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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第5章 南の島で

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第16話 論争しつつ警戒

 建山さんと私の席を玲子さんとまどかちゃんが囲むという形で、周囲を警戒しながらもヒソヒソと話が続いている感じです……。

 あの人の試合以外は3人共興味ないと言った感じで退屈なのは分かるんですけど、ちょっとマナー違反な気がします。

 強く言えないのが私の立場の弱さなんですけど……。


 そして“共通の話題”とも言えるあの人についての話題を永遠としている感じです。


「私は特攻局の調査やシステムを使って虻輝さんを支えています。

 それでいながらゲームについての技術も持ち合わせており趣味も共通しています。

皆さんに無い能力や特技を持っているという事です。

 どうですか? 私には虻輝さんのお相手に相応しい要素をいくつも兼ね備えているのです」


 とんでもなく得意げに建山さんは語り続けています……。鼻高々すぎてピノキオみたいになっている感じです……。


「そもそも建山さんは特攻局と言うだけで輝君にちょっと警戒されているわよね?

 それって本当に“信頼されている“って言えるのかしら?

 特攻局の看板が無くなった際にあなたに残るモノって何かあるの?」


「そ、それは……」


 玲子さんの指摘が痛烈過ぎますね……。高々していた鼻も折れたか感じがします……。


「私はそれに対して輝君とは15年以上の付き合いがあるし、組織が無くても個人で助け出すことが出来るんだから」


「わ、私だって熱意だけなら負けません! ちなみにまどかちゃんはどうなんですか?」


「えっ! あたし!?」


 突然話を振られてまどかちゃんはびっくりしている感じです。


「まどかちゃんは輝君と“パフェデート”していくうちに甘い物大好きになっちゃったのよね……。

 本来なら体に良くないからやめた方が良いんだけど……」


「だってぇ……そうでもしないとお兄ちゃんと趣味が合わなさ過ぎて全然一緒にいられないんだもん~」


「それは困ったものね……」


 まどかちゃんは何をしてでもあの人と仲良くなりたいようですね。

 正直、そこまでしようと思う事に私には理解しかねるのですが……。


「でも、そう言う“執念“は大事ですよ。狙っている彼は凄く人気が高いですからね。

 私とも被っているというのが最大の問題ですけど……」


「建山さんはちなみに甘いのはどうなのさ?」


「私はそこまで好きではないのでそんなに食べないですけど、食べようと思えば食べられますね。その程度の感じです」


「私もそんな感じですね」


 建山さんの言葉に何となく私が同意すると建山さんは顔を歪めました。

 そんなに私と同じなのが嫌なんですか……?

 あまりにも会話に入る場面が無かったのでたまに返事をしてみたらこんな様子ですから困ります……。


 一応は同じ家に住んでいるという状況になっているので、なるべくいざこざ無く過ごしたいんですけど……。


「そもそも甘い食べ物は人間が品種改良して無理やり糖分を増やしたものなのよ。

 だから果物ですら本来はずっと糖分は少なかったわけ。

 そう言った自然界に元々なかったような遺伝子組み換えのような食べ物を食べると体にはよくないのよ」


「はぁ~。大体もう100年とかも食べている食べ物だと元々自然界に無かったとしても腸内細菌とかがもう“許している“状態なんではないですか?

 腸脳相関といって腸が食べたいと思っているモノを抑制してしまうと脳に悪影響が出て体全体にも悪いと思います」


 建山さんは正直すぎるところはありますけど、玲子さんの意見に対して真っ向から意見する姿勢は凄いとは思いますよね……。


「でも、それは脳を麻痺させて美味しいと誤解させているのよ。

 “緩慢なる死”に向けて一歩ずつ前進している言っていいの。

 あらゆる添加物は“安全”と言われていたけど、研究なんていくらでも都合の良いデータを継ぎ接ぎできる。これらを総合しても危険でないと言えるのかしら?」


「そんな古臭い考え方をしていると嫌われますよ?

 それではストレスが溜まりすぎてしまいます。ストレスは体の毒ですよ。

 特に衣食住の3大柱の一つがストレスがかかってしまっては精神にも良くないです。

 何事も過剰に取り過ぎは良くないですけどバランス良くいくべきです」

 

「~~~~~!」


 二人とも睨み合った後また口を開いて何か言おうとしたその時でした。


「そして赤コーナー! 日本出身! 世界ランキング1位 現在7連覇中の虻利虻輝拳王です!」


 皆さんの視線がステージに行き、話が強制的に終わりました。あ、ある意味助かりました……。


「あら、決勝戦で輝君が入場するみたいね――!?」


 玲子さんが何に気が付いたのか途端にバッと走り出しました。

 その1秒もしないうちに建山さんも立ち上がりました。


「みんな伏せてください!」


 するとガランッ! と言う音がして一気にステージの天井が崩れ落ちてしまいました!


「輝君大丈夫!?」


 玲子さんが対戦部屋の落下した天井を支えて対戦する2人を何とか間一髪で助けました。

 建山さんもですが、あの論争をしながら事前に察知したことが凄すぎます……。


「知美ちゃん! お姉ちゃんを助けよう!」


「はい!」


「2人ともこれを!」


 建山さんが私たちに丈夫な手袋をそれぞれに向けて投げてくれました。確かに崩れた天井の瓦礫をかき分けて進むのは大変ですからね……。


「ここからは特攻局の指示に従ってください! 私は特攻局関東テロ統括部長の建山です! 各所にある避難出口から落ち着いて一人ずつ出てください!」


 そんな低い建山さんの大声を後ろに渡しはまどかちゃんに続いてステージに向かいました。


「この天井をどこに投げればいいのか教えて!」


「玲子さんの右斜め後ろです!」


 玲子さんが支えているために、辛うじてステージ中央だけが天井に潰されずに済んでいた状況です。


「とうっ!」


 玲子さんは持っていた天井を誰もいないところに投げ捨てました。あれが直撃していたら命は無かったでしょうね……。


 玲子さんが持っていた直径5メートル以外の部分はステージにあった対戦部屋の天井にあった照明設備などが砕け散って散乱しておりとてもまともに近づける状況ではありません。


「お兄ちゃん今助けるから!」


 私とまどかちゃんは瓦礫の山をかき分けるように進み、ちゃんとした道を作りながらようやく玲子さんのところに辿り着きました。


 あの人とイタリア人の方は玲子さんによって辛うじて無傷と言う形でした。

 半ば茫然としながら椅子に座っているという感じでした。


「あぁ、まどか。色々と信じられないことが起きた。玲姉とか最早、天井を支えていたとか意味が分からない」


「そうね。大体持っていた部分もドームの一部も含めて200キロぐらいあったんじゃないかしら?

 今日はお空が綺麗ね」


 上を見上げますと、対戦部屋のさらに上のドームの上が破壊されており、綺麗な青い空が見えます。抜け落ちた白いドームの天井からポロリと小さいな破片が落ちるという妙なコントラストがありました。


「に、200キロって……と言うかよく気付いたね玲姉は」


「私と建山さん以外は気づいていなかったみたいだけど、レーザー光線のようなものが見えたのよね。

 部屋が潰れるんじゃないかと思って走り出したのよ」


 そう言うと玲子さんはイタリアのフェルミさんに向かって何やら話しかけています。

 ――フェルミさんはうんうんと頷きながらホッとしたような表情をしています。

 

 玲子さんは言語も多彩に操れるので本当に凄いです。

 フェルミさんを誘導し始めました。


「破片は私たちがどけましたから、こっちに来てください」


 ところが、腰が抜けてしまったのかあの人は立ち上がることが出来ないみたいです……。


「もぅ、お兄ちゃん情けないなぁ。試合の最中はあんなに真剣な顔が出来るのにさぁ~」


「面目ない……」


 まどかちゃんはどちらかというと、自分が手を握ることが出来てかなり嬉しそうな感じですけどね……。


 見たところとりあえず誰も深刻な怪我をしてい無さそうで良かったです……。

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