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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第5章 南の島で

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第23話 不安な旅立ち

2055年(恒平9年)11月15日 月曜日


「うわああああああ!!!!!」


 何の夢をみたのか覚えていないのだが、取り敢えず叫んで汗びっしょりと言う状況で目が覚めた。まだ4時だった……。

 僕の悲鳴に近い叫びは壁が薄いアパートなら間違いなくそのアパート中に響き渡っただろう。

 しかし、この虻利邸は幸い他の皆の眠りを妨げないだろう。それぐらい防音設備に優れていた。


「しかし、僕が悪夢を見るときは大抵とんでもないことが起きるんだよな……」


 今日から始まる旅は本当に行きたくなかった。

 単に電波が通じにくくゲームがやりにくくなることが予想されることだけじゃない。

 

 皆を危険に陥らせてしまう可能性があるからだ。

 僕だけが危機に瀕することは最悪許容できる。

 でも、皆まで巻き込む気にはなれなかった。


「ただ、まどかはあんなにも旅行だと思い込んで喜びまくってたし、

 無碍に断わったり、行くなとは言えないよな……」


 とか悩みながらでも猛然とゲームをして勝ちまくっているんだから我ながら驚きだ。

 FVでなんとか8連覇をどうにか達成したのでこの勢いを継続したいのだ。


「まぁ、なるようになるしかないか」


 結局悩みまくりながらも、“玲姉が何とかやってくれるだろう”と言う非常に他人任せの結論で終わってしまった……。


 “お前が何とかしろよ“って自分自身で突っ込みたくなってしまったが、何の実力も無いのだからホントどうしようもないぐらい情けない……。


 そんなことを考えながらゲームをしていると6時になろうとしている。

 今日の出発は7時だ。そうなるともう行かなくてはいけない。

 幸い準備は昨日の夜に玲姉が無理やり部屋に来襲してきて整えてくれたので何の問題も無い。


 玲姉はお節介だなぁとは思うけど間違いなく玲姉が来なければ何も準備をしなかったのは間違いない(笑)。


 大きなリュックを引き摺りながらちょっとずつ進む……。後で景親に持ってもらおう……。


「虻輝様、おはようございます」


 リビングに行くと驚くべきことに輝成が待っていた。


「え、輝成も来てくれるの?」


「先日の状況から赤井綱利の陰謀の可能性もあるのではないか? と言う警視庁の判断もありました。虻輝様の命を執拗に狙っていますからな」


「つまり、この調査は罠かもしれないと?」


「あまり大きな声では言えませんが、赤井綱利は科学技術局出身です。大王局長にも疑惑があるという事です。ただ、具体的に何か証拠があるわけではありません。

 私も建山さん同様、有休を消化して参加をすることになります」


「そうなのか……。有休を使わせるとなると悪いな……」


 これで特攻局代表建山さん、科学技術局代表為継、反政府思想代表玲姉、警察代表輝成とかなりバリエーションに富んだメンバーになったわけだ……。

 ついでに僕もゲーム界代表として片隅に名を入れておこう。僕に来た依頼なんだけどね(笑)。


「輝成は本当に疑り深いな。ただ、そうでもしなければ警察としては務まらないか」


 輝成の言葉に対して物凄く馴染んで為継が返事をした。平和そうに紅茶を飲んでいたので存在すら感じられないほどだった。


「為継こそ大王の尖兵じゃないのか?」


「失礼ですな。私は局長の懐刀です」


「いや、もっと悪いだろそれは……」


「何でも言いますが私は虻輝様の全面サポートをします。体調管理も保証しますのでご安心を。不安なことがあったら何でも申しつけ下さい」


「ああ頼りにしているよ」


 先ほどの話の流れからすると、懐刀として僕の喉元に刃を突き付けていることになるんだろうが……。


「じゃぁ、俺が虻輝様の懐刀ってことでいいっすよね!?」


 景親が僕たち3人に割って入ってきた。この生産性が全く感じられない冗談みたいな会話は互いの立場を象徴していると言えた――景親は何の考えも無しに楽しそうではあるが(笑)。


「今回はまさしく現代の科学技術が進歩しておきながら未踏の地に行くことになる。

 そうなると景親の活躍の場面は増えるだろうな」


「よっしゃぁ! 腕が鳴りますな! 今から気合入れて素振りしないと!」


 普通ならそう聞くと怯むものだが、景親は飛んで喜んで木刀を振り回している……。そして相変わらずその木刀が僕に当たりそうだ(笑)。本当に変わった奴だった。


「ちょっと皆! もうすぐ出発時間よ! 男性って言うのは子供のころから大人になってお爺さんになるまであんまり変わらない感じがするわよね……」


「それなら、玲姉はクラスの女子委員長みたいな感じだね……」

 

 いつもそうなんだけど、僕に来た依頼なのに気が付けば玲姉がしきっている。

 今日の荷物の用意までさせているわけなんだから強いことは何一つ言えないわけなのだが(笑)。


「ここに皆がマイペース過ぎるからよっ! まどかちゃんたちはもう乗っちゃったんだから!

 それに、私だってやりたくてこの立場をやっているわけじゃないのよっ!

 それより、輝君はまず、自分の持ち物を自分で運べるようにしようね……。

 大体私が昨日確認した限り不要なモノを持っていきたがり過ぎよ……」


「ハハハ……色々と面目無い……。ただオンライン対戦が使えないことも想定するとゲーム機本体も重要だから……」


 オンライン対戦が出来ずともAIが構成した僕と同レベルの相手と戦うことが出来るためにとても有意義なのだ。


「色々と呆れる限りね。いざとなったらそんなモノは全て手放さなくてはいけないのに……」


「そう言う境地には到底到達できないね……。それこそ僕はありとあらゆるモノの頂点の家系だったわけで、無いことが想像がつかない……」


「恵まれていることは失ってから始めて気づくことになりそうね。

 でも、輝君は虻利家と戦うかもしれないのだから覚悟をしておかないと……」


「僕はそもそも体制と真っ向から対立する気は全く無いんだけど……」


 玲姉は危機を煽るが、どうにもそう言う未来になることが想像つかない。僕には戦う力も無ければ戦う気もないからだ。一体どうしてそう言う発想になるのか不思議だ。


 そんなことを思いながら、荷物輸送用の軽トラックに荷物を詰め込み――まぁ、僕は自分の荷物をまともに持てないから景親と烏丸が詰め込んだけど(笑)。


 その後に僕たちはいつもの飛行自動車に乗る。今日は昨日と同じ席順という事で暗黙の了解があったのか騒動にならなかったのは幸いだった……。


「いってらっしゃい。僕は虻輝様の部屋を何もなくなるぐらいに掃除しておきますので」


「それは全部捨てるか売り払うという意味か? それなら何もするなよ……」


「ははは! 冗談ですって! 嫌だなぁ、いちいち真に受けないで下さいよ~」


 そんな感じで僕の邸宅から出た。手を振る烏丸があっという間に小さくなる。


 烏丸もホント悪意は感じられないけど得体の知れなさはあるよな。いつもニタニタ笑っているのがただの性質なのかそれとも裏があるのか全く分からない。荷物をトラックに詰め込むのに活躍してくれたから良いけど……。

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