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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第5章 南の島で

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第25話 天使のような悪魔の攻撃

 一体玲姉は何を始めようとしているのだろうか……。これまでの話を総合するに何やら“遊び”であることは間違いないのだろうけど……。


 ただ、これまで玲姉と“遊んで“いい記憶があったためしがない。一方的に僕がボコボコにやられるだけだからだ。玲姉と出会ってから16年ほど一度も何かで勝ったためしが無い……。


 そして玲姉は僕が得意なゲームには全く興味を示さないためにスレ違いというか、一方的にやられるしかないのだ。


「いよいよ始まるというのに、建山さんは随分と余裕そうね?

 そもそも特攻局の幹部の方がこんなところに暢気にいらっしゃっていいのかしら?」


 建山さんは、読んでいた本をパタリと閉じ、サングラスを外してパッと空に華麗に投げ出して胸元にスパッと引っ掛けながら立ち上がった。


 オーッと思って思わず僕は拍手した。しかし一体何が始まるというんだ……。


「特攻局としてもこの一件に関して興味を持ちましたので参加させて頂きました。

 最近、休暇もまともに取れていなかったので休みも兼ねています」


 恐らく建山さんの前回の休暇はヴァーチャリスト事件だろう。あれも休んだとは到底言えるものでは無かっただろうからな……。


「ふぅ~ん……特攻局も随分とお暇なのね。幹部の方がこんな太平洋に出ておられるだなんて」


「この一件については成果が上がればボーナスも出ますし有休消化もしないで済みます。特攻局とはそういうところです。

 休みで外に出ていても成果が出ればちゃんと“仕事”としてくれるのです」


 建山さんはかなりイライラしながら髪を触り、本を手元の自分のポーチの中に入れた。

 この2人はなんだか知らないが最初からこんな感じだ。


「まぁ、輝君に触れなければ自由にしてもらって構わないわ」


「それは私にとって自由とは言わないです」


 玲姉も建山さんも眼つきがマジだ。この場で取っ組み合いになりかねない。なぜこの2人はいつも火花を散らしているのだろうか……。


「ま、まぁ落ち着こう2人とも。争いは良くないよ。ね?」


 僕が2人の真ん中に立とうとすると――。


「輝君、あなたが口を挟める問題では無いわ」


「残念ながらそうですね。お引き取り願います」


 と、強制的に言葉の暴力で排除される。僕はトボトボと離れた……。

 どうして僕の話題の筈なのに僕が意見を言えないのか……そして、玲姉と建山さんはどうしてこういうところは意見が一致するのか……。


「折角だから水鉄砲に当たったほうが負けと言う勝負をしませんか?

 ちなみに私の威力はこんな感じです」


 プシュー! と建山さんは玲姉との目線を逸らさないまま水鉄砲を僕に向け、ホースから水を出したかのような威力で僕の顔に直撃する。


「プハッ! 何だこの威力……」


「へぇ、私はちなみにこれぐらいの威力を出せるわよ」

 

 玲姉が不敵な笑みを浮かべる。そして、玲姉も何故か僕に水鉄砲を噴射した!

玲姉の水鉄砲の威力は強烈で直接照射されたかのような破壊力があった……。


「グフッ!」


 とか思っている間に別方向からまた水の噴射が僕の体に直撃する。これは当たると広範囲で痛痒い感じの威力だ。


「こういうこともあろうかと持ってきておいて正解でしたね」

 

「ふ、2人ともどうして僕で試し打ちするんだよ……」


 先ほどまで全くプールに浸かっておらずカラカラだったのにたちまち全身ずぶ濡れである……。


「せっかくプールに来たのに楽しんでなかったみたいだから~」


「そうですよ。皆で楽しまなくてどうするんですか?」


「謎のところで一致するのな……僕は別に楽しんでないわけじゃないよ。

 ただ皆が楽しんでいるところを邪魔しちゃ悪いかなって。

 まどかが誘ってこなかったらそもそもプールで遊ぶ計画も無かったんだ。

 プールの隅か自分の部屋でゲームを猛然とやっていたところだったよ」

 

「でも、少なくとも私たちの水着姿を見て色々妄想して楽しんでいたわよね~?」


「ブハッ!」


 水を飲み始めたところで玲姉がとんでもないことを言い始めた。


「な、なんてことを……」


 玲姉、燃料投下するな! 命の危機だ……。


「本当ですか――撃ち抜きますよ? そう言えば私の胸元ばかりを見ているような……!」


 振り向くと島村さんが水状の弓を出し始めた。


「ちょおっ! 島村さんいつの間にかそんな技をできるようになったんだ!?」


「玲子さんと編み出していました。電気が通っているところしか私の攻撃が使えないのでは困りますからね。実践投入をするのはこれが初めてですけど――」


 目が据わっている。電撃弓よりは致命的な威力は無さそうだが、当たればひとたまりもないことは間違いない。


「先ほどから虻輝さんは島村さんの胸元ばかりを見つめていますけど、

 胸なんて脂肪の塊じゃないですか……」

 

 後ろからは建山さんのおぞましいほど低いつぶやきが聞こえた。

 地獄の門はなぜか勝手に開かれたのだ。


「ち、違うんだ! ひ! ひぇー!」


 ピキッ! と建山さんの何かが壊れた音がした。

 あぁ、また何かやってしまったようだ……。

 どうして注意していながら地雷ばかりを踏むのか……。


「わー楽しそー! あたしも混ぜて~!」


 まどかは陽気な声を出していたが、その手に持っていたのは水鉄砲版のガトリングだ……。


「ちょぉっ! なんなんだよそれ! どこで仕入れてきたんだ!」


「ちょっと大王さんが貸してくれたんだよ。試験版だって。これが無いと皆に対抗できないもんね!」


 まどかは銃口を僕に向けた。水を補給していき何個もある丸から今にも水が発射されそうだった……。


「やめろー! お、おかしいだろ! 何で4人とも僕に向かって攻撃しようとしているんだ! まず僕に水鉄砲を渡してくれ! リンチだぞこれ!」


 銃撃戦が始まったが何故か知らないがレギュレーションがいつの間にか変わってしまったのか僕にばかり命中するのだった……。僕だけ丸腰だというのに何という理不尽だ……。


「ギィヤー!」


 必死で逃げようとするが、どこに行っても誰かが待ち構えていた。

 まさに絶望的な状況と言うのはこのように全方位から敵が迫っていることなのだろう。

 唯一の救いは、全方向水着美少女から集中砲火を受けていることぐらいか……。


 天使のような顔で悪魔のような攻撃を加えてくる4人を前に僕は一目散に逃げだした。


「待ちなさーい! プールサイドで走るのはダメよ!」


 そう言われてもこの状況下で走らない奴がいるか? 立っているだけだとただの的同然だろ! 


 4人の包囲網から逃げようとは走り出すと、足がスルッと滑って大きくバランスを崩す。

頭から水しぶきを大きく跳ねるとそのまま――ゴボボボボ……。

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