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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第4章 反成果主義

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第34話 方針決め

「虻輝様、今日はどこにいきますかい?」


 まどかと島村さんと別れたところで、景親がそう聞いてきた。

 宛もなく飛行自動車をとりあえず、安全なところで低速で走らせている。


 飛行自動車は自動運転同士で制御しあうために適当に高速で走らせても良いのだが、

 飛行自動車同士や、飛行機、ヘリコプター、気球その他の飛んでいる物体とぶつかるリスクを下げるために、意外と空も自由に飛んでいいわけでは無く“大体の順路“というのが決まっている。

 そのために、とんでもなく大回りになってしまうことがあるのだ。


「昨日はEAIが日本宗教連合と協力を模索していると言うことが分かった。

 今日はその日本宗教連合に聞き込みをしようと思う」


「しかし、本音で話してくれますかねぇ? 俺たちが行ったら間違いなく警戒してくると思うのですが……」


「うーん、確かに……それじゃあんまり意味が無いのかもな」


 あまりにも自分の考えが短絡的だった。無駄足だと時間がもったいないし、ただ疲れるだけなので、すかさず為継に助言を頼んだ。


「為継、また大丈夫か? 仁科さんの中間報告はお陰様で多分大丈夫だったんだけど……今日どうしたらいいのか分からないんだ」


「報告が無事に済んだのでしたら何よりです。

そうですな。特攻局のデータで検索してみましょう。

 彼らが本当に頻繁に交流があるかどうかは、過去1年分の衛星管理システムでEAIと日本宗教連合で出入りをしている人達の顔認証を行い、同一の人物が周辺施設まで広げればたとえコスモニューロンを彼らが入れていなくても分かるでしょう。

 数分お待ちください」


 恐るべき衛星管理システム。そこまでデータが蓄積しており識別が可能な上に検索までものの数分でできるとは……。

 彼らはコスモニューロンを導入していないために思想管理までは出来ないが、行動管理までは出来てしまえるのだから恐ろしい。


 飛行自動車の窓の外をゆっくりと流れるよどんだ雲を見ながら虻利家や特攻局の恐ろしさを感じた。


「お待たせいたしました。確かにデータで見て見てもそれぞれの本部の近くでの両者の遭遇がここ半年ばかりで増えていることが分かります。

 そうなると、何かしら交流があることは間違いないでしょう」


「EAIと日本宗教連合の関わり合いについて何かそれ以上に調査する方法は無いか?

 直接出向くと警戒されると思うんだ」

 

「おっと、会話をしている間に次の結果も出ました。

日本宗教連合の近くのカフェやパブでEAIと日本宗教連合で出入りしている人物たちが共通しています。

 ここがたまり場になっている可能性が非常に高そうです。場所の位置は景親に送っておきますので、出向いて聞き込みされてみられると良いでしょう。

 また何か新しい分析結果が出ましたらお知らせしますのでお待ちください。」


「なるほど、それはとても良い情報だ。ありがとう」

 

 為継はこういう時はとても頼りになる。逆に敵に回したら本当に恐ろしい。僕のデータも何もかも握られていると言っていい。いざと言う時は為継をどうやって出し抜けばいいのか今から考えなくてはいけない――考えつくか知らんけど(笑)。


「よっしゃぁ! 虻輝様! 行きましょうぜ!」


 目標が決まった途端、唾が僕の頬に吹きかかるほどの気迫で景親が叫んだ。

 最近玲姉から渡されるハンカチはかなりの頻度で僕の顔にかかった景親の唾を吹くことに使われている気がした……。

 あ、相変わらず、元気があるのは本当に良いことだ……。


「こっちは仁科さんに連絡する。わざわざ来ていただいたんだからな」


「俺は運転に集中しますぜ」


 めっちゃ連絡したくはないのだが、わざわざ来てもらったわけだし、形式上仕方のない事だった。



 仁科さんにはすぐに繋がった。むしろ繋がらないで欲しかった……。


「あの……仁科さん。虻利虻輝です。本日の中間報告はいかがでしたでしょうか?」


 僕の印象としては大した会話をしていなかったようだが、だからこそ意図が読めなかった。

かといって意味が無いことはやらないから、気持ちが悪いぐらい不気味だった。


「ええ、“真面目”にやってくれているようでとても満足しています」


 ふと、やはり島村さんについて様子を見ているのではないかと思った? この間の父上との護衛の件(第2部54話―78話)で多少はプラスには働いただろうが、暗殺までしようとしたんだからな……。(1部9話)


「は……はぁ。僕が心配しているのは島村さんがまだ特攻局に警戒されているのではないか? と思っているんですね。

 僕としては11月2日までの父上の護衛の件で信頼していいと思うのですが……」


「実を言いますと一つはその一件で伺いました。

 しかし、虻輝様は流石ですね。暗殺までしようとしていた娘をあそこまで飼い慣らされるとは。

あの建山さんが注目されているだけのことはあります

自信も相当あったようですからな」


 いったい何を勘違いしているのか知らないが、僕がむしろ島村さんに飼い慣らされているだろ……。

 オーラだけで人を殺しそうな感じは確かに無くなったけど、あの状態のままだと本人も苦し過ぎだからな。

 しかし、“勘違い”によって島村さんの立場が大丈夫そうなのは安心材料だと言えた。


「僕としても本当に大変でした。いや、今も大変なんですけどね(笑)。

ところで、本題のEAIについてはどうなんでしょうか……? もちろん言える範囲で構いませんが」


「そうですね……。詳しいことは言えないですが、特攻局は『非生産的な活動はしない』ということです。建山さんは特にそういうお方です」


「な、なるほど」


 為継の言っていた印象通りだった。あの特攻局で史上最速で出世しているんだ。


「虻輝様たちは私たちの指示通りに“調査”してくだされば問題ありません。

 正直なところ会話そのものは全て分かるわけですが、“人格”まではやはり直にお会いしなくてはいけないと思ったのです」


「確かに直接会うことで何か掴めることはありますからね」


 確かにチームABUTERUにおいても直接会った時のほうが、VR空間で会議をするよりも生産的な会話になるし、まだ現代科学では感知できない人間から発する“オーラ”のようなものが無意識のうちに発せられそれぞれコミュニケーションをしているのだろう。


「機密なので詳しいことは言えませんが、虻輝様が“懸念されていること”はあまりないと思われていいです。

 引き続き捜査をお願いします」


「なるほどありがとうございました。また何かありましたらご指導お願いします」


 連絡が終わると僕はシートに深く腰掛けた。

 とりあえず、最悪の事態は避けられたが心身がボロボロになりそうだわ……。


 もう死んだように寝たい――と思った瞬間、飛行自動車が停止する。


「虻輝様。着きましたぜ」


「ああ、こっちも連絡終わった」


 休む間もなくあっという間に目的地についてしまった……技術が進化しすぎるのも考えものだなと思った。

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