」


 相変わらず手厳しいね……だが、任務を成し遂げたという達成感からそこまで痛く響くことは無かった。

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