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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第5章 南の島で

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第11話 即席の爆弾処理法

 私たちはあの人の応援と言うか半ば護衛のような形であまり興味は無いですけどゲームの世界大会を観に行くことにしました。


 朝、玲子さんが一緒に行かない? とあの人に提案した時に凄く恥ずかしがって断っていたのはちょっと可愛く見えましたね。あの人の方が私より年上ですけど……。


「うわ~! 凄い人の数だね~! あたしこういうところあんまり来ないからさ~」


 まどかちゃんはたまに妙に私よりも大人びていますが、基本的には無邪気でとても微笑ましく思いますね。

 

「なんだか人混みだと気分が悪くなるからこういうところにはあんまり来たくないのよね……」


 玲子さんはあまり顔色が優れません。

特に他人の思考が勝手に入ってきてしまいますから、これだけ人が多いと色々な感情が殺到してきているのかもしれません……。


「玲子さんなら、全員吹き飛ばせるのでは?

 全員気絶させて思考を止めさせたら気分も良くなるのではありませんか?」


「そんなことをしてたら人類の敵でしょ? 私がテロリストじゃない。

建山さんは過激よね……」


「建山さんはそのように非現実的で乱暴な発想では意中の方に嫌われてしまいますよ?」


「虻輝さんはむしろ共通の趣味であるゲームができる私のことを評価していますよ。

 皆さんとは違ってね」


 建山さんが挑発的に私たちを覗き込むように見ています。


「ゲームの上手さの良しあしで女性の評価が決まるとは思えないけどね。

 そもそも私は大抵のことなら3日あれば1流のレベルに到達するからね。

 ただゲームを敢えてやろうとは思わないだけでね」


 玲子さんとまどかちゃんは同じように鋭い目つきで建山さんを睨んでいます……。


 それより、もう建山さんは私たちの間では堂々と認めちゃうスタイルに切り替えた感じなんですね……。


「島村さんはゲームの腕前どうなんですか?」


「え……私はそんなに上手くは無いですね。

 弟がゲーム好きだったので小さい頃は付き合わされましたけど……」


 たっちゃんは今頃どうしているんでしょうか……。未だに手掛かりが全く掴めません。

 このまま一生、お父さんとたっちゃんには会えないのでしょうか……。


「まぁ、島村さんはその胸についている2つの大きなモノをいざとなったらお使いになるんで心配は無いのかもしれませんけどね」


「そんな不埒なことをしません。というか、そもそもあの人について好きでも何でもありませんよ!」


 大体、男の人が胸が大きい女性が好きな理由がよく分かりませんよ……。

 本当はこんな脂肪の塊はさっさと切除して軽くなりたいぐらいなんですから……。

 玲子さんが押し止めなかったら間違いなく手術してましたよ……。


「あぁ……男性経験が無いので何をすればいいのか分からないということですか?

 経験があるならその巨大なお山を活用するように男性から頼まれるでしょうからね」


「そ、そんなに言うなら建山さんは経験豊富なんですか?」


「ええ――そして、虻輝さんはいかなる男性よりも優れています。

 その価値が分からないだなんて島村さんは本当に節穴なんですね」


「……」


 これ以上言い合っても不毛な気がします。

 私に男性経験が無いのは事実ですが、建山さんと認識にズレがあってあの人のことに全く興味が無いのも多分事実ですから。


「もぉ~! 言い争ってないで周りをもっと警戒しようよ~! 一応、お兄ちゃんの警護に来て不審者を探そうと思って来てるんだしさ~!」


「は、はい……」


 私も建山さんもまどかちゃんに言われてハッと気づきました。本当に無意味な言い争いを続けていました……。


「うわぁぁぁぁぁ!!!!! コイツは!!!!!」


 私たちは言葉なく順番待ちをすることにすると、突然大きな声を出す人が出ました。


「行くわよ!」


 玲子さんが率先して飛び出すと私たちも続きました。


「どうしたの!?」


「こ、これを見てください……!」


 男の人が震えている指先には、数字が減っていきその先には爆弾らしきものが付いている爆弾がありました。

 その数字ももう20を切っています!


「貸して!」


 玲子さんが奪うようにバック取ると、ビュンッと空中上に投げ飛ばしました。

 その細い腕から繰り出されたとは思えないほどとんでもないスピードでバックは30メートルほど上空に投げ出されました。


「みんな伏せて!」


 私は玲子さんに言われるまま頭を隠すようにして伏せました。

 するとドーンッ! と大きな音を立てて何かパラパラと破片が飛び散るような音がしました。


「ギャー!」 「目ガー!」 「爆弾か!?」


 皆目を抑えたり、肩を怪我したりしています。恐らくはプラスチック爆弾か何かでしょう……一気に阿鼻叫喚の地獄絵図になりました。私も玲子さんの指示が無ければああなっていたかもしれません……。


「金属片に近いモノだから服についたのも素手で振り払わないで。この手袋を使って?」


 玲子さんは白いゴム手袋を渡してきました。品が良く花が手首の辺りに描かれています。

 建山さんは玲子さんに渡される前に自分で手袋を出して破片を振り払っていました。


「至急、大会運営者を呼んで! 中止の要請をしましょう! この他にも爆弾が仕掛けられているかもしれません!」


 建山さんが先ほどとんでもない言葉を連発していたのと同一人物とは思えないほどまともなことを言っています……。表情もかなり引き締まっていますし本当に別人のようです……。


「皆さん、とんでもない事件が発生して申し訳ありません」


「私は特攻局テロ対策関東総支部長です。テロ行為とみなし本大会を中止を要請します」


「え……ですがしかし……」


「人命には代えられません。テロ活動は国家転覆の可能性もありますし」


「あの……ここだけの話なのですが、会場内でも選手への殺人未遂の事件が起きたのです」


「えっ!? 犯人は捕まりましたか?」


「自動でボーガンの矢が放たれたために犯人は捜査中です」


「それなら尚更、中止を要請します。強制しても構いませんが? 1週間後にズラすとかできないのですか?」


「実は、殺されかけた大会参加者というのが虻輝様で、どうしても大会を開催したいとご意向がありまして……」


 太平洋の調査はどれぐらいの時間がかかるか全く見通しが立ちません。

 そうなると1週間後にずらした場合、あの人は参加できなくなるでしょう。

 建山さんもそれを考えているのか、押し黙って額に手を置いて考え始めました。


「分かりました。開催は許可します。この爆弾事件についても何とか隠すように。

 でも、死人が出た場合には流石にその場で中止しますのでご理解ください」


「しょ、承知いたしました……」


 大会運営者が急いでどこかへ立ち去ると玲子さんがニヤリと笑いながら建山さんを覗き込みました。


「あらぁ~、建山さん。輝君のために忖度していいのかしら~?」


「問題ありません。絶対に守って見せますから。

 この爆弾はパッと分析したところこの間の赤井綱利が巡回ロボットに装着していたものと同系統と思われます。

 今度こそ捕まえて汚名を返上するチャンスでもあります」


 建山さんの眼には炎すら見えます……。確かに主犯を逃してしまったというのは最大の失態でしょうからね……。


「そうなると赤井って人はこのあたりに潜伏してるのかなぁ?」


「まどかちゃん。前回の赤井君との戦いを見ても、結構お金を使って他の人を雇っているから本人が動いているとは限らないわね」


「それでも、赤井の尻尾を掴めるかもしれません。特攻局も事件性ありと言う評価なので、本格的に人員を呼び寄せます。この広いドームに今は私含めて3人しかいませんから」


 遠くから救急車と警察のサイレンが近づいてきて、

一気に物騒な雰囲気になってしまいました。

 

 やはりあの“予告状”通りあの人が棄権しなくてはこういったテロ行動は続くのでしょうか……。

 私たちも警戒を怠らないで過ごしていかなくてはいけませんね……。

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