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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第5章 南の島で

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第44話 救出リベンジ

2055年(恒平9年)11月17日 水曜日


「うぅ……」


 朝日に目が沁みます……。

 昨日は結局色々なことを考えてほとんど眠れませんでした……。


 特にまどかちゃんに対して悪いことをしたという思いと、虻輝さんが好きだという想いが交錯して頭がこんがらがっていました……。


「ふわぁ~。知美ちゃんおはよ~」


 まどかちゃんが起きてきました。私が動揺しているのと、色々と困っていることは悟られないようにしましょう……。


「おはようございます。今日も何とか頑張って生き延びていきましょう」


「あ……そうだったね。あたしたち流されたんだった……。わわわ! 毛虫があたしの足にぃ!」


 まどかちゃんが急いで体を払い始めたので私も体を見回しましたが小さい虫がいた程度でした。


「普段、いかに清潔で恵まれた環境で生活していたか分かりますね……。

 私も無人島で屋根も無いところで暮らしたことは無かったので、流石にちょっと戸惑っています」


「そ、そうなんだ……。その割には随分と落ち着いているね……」


「私が動揺していたらこのメンバー崩壊しそうじゃないですか?」


 心の中はもうグチャグチャですけどね……。

でも、まどかちゃんの様子からすると私は平静を装う事に成功しているようで安心しました。


「た、確かに……お兄ちゃんとあたしだけだと何やらかすか分かんないし……」


 お二人だけだと肉体関係持ちそうになったりしますからね……。


 まどかちゃんには本当に申し訳ない気がしますけど、虻輝さんも本心ではまどかちゃんのことをまだ好きでは無いようですからチャンスがあるという事ですよね?


 あ……。そんなことを考えていると、虻輝さんがこっちに歩いてきます。


 な、何か虻輝さんのことを好きだと気づいてから妙に意識してしまって、ちゃんと話せるか心配になってきました……。


 これまではスラスラと酷い言葉が出てきたような気がしたのに……。


 でも、何も話さなかったら関係性が発展することって無いですよね……。

 

 な、なるべく何事も無かったようにいつも通りに……。


 しかし、虻輝さんも何だか寝ぼけているのか足取りがおぼつかなく、フラフラと歩いているような感じです。


 そんなちょっと間抜けな姿を見ても顔が赤くなっていくのが分かります……。


「おはようございま――アグッ!」


 私はあまりの痛みにうずくまりました……。


「と、知美ちゃん大丈夫?」


 隣にいたまどかちゃんに心配されてしまいました……。


「ちょ、ちょっとまだ本調子じゃないというか……」


 緊張しすぎて舌を嚙んじゃったとかとても言えません……。


「島村さん無理しない方が良いよ。島村さんだって昨日は頭を打って気絶していたわけなんだし……」


 ずっと引き籠ってゲームしている虻輝さんにそう言う風に体の心配をされると――好きとはいえどうにも屈辱的なんですよね……。


「私たち全員が特殊な状況下に置かれているといっていいので気にしないでください。

 お二人だと食料調達もままならないですしね」

 

「返す言葉も無い……」


 私は2人を待たせて10分ほどするとそこら中から草を抜いてきました。


 2人とあんまり顔を合わせたくないというのもありますけど……。


「食べられるのは上のもの。食べられないのは下に置いてあります」


 私はそう言ってあたりから取ってきた雑草をずらりと並べました。


「なるほど……これは分かりやすいねぇ~」


 まどかちゃんは頷いていますが虻輝さんは苦笑いしか出ていません。


「うーん、しかし似たようなのも多くて覚えてられないんだけど」


「お兄ちゃんは記憶力に問題があるからね……最早お爺ちゃんに近いことが昨日分かったし……」


 これはチャンスかもしれません。


「私が介護しましょうか?」


「誰がお爺ちゃんだ! 誰が介護だ! まだ19歳だぁ!」


 私とまどかちゃんは思わず耳を塞ぎました。だぁ! が何度も何度も島中に木霊していきます……。


「もぉ~! 叫びすぎだよぉ!」


「お二人とも叫んでもカロリーを無駄に消費するだけですから、やめた方が良いですよ。

 サバイバルでは体力を無駄に消費することが一番死に近づきますからね。

 とりあえず一通り分かるようになるまで私についてきてくださいよ」


「はい……」


 私が正直に伝えるとシュンと小さくなりました。

 こういう可愛いところがあるから、またちょっとずつ好きになっちゃうんですよね……。


「じゃぁ、あたしはこっちの方を探してくるよ!」


「何か危険があったらすぐに逃げて下さいね!」


「うん!」


 まどかちゃんはパタパタと走っていきました。あんまり慣れないジャングルを走り回るのはリスクがあるので心配になるんですけど……。 


 でもお陰で自然な形で2人きりになることが出来ました……。


「よりにもよって島村さんと一緒かよ……」


「それならっ! 誰とならいいんですか!?」


 折角二人きりになったのにそんな愚痴を言うので、私は思わず語気が荒くなりました。


「い、いやね。誰と言うかね。一人でゲームをするのが一番気楽と言うか……。

 僕の世界に入り込めるって言うか……」


 はぁ~、せめて玲子さんの名前を言われた方がまだ良かったような気がします……。


 逆に対処に困りますよ……。今ここに無いバーチャルなゲームが相手だなんて……。


「ご自由にされて良いと思いますけど、一人で食べ物を探すことですね。

 勿論私やまどかちゃんが採取したのは分けてあげませんけど」


「ひぃ~! 島村さん。どうかお恵みを~!」


 この茶番はどうしても省略できないんですかね……。

 結果が何となく見えているのに……。でもやらないならやらないで寂しく感じたりするのでしょうか……?


「土下座はいいですから、周辺に注意してくださいよ。ジャングルではいつ何が起こるか分からないんですからね?

 まずは先ほどの食べられる野草正誤表を思い出して食べられるのを持ってきてください」


「スマン……忘れた。何も覚えてないんだ」


「本当に忘れるの早いんですね……。とりあえず“食べられる”と思ったのを手あたり次第集めて下さいよ。最終的には私が選別して持っていきますから」


 この記憶力の無さは流石に少し心配になりますけど、

 どっちかって言うと頼って欲しいのでダメでいてくれた方が私にとっては好都合ですけどね……。


 私がどれぐらい頼りになるのかアピールしてちょっとでも魅力的に思われないと……。


 私は早々に食べられる草を集めてしまった後に、そんなことを考えながら虻輝さんを眺めていました。


「うわぁっ!」


 そう叫び声が聞こえたかと思うと虻輝さんは私の視界から消えました。


 私は急いで駆け寄ると、どうやら2メートルぐらいの深さの穴に落ちてしまったようです……。


「イタタタ……面目ないけど、どうやら自力で登れなさそうなんだけど……」


 これは、虻輝さんは這い上がってこれず、私が簡単に助けられるいい塩梅と言えますね。


「全く、本当に情けないんですね……」


 私は見た目上は仕方ないなぁ――と言う雰囲気を出しながら手を伸ばし、一気に引き上げました。


「ふぅ……東北の時と違って(第2章70話)今度は助け出せました。これぐらい持ち上げられなかったら、本当に情けない話ですからね」


 あの時は足が痛かったので上手いこと行かなかったんですけど、今回は楽々でしたね。

 密かにリベンジを成し遂げられてよかったです。


 今思えばあの時ぐらいからちょっとずつ好きになっていたのかもしれないですけど……。


「女の子に引き上げられる僕はもっと情けない話なんだが……」


 辺りをサッと見回しましたが、どうやらまどかちゃんの姿は近くにはいなさそうですね……。


 これで良いのかよく分かりませんが今チャンスであることは間違いなさそうです。

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