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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第5章 南の島で

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第13話 中止にしないための苦労

 私たちの席は前から3列目で正面の大きなステージが良く見えるようになっています。


 こういうのって前過ぎると全体がよく分からなかったりするので、意外とこのあたりの席が一番良かったりもするみたいですね。


 でも、私たちは遊びに来たわけではないのでまだ時間があったために手分けをして問題が無いかどうか確認しました。


 席順が通路側から建山さん、私、玲子さん、まどかちゃんという順番だったので、建山さんからの“圧力”に晒される時間が少なくなるだけまだいいですけどね……。


 30分ほど会場の席やゴミ箱などを見ていき、私と玲子さんとまどかちゃんは特に何も問題が無いという事で一致して取り敢えずのところ一安心と言う感じでした。


 しかし、建山さんがおぼつかない足取りで一番遅れて戻ってきました。


「建山さんにしては珍しく顔色が優れないけど、どうしたのかしら?」


 あの建山さんが“ぐったり”と言った様子で椅子に腰かけて椅子のバネの反発に身を任せている状態は正直驚きました。

 無限のフィジカルとメンタルを持っているのかと思いましたからね。


「……思った以上に驚くべき仕掛けの数々でした。

 このドームの虻輝さんの行きそうなところに様々な殺人トラップが仕掛けられていたのです。

 関係者専用の男子トイレや通路に至るまで爆弾が仕掛けてあり、

 ここは戦場なんじゃないか? っていうぐらい爆弾の解除班も大忙しです」


「爆弾だけでこのドームが吹き飛びそうね……」


「爆弾だけじゃなく、毒物も各所から発見されており、救急車で10人搬送されました。

 正直、色々報告を各所から聞いているだけで疲れましたよ。

 ただ、まだ深刻な被害が出ていないことも良かったですね。

 特攻局の部隊を早々に送り込んだのが幸いしました」


「流石に私たちは素人だから何も発見できなかったのに比べて流石ね……。

 今度マニュアルでも見せて貰えないかしら?」


「機密文章なので公開できませんよ……。ただ、目立ったところには設置していませんね。

 経験のない方が目視で確認することは容易では無いです。

 相手もプロを使ってきている感じがしますね」


 玲子さんでも見つけることが出来なかったのですからよっぽどですよね……。


「設置したのはやはり脅迫状を送ってきたのは赤井さんなのでしょうか?

 この間も並々ならぬ恨みを感じましたけど……」


「未だに分からないですけど、少なくとも主犯である可能性は高いですね。

 特に会場の外で爆発したプラスチック爆弾は先ほども言いましたけど、この間の汎用ロボットに付けられていたのとかなり近い形状でした。

 しかし、あの人は他人を使うのも上手そうですし、隠れるのも上手そうです。

 残念ながら今回も手が届くか怪しいというのが色々捜査していて分かりました」


 物凄く知能犯と言う感じがしましたよね。悪い人ほど他人を上手く使っている気がします。

 虻利家やその対等に位置している勢力は普段は色々な組織に守られていて表に出ることすらありませんからね……。


「小早川君から聞いたけど、誰か“偉い人“から守られているという話みたいね。

 何としてでも輝君を消したいのかしら……」


「虻輝さん本人にはあまり自覚が無いようですが、あれでも影の最高権力者虻利家の当主直系ですです。

 これは私の憶測なのかもわかりませんが、もしかしたらああいう“自由な感じ“を縛り付けるか、さもなくば抹殺することが目的なのかもしれませんね」


「お兄ちゃん……」


「まどかちゃん、暗い顔することないのよ。輝君はきっとそう言う星の下に生まれてきたのよ。

 これまではトラブルに遭遇する回数が極端に少なかっただけで、

 私たちが守ってあげないとダメな子なのよ」


「きっと虻輝さんが魅力的過ぎて嫉妬しているのかもしれません。

 私や玲子さんみたいな最高クラスの女性すらも惚れさせてしまうわけですからね」


 本当に最高クラスの方は自らそう言う発言はされないような気がしますけどね……。


「私が最高クラスなのかどうかは分からないけど、

 確かに好きと嫌いは表裏一体みたいなものだからね。

 逆に言うなら魅力が無さすぎる人は執拗に狙われることは無いわよね。

 輝君みたいな他人に対してあんまり関心が無さそうなタイプだと、他者を攻撃して恨みを買うことも無さそうだし」


「お兄ちゃんはとりあえずゲームが出来ていれば後はどうでもいいと思っていそうだよね……」


 何をそんなに熱中する要素があるのか私には全く分かりませんね……。


「そこが良いんじゃないですか~。分かっていませんね~皆さん。

 あの熱中している真剣な眼差しで私も貫かれたい……。あ、また連絡が――」


 視線が宙に浮いて誰かと連絡を取っているみたいです。建山さんは本当に忙しそうですね。熱弁されても困ったので良かったですけど。

 でも、これだけ色々と仕掛けられているとなると今からでも中止した方が良いような気がしますけどね。


 あの人がそれだけこの大会に懸けていることを考えると容易には中止に出来ませんよね……。

 一番爆弾処理能力が高い建山さんが特にあの人に“ゾッコン“状態になっていますから……。


「ふぅ……いちいち私の指示が無いと動けない部下ばかりで困ります。

 指示待ち人間は出世できないと言い聞かせているんですけどね」


「そうそう、指示待ち人間は自分で考える力が全く無くて本当に困るわよね~。

 自主的に考えて行動してこそ意味があるのに……。

 私も支店長の育成に大分困っているんだから……」


「中々、玲子さんの領域まで到達される方はいないと思いますけどね……」


 玲子さんは見た目の美貌も素晴らしいですけど、精神までも良いですからね。

 精神の輝きが見た目にも出ているのかもしれませんけど……。


「結局のところ自分で考えて行動できる人間以外は最終的には生き残れないと思うのよ。

 時期に誰かさん達が分断と対立を煽って一人ずつになっちゃうと思うからね」


 建山さんは苦笑いをしています。暗に虻利家や特攻局について言っているように聞こえましたからね。


「あの……私は玲子さんについていきますから一人ずつとか言わないでください」


「あたしもお姉ちゃんとずっといる!」


「2人ともありがとう。でも、私もいつ支配者の皆さんに殺されちゃうか分からないからね。そういったことを考慮すると、2人にも誰にも頼らなくていいぐらい強くなって欲しいのよ」


「うん……」


 まどかちゃんは俯きながらうなずきました。私もきっと同じような落ち込んだ顔をしているでしょう……。


「皆さん長らくお待たせいたしました! メイン司会者の1人でもあるお笑い芸人の新藤覇気さんです!」


 キラキラとした服を着た男の人が、何やら奇妙な踊りや回転をしながらステージ中央に現れました。


「何、アレ……」


「どうやら、パンフレットによると去年のお笑いチャンピオンの方みたいね。

 コスモニューロン無いとそういった情報に疎くなるから仕方ないわね」


 ここにいる4人共そういった番組を全く見無さそうなので理解できない……と言った感じでパフォーマンスを眺めています。


 そして選手一人一人が入場して紹介していっています。


「お兄ちゃん全然来ないね……実は出場権が無いとか?」


「何言ってるんですか! 虻輝さんは世界ランク1位で前回王者だから最後なんですよ!

 他の選手とは次元が違うんですから! あのプレイングの価値が分からないだなんて人生損してますよ!」


 建山さんの表情には生気が戻っています。どれだけ好きなんですか……。


「他の選手の紹介をしている途中なんだから静かにしなさいよ……。私たちだけじゃないんだからね……」


「はい……」


 玲子さんの低い厳しい言葉の前に建山さんは小さくなりました。


 建山さんは我を忘れるほどに力説していましたからね……。

 全くステージの方に私たちは注目していませんけど、場内の紹介の演出が結構派手なので私たちが多少騒いでも大丈夫な感じはありますけどね。


 14人の紹介が終わったところで照明が七色に豪華になり、“いよいよ”と言う感じになりました。

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