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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第11話 デートっぽくないデートの誘い

 2055年(恒平9年)11月24日 水曜日


 最近玲子さんから教えていただいた油を活用したヘアケア方法は良い感じがします。

 そんなにギトギトした感じにもなっていませんし、艶とハリが増した感じがします。


 でもそれとはまったく真逆で何だか島に行く以前より虻輝さんに避けられているような気がします……。


 私が積極的過ぎるのがいけないのでしょうか……。


 ちょっとショックです……。


 でも、ここでへこたれてはいけません! 私は虻輝さんを好きになると決めたんですから!

 例えライバルが玲子さんやまどかちゃんだとしても譲るわけにはいかないんです!


 ここは状況を冷静に分析していかないと……。


 虻輝さんはとんでもなくモテそうで彼女さんを何人も持っていてもおかしくは無さそうなんですけど、どうにも誰ともお付き合いしている雰囲気は無いんですよね……。


 玲子さんやまどかちゃんの様子を見ていると何か待っているだけでは状況が好転しそうに思えないんですよね……。


 勿論相手方がいることですから気持ちを大事にしなくてはいけないこともよくよく理解できているんですけど、それにしたって女性に対する興味が無さすぎる気がします……。


 ここは私の方から“デートっぽくないデート”に誘ってちょっとでも障壁を下げるように努力をするべきだと思いました。


 自然な感じにメイクをして私は部屋を出ました。


 玲子さんの作って下さった朝ご飯を並べる用意をしていると、


「ふわぁ~。おはよ~」


 虻輝さんが目をこすりながらリビングに入ってきました。


 最近はもうどんな動作されても愛おしく思えてしまうんですから本当に重症だと思います……。


「ちょっと輝君! ちゃんと鏡見たの!? 涎が口の端についてるわよっ!」


「えっ……そんなつもりじゃ……」


「お兄ちゃん今日も授業なんでしょ? ちゃんと授業の支度出来てんの?」


「あ……何もしてない。昨日ひたすらゲームをしてたから……」


「どれだけだらしないんだよ――あっ! あたしはそろそろ行かなくちゃ! 行ってきまーす!」


 まどかちゃんが元気よく出ていったのを皆で見送りました。


「ふぅ……しかし、輝君の危機感が無いのは本当に問題よ。色々と状況を整理した方がいいわよ」


「まぁ、今日は2限目からだしね。それにまだ僕は2年なんだしさ。

そんなに焦ることは無いよ、気楽に考えよう」


 それって他の人が言うのなら分かりますけど、あまり本人が言っていいことでは無い気も……。


「とはいうものの年が変わればすぐに3年でしょ。

ちゃんと時間管理しなさいよ。このままじゃいよいよ卒業できなくなっちゃうわよ」


「必修科目は大丈夫なんですか? 2年までに取らなくてはいけない必修科目があったと思うんですけど」


 ここで私が発言しました。大学が同じなので状況を把握していますので……。


「ひ、必修は何とかなろうとしているから……」


「必修科目以前の問題として出席日数が足りているのかしら……」


「ま、まぁ。コスモニューロンで予定をデータに入れてるから大丈夫だよ。

――それでもたまに忘れるけどね。データに入れるのを忘れる、データを見るのを忘れる、データを見たのを忘れるの“3忘”の状況なんだけどね(笑)」


 記憶力は時折心配になるレベルですよね……。


「全く笑っている場合じゃないから……。どうやったら改善できるのか考えなさいよ……」


「えー、どうやったら改善できるか教えてよぉ~」


 虻輝さんは小さく拝むような形をして上目遣いで玲子さんを見つめています。


 ご自分を可愛いと思っていないのにそう言う行動が出来るところはある意味凄いですね……。


「はぁ~。しょうがないわね……。

 定期的に予定を確認する習慣を身に付けたらどうかしら?

 何時間にか1回確認するようにすれば、頻繁に忘れる状況でもなんとかなるのではないかしら?」


「流石玲姉、非常に建設的な意見だ。予定確認と言うタイマーも付けておこう……」


 私にはよく分からないんですけど、コスモニューロンにはそう言った機能もあるみたいですね。


 いっそのこと私が管理してあげたいぐらいですけど、流石に私がここででしゃばるのはまだまだ関係が浅すぎるような気もします……。


 玲子さんとまどかちゃんとはこうして自然に会話できているのは本当に羨ましいですね……。


 ただ、虻輝さんは玲子さんやまどかちゃんの気持ちについては全く気付かれていないか、気づいていてもそう言う風に思わないようにしているのかは分かりませんけど、恋人に対する接し方には見えないですよね……。


 中々私ぐらいの距離感だと声をかけることすら何となくタイミングを掴むのが難しいです。

 なにせ何もしていないように見えてもゲームをしている可能性もありますし……。


 ゲームをしている集中力を乱すのも私の本意ではありません。

 私の方を見て欲しい気持ちはありますけど、あれだけの集中力と気力を使う事が出来るゲームについても頑張って欲しいですからね。


 そうなると、大体何かが終わった直後ぐらいが適切でしょうか?


 虻輝さんが朝ご飯を食べ終えると、スッと立ち上がりました。


 ここだ! と思って私は隣に向かいました。


「虻輝さん。今日は何限に授業が入っていますか?」


「2と3限目だね」


「私は1限~3限です。それなら放課後、私に付き合って欲しいところがあるんです」


 虻輝さんは目を見開きながら私から半身離れました。


「へぇ、どんなところに僕を拉致ろうとしているのかな?」


 ――避けられているのは悲しいことですけど、これが今の現実だという事を直視しておかないと……。


「ゲームよりも面白いところです。行きませんか? 勿論、私と話しながらゲームをしてもらっても全然構いませんので」


 フッと虻輝さんの表情が私を恐れているような感じから、興味がありそうなモノに変化が出ました。


「……そこまで言うのなら期待せざるを得ないな」


 何かとゲームの世界大会と比べたがる虻輝さんにはこう言うしか無さそうですよね……。


 もっともゲームより面白いかどうかはご本人の感覚次第と言うところはあるんですけど……。


「でも、具体的にどこに行くのかまでは着くまで教えてあげません」


「えー、教えてよ~!」


 場所を知ってからだと“やっぱり行きたくない”と思われてしまうかもしれませんし、

 事前に調べることが出来て“行く必要が無い”と思われるかもしれません。


 ここは情報を与えない方が無難だと私は感じました。


 私のここ数日で調べたところによると、男性はどちらかと言うと“自分から追わせることも重要”と言う事が分かりました……。


 そうなると、興味をそそるような『謎を残すような状況』が良いようにも思えたのです。


「とにかく、3限目が終わったら北門前に来てくださいね。待ってますから。では、私は一足早く大学に行ってきますから」


「あ、うん。分かったよ。いってらっしゃい」


 私は後半は恥ずかしくて顔を合わせることなくそそくさと大学に向かいました。


 幸い、他の方にはあまり注目されていなかったようなので内密に行う事が出来ました……。


 こ、これはちょっとしたデートと言う事で良いですよね……?


 それにしても、この格好で大丈夫なんでしょうか? でもいつもの雰囲気と露骨に違った服装だと逆にデートだとあからさま過ぎるので警戒されてしまうかもしれないので自然な方が良さそうな気がします……。


 あぁ……私がこんなことで悩む日が来るだなんて夢にも思いませんでした……。

 

 これまでは私自身や誰かに気に入られることを考えるというよりも、弓の手入れをやっていればいい日々だったので……。

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