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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第5章 南の島で

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第15話 決勝戦直前

 相手のキャラクター“カロリーナ“の体力がゼロになる。

 僕の勝利が決まった瞬間だった。


「虻利虻輝5冠、決勝進出です!」


 ウワァー! と地鳴りのような歓声が鳴り響く。どちらかと言うと嬉しいというより、ホッとした気持ちの方が強かった。トーナメント戦のために敗退した瞬間に退場だからな。


「それでは決勝戦までパフォーマンスタイムやこれまでの戦いぶりについて他のプロの方から解説していただきましょう! 虻利拳王はしばらくお休みください」


 とりあえず、決勝進出まですることが出来た。

 いざ試合が始まれば極限まで集中することが出来、予想通りのパフォーマンスを出すことに成功したのだ。


 最初は会場内にどんなトラップがあるのか? とビクビクしていたが、玲姉たちが上手くやっていてくれているのか特に何もなくいつも通りの進行だった。

 そのためにむしろ拍子抜けしたぐらいだった。


 と言うか殺されかけるようなことが連発しているような状況が異常過ぎて僕の感覚が麻痺してしまっているのかもしれない……。


 そんなことを考えつつ、肩を回しながら控室に戻った。


「準決勝の相手は素人じゃねぇんですかい?

最後は虻輝様のキャラクターがノーダメージで圧勝じゃねぇですか」


 僕がソファーに倒れるように座ると、景親がいきなりそんなことを言ってきた。


「まぁ、相手としてはもう追い詰められていたし、0勝だったからやる気が無くなっていたんだろうな。

 ただ、僕はそういう状況でも諦めるつもりは無いけどね。

 圧倒的な状況だと相手が油断していることがあるからね。

 僕はどういう状況で勝っていても最後に勝ちきるまで油断したりしないけどさ」


「虻輝様はゲームの世界大会の王者だけあってマインドは超一流ですな……」


「そんなことも無いけどね。

ただ、FVについては特に“普通に”やっていればまず勝てるゲームだと僕は思っているんでね。

一定以上の余裕を持ちながら戦うことが出来るという面は非常に大きいね」


「噂には聞いていましたが……いやぁ、本当に虻輝様はお強いのですなぁ~。

 8連覇に危なげなく王手とは……」


「まぁ、しかし決勝の相手は少々強い。油断していれば負けかねないので気を引き締めなくてはいけない。

 レーティングでも2位だしね。それでも1000ぐらいレーティングは僕の方が上だけど」


 1勝しても1か2しか上がらないけど、1敗するだけでレーティング50以上下がるから最低でも50連勝ずつしないと上がらないけどな……。


「見て見たら虻輝様が5000ってすげぇな……」


「まぁ、僕はこれぐらいしか取り柄が無いから。何とか死守したいという思いでやっているだけだよ。

 やっぱり勝つ瞬間はどんな相手であれ嬉しいしね」


 景親がしきりに感心していると僕は弁当と水筒を取り出す。


「あ、虻輝様。毒見しましょうか?」


「え、玲姉が作った弁当だぞ?」


「そのあと誰かが毒を入れたかもしれねぇじゃねぇですか?」


「確かにこれまでの抜かりないほどのトラップの数々だと否定できない……」


 それだけ恐ろしい状況に今僕はおかれていることを改めて認識した。

 僕の持っているバッグだって勝手に侵入して毒を混入したとも限らないのだ。


「うめぇー! 虻輝様も食ってくださいよぉ!」


 景親はそう言ってガツガツと食ってから僕に渡してくる――そもそも毒見役はそんなにガツガツ食べない上にそういう反応はしないと思うがな(笑)。


「確か景親も玲姉から弁当貰っただろ? 僕のを平らげられたら流石に餓死するんだが……」

 

 決勝までの時間の間は実は盛り上げるためにいろいろとイベントがある。

 実を言うとそれまで休憩があるのだ。

 シードだと2戦するだけで休憩になるのでとても楽なのでできるだけ、前回優勝者とレーティング1位の兼任のシードが望ましい。


 国内予選から出ると外に出なくちゃいけない上に体力が持たないので(笑)。


「あぁ、そうでしたな。ホント、アイツ強い上に食いもんまで上手なんてチート過ぎるぜ。

あ、俺が食った分を虻輝様に返しますぜ」


 景親はそう言って弁当を取り出す。僕のより3倍ぐらい大きい。景親が食べた分以上に戻してくれた。

 

「ありがと。玲姉は物理的に分裂できないぐらいじゃないか弱点は? この地上の生命体だと思ってたらやっていけないね」


「でもそれを言ったら殺されちまうんですからホント恐ろしいですな……」


「更に言うなら思考するだけでアウトだ。周りにいる人間の思考が流れ込んでくるらしいから、ある意味コスモニューロンと特攻局並みだよ」


 この間の内藤親子救出の一件の際にも20メートル以上上にいても思考を読まれた経験があるからな……。(第4部81話、82話)


「考えることすら許されねぇってやべぇな……」


「特に僕に対してはあまりにも厳しすぎるよな……。

 他の人が言っても怒らないようなことを僕が言うと激高するんだから何がどうなっているのか分からないよ……」


「それは虻輝様が鈍すぎるだけなんじゃ……」


「え? 何がどう鈍いんだ?」


「いや、これ以上は言ってはいけないと言われてますんで……」


「???」


 時間の通知が僕の下に届いた。もう10分を切っていた。


「おっと、それよりもうすぐ時間だ。十分休んだし、行くか。

 いやぁ、しかし今日も美味しい弁当だった。玲姉にはホント感謝しないとな」


 今はそんなことを考えても仕方ないので会場に向かうことにした。

 ゲートまでは目と鼻の先だが、気が付けば時間が過ぎているという事もあり得るので……。


「虻輝様。頑張ってくだせぇ。まぁ、俺が応援するまでもなく勝ちそうですがな」


「ありがとう。でも油断しないことが大事だよ」


 そう言ってゲート前で景親と別れた。


「さぁ、このFVの大会も大詰め! 決勝戦のお時間です!

 まずは青コーナー! イタリア出身! 世界ランキング2位でもあるエミリオ・フェルミ選手です!」


 色白で緑色の眼をしているフェルミ選手は、攻撃的な動きをしてくる。

 何回か対戦したこともある上に、休んでいる間も、景親と雑談している間もどういうキャラがどう来てそれに対してどう対応するのかを色々とシミュレートしていたので対策は万全だ。


「そして赤コーナー! 日本出身! 世界ランキング1位 現在7連覇中の虻利虻輝拳王です!」


 僕の姿がステージに出た途端に ウワーッ! と歓声が上がる。決勝戦という事もあって今までで一番の盛り上がりを見せている。

 この試合で10億単位の賞金が決まる。中には賭けも行っている人間もいる。

 裏で動いているお金はこの試合だけで1000億、凄いときは1兆円以上だ。


 それだけに絶大なスポンサーもついているというわけだ。八百長などの審査についても厳重だ。

 ちなみに、僕は賭けレートは他の大会では1.5とか、この大会では1.02と“賭けがいがあまりない”と言われているが、それだけ勝利可能性が高いとデータでも算出されているので僕としてはこの数値こそが“みんなからの評価”だと思うので極限まで下げて見せたい。


 玲姉たちの方を向いて何かポーズでも取ろうかと思っていた時、玲姉が何故か走り出している!


 更にガランッ! という大きな音が鳴り響いたので何だ? と思って上を見上げると大きな影が一気に迫ってきたのが分かった。


 ってえ――!?


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