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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第9話 ひとりだち……?

 あの後のサークルの部室はひたすらに“男子トーク”で終始した。

 

 島村さんが先に帰っていないことを良いことに“セクハラ紛いの会話”が永遠と続けられたのだ。


 本人に聞かれたら、今頃2人は家族から遺影の写真を選ばれていたことだろう……。


 くれぐれも女性陣がいる前で口を滑らすなよ、一瞬で惨殺されるからな――と口酸っぱく指摘したが、   アイツらの今後について不安しか無かった。


 むしろ、自分の彼女でもないのによくもまぁそんなに興味があるもんだなと思った……。


 僕なんて女の子に興味を持ったら欲情しそうで怖いってのに――特に反撃がね(笑)。


 そんな老婆心なことを思いながら家路についた。


 家にいても緊張してイマイチ肩の力が抜けない。

 話さなくてはいけないことがあるからだ。


 特に日本宗教連合の偉い人に会うだなんて大変すぎる……。


 夕食はカリカリに焼いたパンを黒毛和牛スープにつけて味わうもので、とても美味しかった。


 そして夕食の時間の終盤には先ほどの報告をしたのだった。


「厄介なことに大王の痣の件は早くも進展があった。

 早くも明後日には日本宗教連合の本部に僕が向かう事になったんだ」


 半ば愚痴みたいな口調で言った。正直言ってこちらとしてはウンザリだからだ……。


「あら。本当に展開が早いのね」


「大王が言うには痣が存在していることよりも、“分からないこと”を無くしたいそうだ」


「そうね。私も色々と実験に付き合わされたものね。手の内は全て見せなかったけどね」


 玲姉と大王は何か火花のようなものを散らせ“宿敵同士が対峙している”イメージがあるもんな……。


「僕は大王に振り回されてばかりな感じで身が持たないけどな……。

 こちとらゲームをする時間を捻出するのに頭を悩まし続ける日々だ」

 

「極限状態だと輝君は成長してくれるみたいだし、私としては助かるわ。

 大王さん自体は苦手なんだけどね」


「僕の寿命が縮むけどな……」


「1万年のうち200年減るぐらいなら問題ないじゃん」


 まどかは、おとぼけな声でそんなことを言ってきたので思わず“はぁ~”と溜息が出た。


「お前はそのデタラメな設定、無意味に覚えているのな……」


「えっ、違うの!?」


 その純真無垢な表情が過去の僕が嘘を吐いたことを咎めるようですらある……。


 冗談が通じないというのも考えものである……。


「お前のアタマが残念なのが気になるよ……」


「むぅ! 残念じゃないもんっ!」


 頬っぺたがパンパンに膨らんだ。ホントにコイツは近い将来絶望的な騙さ方をするんじゃないかと心配になるよ……。


「それで、話は戻るんだが日本宗教連合へはどういう準備をしていけばいいんだ? まさか手ぶらで行くわけにもいかないだろうし……」


「そうね。日本宗教連合は現在神社にあるみたいだし、ここは“郷に入っては郷に従え”ということで、『紋付き袴』で行くべきよ」


「えぇ……あれ動きにくくて嫌なんだけど……。なんかさぁ、昔の服ってブワッとしていて着ている感じがあまり無いしさぁ……」


 世界大会の式典か何かで無理やり着させられたことがあったが、あの妙な感触は二度と着たくないと思ったものだった……。


「ふぅん……それなら失敗して大王さんに人体実験の一つにされても良いわけ?


「ひぃぃ……そ、それだけは勘弁をぉ……」


 それはある意味死よりも恐ろしいことだ。まともに体が原型をとどめているとも思えないしな……。


 しかし、それを差し引いたとしても慣れない場所に慣れない格好で行くのは僕にとって負担があまりにも大きすぎる……。


「私が着付けしてあげるし、中に暖かいのを入れてあげるし、ちょっとだけ歩きやすいように特別な細工してあげるからさぁ~。サイズも分かっているんだし私に任せてよ~」

 

「なんだかんだ言って僕を“着せ替え人形”みたいにして楽しもうとしているな?」


 恐ろしいことに玲姉は僕のサイズの服を様々なパターン用意している。いつでも僕を“人形”にするために……。


「そんなことないわよ~。それに、輝君は何でも服が似合うんだから色々なタイプの服を着るべきよ~。 安物の誰でも手に入るような服を着るのは勿体ないんだから~」


「それ肯定しているのと一緒だから……」


 いつもよりニッコニコでご機嫌な玲姉の裏には必ずと言っていいほどに僕の犠牲があった……。


「ところで明後日と言えば中本さんの介護ボランティアには私も伺います。

 私が行くことで何かわかることもあると思います」


 基本的には島村さんは優しいし、力もあるから介護とかに向いてそうだよな……。


 でもそれ以上に弓をはじめとした武術とかの方が体のしなやかさを考えると得意そうだけど……。


「へぇ、そうなんだ。となると、僕と一緒に誰が来てくれるの?」


「私、忙しいんだから輝君1人で行ってよね」


「えっ……。そんな……」


「南の島に1週間も行っていたせいで、仕事がたまっているのよ。私は多方面で処理しなくてはいけないことが多いのよ」


「そ、そうか……経営者だったのに連れまわして済まなかった……」


 玲姉や島村さんがいないとなると――。


「あたしも付いていきたいけど高校休み過ぎると卒業できなくなるから……」


「そ、そうか……」

 

 こんなまどかでも高校生の身だった。むしろ今まで良く付き合ってくれたと言える。


「私が護衛しますよ! どんな怨霊や魑魅魍魎が出てきても撃退して見せます!」


 建山さんはいつの間にか化け物退治に出かける気分のようだ……。

 神社に行くからって必ずしもそういう事になるわけじゃないだろうに……。


 これまで物静かにしていたと思ったらこれなんだから、一体全体何考えているのやら……。


「建山さんは特攻局の人なんだから行ったら警戒されるのではないかしら? ただでさえ、日本宗教連合自体が良い思いをしていないでしょうし」


 建山さんの表情がスッと曇った。


「ぐぬぬ……。流石に私はメンツが割れていますからね……。私の使える駒は誰もが警戒されそうで……」


「建山さんは輝君を甘やかせし過ぎなのよ。

 輝君も少しは独り立ちしてくれないと困るわ。

 比較的近くにいるから窮地に陥ったら緊急連絡ボタンを押して私を呼んでくれればいいから」


「はい……」


 確かにこれまで無理させ過ぎてしまった。僕は極端な話“権力”を駆使すれば造作も無く大学を卒業できるだろうが、まどかや島村さんはそういうわけにもいかないのだ……。


 仮に僕が虻利家の権力で救い出しても2人は喜ぶことは無く、玲姉から叩きのめされることになるだろう……。


「用意については私に任せてくれればいいから。

 輝君は当日の心構えさえ整えてくれれば問題無いからね」


「そ、そう……ありがとう……」


 用意することからしなくていいよりかは確かにマシなのだが、

 “当日の心構え”とやらの方がよっぽど大変なんだよな……。


「さて、今日からバシバシッと鍛えていくわよ。村山さんも来ていただいていることだしね」


「えぇ……。ある意味太平洋の孤島にいた方が訓練が手加減されていてマシだったのかなぁ……」


「でも、ゲームが出来なくてそれはそれで嫌じゃないですか?」


「流石建山さんよく分かってるね。と言うことは、世の中何でもかんでもプラスの方向にもっていくことは難しいという事か……」


「分かったならさっさと来る!」


「はい……」


 玲姉の言いたいことはとても理解できる。僕もう2月には20歳になるわけでそろそろ心身ともに“玲姉離れ“をしなくてはいけないのだ。


 分かってはいるけども、現実的にそれが出来るかどうかは別問題だよな……。


 ただ、玲姉も何か僕を使って“遊んでいる”印象しか無いから案外お互い離れられないのかもしれないけども(笑)。

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