表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第5章 南の島で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

281/379

第43話 ズレた視点

「はぁ~」


 思わずため息をつかざるを得なかった。


 闇の中ほとんど星も見えない中、色々あって疲れているのに眠れない。


 そして、ゲームのシミュレートすらも脳内で再現することも難しくなってきたほどだ。


 それでも眠れない。逆にさっきちょっと寝てしまったのが良くなかったのだろうか? 


 ウチのベッドがあまりにも寝心地が良いので、今背中への負担が深刻だ。

 石がゴツゴツが当たっているので僕史上最悪の寝具環境と言っても過言では無いが、それ以外の要因も大きそうだった。



 モヤモヤが僕の頭の中を占めているのだ。


 この際だから、今回の調査から今までのことを振り返ってみるか……。


 まず、なぜか知らないけど水鉄砲で僕が集中放火されて倒れ。起きたらビーチバレーボールをやることになり、玲姉が1人で無双。

 その間にまどかが髪留めをどこかにかふっ飛ばし、難破しそうになっても探し、見つけたところで海に投げ出されてしまう。


 漂着した島を探索する者の食料調達に困難を極め、まどかと何故か肉体関係になりかけてしまった……。

 島村さんが出てきてくれたおかげで何とか阻止されたものの食料において隷属関係――ヤバいことしか起きていないな(笑)。


 そして、無人島でコスモニューロンが繋がらないと気が付いた瞬間、ゲームが無ければ本当に僕には何も残されていないという事に気が付いたのだ。


 薄々は気がついてはいたのだが、こうも何もすることが出来ないとは想像だにしなかった。


 ゲームのあらゆる世界大会で勝ち続け「人類史上最強」「賞金皇帝」とまで呼ばれたことがあるほど圧倒的な力を見せつけてきた。


 ところが、デバイスが使えない。それを評価してくれる人が誰もいない。ゲームもできない。そんな状況ではそのスキルは何ら意味も無いのだ。


 お金や地位や名誉が全く使えない時、「本当の人間性」と言うのが評価されるという事なのだろう。


 今の僕は限りなく「虚無」の状態に近い。


 いや、虚無だけならまだいいのかもしれない。


 僕は大王に無実の人を送り込んだ犯罪者、殺人犯だ。大王が権力者の座にいるから罪に問われる可能性が無いだけで、全て知っていてやっていたんだから。


 慈悲深い島村さんが食料を分けてくれているから何とか僕は食いつないでいけそうではある。しかし、本来であれば人間性の欠片も無い僕は真っ先に斬り捨てられてもおかしくはない。


 島村さんから見れば僕は仇敵とも言える存在なのだからいつそうなってもおかしくは無いんだ。


 既に何も無い空虚な犯罪者であることは明らかな上に、今更取り繕っても仕方ないのが悲しいところだ。


 妙に今から善行をやったところで「あからさまな媚びる行為」だと不審に思われても仕方ないし、今まで通りの感じで過ごしていくしかないのだ。


 辛うじて今まで通りで過ごしていけそうだしね……。


 もっとも、あまりにも足を引っ張り過ぎればいくらなんでも“戦力外”になりかねない。


 10分おきに休まないと体が限界に到達するという……。


 だって仕方ないだろ? こんなことになるだなんて夢にも思わなかったんだから……。


 精神的な疲労も最近重なって流石に厳しいんだって……。


「しかし、まさかまどかに関係を迫られる日が来ようとは夢にも思わなかった……」


 まどかは紛れもなく美少女だ。本人には口が裂けても言えたことでは無いが、普通じゃ到底お目にかかれないレベルだろう。

 玲姉と共に家族の都合上なぜか居候しているから毎日顔を合わせているに過ぎない。


 どちらかと言うとまどかに対しては“イジッてきた”わけであり、好意を持っているとは到底思えなかったからだ。


 まどかにとっては大変失礼な言い方になるかもしれないが“下に見ていた”といっていいだろう。


 今思い返しても色々と失礼なことをしてしまった。まどかのシャツの中に虫を入れて泣かれたり、


 僕のせいでまどかの頬っぺたは恐らくは1.5倍ぐらい伸びるようになってしまっただろうし……。


 改めて振り返っても本当にどうしようもない兄だと言える……。


 そんなこんなで実際には僕に対して好意を持っているとも思えないのだが、極限状態とも言える状況がまどかの判断を狂わせてしまったのだろう。


 僕も状況に流されてしまい、まどかを押し倒すところまでしてしまったんだ。

 

 しかも話を聞いてみると意外としっかり受け応えていたのがさらに驚いた。

 バカだのアホだの散々言ってきたのが申し訳なるぐらいだった……。


 あんなに切羽詰まった感じで迫られたら流石に理性が保てないって……。


 すんでのところで島村さんが現れてくれたから正気に戻れたので本当に良かったと言える。



 ただ本質的な問題が解決したわけではない。僕とまどかの2人だけの状況から島村さんが加わっただけに過ぎない。

 最大の問題だった食糧問題は解決しそうだがそれだけに過ぎないのだ。


 超人であり、諦めない、行動力もある玲姉がいつかは助けに来るだろうが、それがいつかは分からない。


 少なくともまどかは子供を産みたい願望があるという事が分かった。


 僕と言う“最悪の選択“をせざるを得ないぐらい意思決定能力に異常をきたし、心理的に追い詰められていたという事だ。


 そんな雰囲気を感じさせてこなかったまどかですら子供が欲しいと思っているんだ。

 それより大人っぽい島村さんだってそう思っている可能性が非常に高いと見ていいだろう。


 しかしこの島から脱出できなければ2人が“最悪の選択“として僕を選ぶしかない状況を考えなくてはいけない時が来てしまうのかもしれない。


 僕みたいなゴミのような人間の子供を産むことになるだなんて、それはあまりにも気の毒なことだと言えた。


 二人が魅力的過ぎるのがいけない。僕が理性を保ちきれずに襲ってしまうリスクが付きまとうのだ……。


 そういう最悪の状況の前に生還するための手立てとして何とかしなくてはいけないのだろうけど――僕に打開策が思いつくのだろうか……。


 とりあえず知識も経験もある島村さんの言うとおりにやって、助かる可能性を上げていくしかないのだろう。


 ただ、島村さんの小言が本当に玲姉の“生き写し”みたいな感じで勘弁して欲しいんだけどね……。


 言う事を聞かないとすぐに手を上げる玲姉よりはマシだけど、そこもいつ見習うようになるか分かったもんじゃないからな……。


「あ、星だ……」


 気が付けば満天の星空になっている。VR空間では見たことがあるが、リアルで見るとそれとは違った感動があった。


 僕は願った。何とか皆無事に日本に帰れますように……と。僕の理性が何とか持ちますようにと……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ