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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第3話 スピリチュアルと科学

「しかし、何も対価が無ければ私は動きませんぞ。虻輝様。取引しましょう」


「と、取引? ま、まさか体をバラバラにするタイプの実験では無くても何か試験薬を!?」


 結局そう来るのかよっ! と叫びたくなったがグッと堪えた。

 “取引”と言うワードがあまりにも不気味すぎる……。


「いえ、そうでは無く、私の悩みを無事に解決することが出来たのなら島民の安全を保障しましょう。島の調査からお疲れのところ大変申し訳なく思うのですがね」


 最近こういうことばかりである……。皆、僕に悩みを打ち明ければ解決すると何故か思っているのだ。正確に言うと僕の人脈を駆使して解決しているわけなのだが(笑)。


「大王お得意の最新の科学技術で解決できないのかね? 仮に解決できないのであれば僕で解決できるとは到底思えないのだが……」


 大王の技術はかなり広範囲をカバーしており医療や宇宙、地底まで果てしなく幅広い分野をカバーしている。僕ごときが解決できるとは思えなかった。


「ふむ――では、島民の方々は私の“自由自在”にしてもよろしいのですかな?」


 ギラリと大王の眼が光る。


「あ、いえ……大王の悩みを是非とも聞きたいです……」


 歴然とした力の差を一瞬で見せられた形だ……。


 僕はこういう定めなのだろうかと、大きく溜息を吐いた……。


「簡単に申し上げますと最近私は“呪われている”ようなのです。その根本原因を付き止め絶って頂きたいのです」


「は?」


 あまりにも大王にそぐわないセリフだったので思わず聞き返してしまった。


「その表情はそんなものあるのか? と言うお顔ですな。確かに、今やあらゆる『超常現象

』と呼ばれる現象は科学で解明できています。

 例えば、ポルターガイストと呼ばれる現象をご存知でしょうか? 一見は何もないのに大きな音がしたり、石が降ってきたりするような心霊・超常現象です」


「へぇ、そんなものまで解明できているのか」


「どんな人間でも一定の“波動”を持っていることは証明されています。

 柊玲子さんなどはその“波動“すらも自在に一定以上の破壊力で操っているために圧倒的な力を発揮できているわけです」


「へぇ……」


 やはり科学で見ても玲姉は凄いんだな……。


「そんな中、意図しない形で発動する念力のことを「反復性偶発性念力(recurrent spontaneous psychokinesis。略してRSPK)」と言い、 ポルターガイストのような心霊・超常現象が無意識下の超能力によって引き起こされているというパターンも存在します。


 RSPKに関しては生きている人物の影響によるものですが、死んだ人間に関してもあまりにもその“念“が強すぎると影響が残ることが量子力学などで分かっています。


 また、呪術に関しても近い解明方法で量子力学にて存在が証明されています」


「量子力学って聞いたことはあるし、調べたこともあるけど、よく分からないんだよね(笑)」


「そもそも、量子と呼ばれるものには、分子や原子、光子、陽子、ニュートリノ、電子などのたくさんの種類があります。原子だけでも約100種類もの数があると言われており、これらの組み合わせによって、あらゆる物質が構成されていると考えられています」


「ふむふむ」


「そんな中、量子は観測されると『物質化』し、観測していないときは『波動』になる、ということが判明しています。

 量子力学において,複数の粒子が存在するとき,それらの位置やスピンなどの値は個別にではなくセットで指定しなければならず,しかも複数のセットが同時に共存しているという現象を『量子もつれ』と言います。


 これを簡単に言ってしまうと『互いに遠く離れた場所にあるものであっても、繋がっている』と言うことを意味します。

 こういったことから、スピリチュアルのほとんどのことは実行できる可能性を秘めているのです」


「へぇ~」


 完全に理解は出来なかったが、とりあえず分かったフリをした(笑)。


 玲姉が残留思念が強ければ、モノに残っている感情すらも読み取れるという話を聞いたことがあるがいくらなんでも完全に嘘だと思っていた(笑)。


 しかし、この話を聞いた限りでは本当の話のように思えた……改めて玲姉の力の範囲の広さにも驚かされた。


「また“心霊スポット”と呼ばれる場所は19hz以下の低周波が発生していることが分かっています。

 低周波では、寒気、眩暈、幻覚などと言った“心霊スポットでよく言われる特有の現象”が発生し易くなることも分かっています」


「へぇーそうだったのか……」


「これはあまり世間には言いたくはないことですが、

 地下送電線の多い地域、電車の線路沿い、地下断層などから超低周波電磁波を日常的に浴びていた可能性も高いです。

 そのような状況ですと体内のメラトニン分泌が妨げられ、不安な気分になり鬱になりやすくなるのです。

 そこで自殺が起きやすく“負の残留思念”が溜まっていき“心霊スポット”に更になっていくのです」


「確かにそういう事を知られたらその周辺の地価が暴落しかねないね……。

 そんなにも電磁波の影響が大きいとは……」

 

「いつも思いますが、虻輝様の表情は面白いですな」


「え? そう? よくそれ言われるけど、僕は僕の顔が見えないからどんな顔しているのか分からないんだけど……」


「今度、コスモニューロンの自撮り撮影機能で確認されるとよろしいです」


 僕は自分で自分を撮りたいと思わないのであまり使わないが画面を自分に向けて撮影することも出来るんだから便利な世の中になったものだ。

 

「ただ、科学でその原理を解明できることはありますが、

 呪術に関してはこれらの事象と比べて再現性が低いことが確認されています。

 条件が全く同じだとしても、同じように実現できるとは限らないのです。

 人物に関して今現在、ピンポイントで付き止めることがなかなか難しいのです。」


「あ、再現性が無いと科学として証明は出来ないもんね」


「ええ、ですからスピリチュアルの要素があるものは否定され続けてきているのです。

 しかし私は、まだ科学で解明しきれていない“別の因子”があることから“スピリチュアルの不確定性”と言うのがあると思うのです。

 あらゆる条件が同じならば再現性があると確信していますのでそれを見つけ出そうとしています」


 大王ならいつかそれすらも出来るかもしれない……そう思わせるだけの実績があった。


「大王からこんなスピリチュアル系の話を聞けるとは思わなかった……全く対極の位置にあると思っていたから……」


「いえ、むしろ専門の範囲内です。私はこの世界のあらゆる事象について解明したいので」


「それで、話は戻るけどどうして大王が“呪われている”と言うことが分かったんだ?

 これまでの話からするとある程度のことは解決できそうなんだけど、それを超えるだけの問題でも起こったわけ?」


「これをご覧ください」


 大王が白衣の右足元をめくると、紫色のヘンな形の模様が出ていた。

 うーん、どっかの家の家紋みたいにも見えるし、宇宙人のお遊びのような模様にも見える。


「何か見たことのない模様だね?」


 ちょっと形容しがたい模様なのでコスモニューロンで細部まで保存しておいた。


「私の持ちうるデータと照合してもこれに該当する模様は存在しませんでした。

しかも、あらゆる除菌作用のある物質を使っても取り除くことは出来ませんでした。

 たとえ薄くなったとしてもすぐに、元通りの模様が浮き出てしまうのです。

 これは物理学を超えた“呪い”としかありえないと判断したのです」


「ふぅん、なるほど。でもさ。命に影響が無ければ問題ないんじゃないの?」


「ただ、これはかなり痒いのです。今は特殊なかゆみ止めでもって何とか痒さを抑えていますが、本当なら血が出るほど掻きむしりたい気分になります。

 また、徐々に面積が広がっています。時期に薬も効かなくなってしまうのではないかと私は懸念しています。

 使っている薬自体もあまり体に良いモノではそもそもないので、一刻も早くこの呪術を起こしている人物を発見し、解除方法を探して欲しいのです」


 確かに痒い事は地味にストレスになる。僕も夏場に結構蚊に食われてお風呂に入るまでメチャ痒かったりするのは苦痛なのでとてもよく分かる。


 それに今は痒いだけの症状かもしれないが、時期にとんでもない症状が出て生死に関わる可能性はある。大王は傷が浅いうちの対策を行い、リスク管理をしたいのだろう。


「なるほどねぇ、依頼内容は分かったよ。僕の人脈を尽くして調査してみようと思う

 普段、科学技術局の為継に大分助けられているしね。お互い様と言う感じだね」


 先日も衛星管理システムや、市中のロボット部隊を活用させてもらった。今度は大王を助ける番だろう。島民への借りはなるべく無くしておくどころか貸しを作っておくぐらいにしておかないと、命を容易に取られかねない……。


「ありがとうございます。こういう依頼は中々身内以外は頼れないものです。

 ちょっとあまりにも他人に言うのは恥ずかしいですからな」


「確かにね(笑)。まぁ、僕の出来る限りの範囲で何とかしてみようと思う」


「よろしくお願いします。これは島民のためでもありますからな」


 大王の研究室を出た。とりあえず当初懸念していた“僕が代わりに実験台になる”と言う話では無くて本当に良かった。


 だが、そうは言っても相談する先は限られていた。まずは“波動を自在に操っている”ことが分かった玲姉に聞いていようと思った。

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