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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第4章 反成果主義

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第20話 非連携希望

 輝成は聞き込み中だったのかすぐに応答はなかったが、為継は直ぐに返事が来たので会話することになった。


「なるほど、内藤大樹の話は興味深いですな。そして虻輝様の対応も“らしいな”と思いました」


「あっ、そう?」


「ええ、何だか現実を見せつつ突き放しつつもフォローしてあげるところがとても“らしい”です。

それで内藤大樹は具体的に何の適性が高そうなのですか? 仕事を斡旋しようにも、適性が分からなければ与える仕事の種類も分かりません」


「あ、確かにそうだね。全く考えてもみなかったよ(笑)」


 虻利家は実力社会を作り上げようとしているから無能な人間を置いておく場所などどこにもない。

 だが、“無能だというレッテル”をAIなどの管理システムで張って完全に階層社会にしてしまっている。それは大いに問題だが、敢えてそう言った人々を作り出している感じはある。


「今度話す機会があれば聞き出しておいてください。

あとはXと呼ばれる人物についてですが、私も虻輝様の意見に近いものがあります。あまり期待も出来ませんが突破口になる可能性もあると思いますね」


 視界に入るところに大樹がいる。炊き出しを受け取るために並んでいるようだ。この連絡が終わったら早速聞いてみよう。


「やっぱりか。こうなると輝成や僕の聞き込みというよりもまどかと島村さんの潜入捜査の方が成果が出そうだな」


「それについては本当に期待できるのでしょうか……どうにも正直に報告してくるようには思えないのですが……」


「ふぅむ、そう思うか。出来れば交流もしたくないんだが……」


「ええ、そもそも島村知美という女性は信頼できないと思っています。本当のところは虻輝様に身の危険が生じる可能性があるとすら思うので、傍に置いておくことすら反対したいです」


「僕もそう思ってたんだよ。いやホント島村さんとは水と油、犬猿の仲で全く相容れないからね。ただ、玲姉がどうしても僕と島村さんとをペアにしたがるんだよね。

 何を意図しているのか教えてくれないから正直どうしようもないんだけど……」


「柊玲子については逆らうことを許さない雰囲気がありますからな……」


「実際強いんだから仕方ないよね。まず理論で圧倒してくるし、無理やり逆らったら実力行使されるよ」


 それで何度、“気が付けばベッドの上”にいたか分からん(笑)。


「……私も命が惜しいので敵に回したくないですな」


 このように頭で想像しただけで反抗する気力すら無くさせるなんてとんでもなく恐ろしい抑止力だ……。


「どうしたら、島村さんから話を上手く引き出すことが出来るんだろう」


「そうですな。100%は難しいにしても、何とか利害が少しでも一致する点を探したいところです」


「僕が感じる所によると、島村さんが積極的に潜入捜査をしているのは自身の家族が関わっていないかどうかを調べるのではないかと思うんだよね」


「なるほど……そうなると恐らくはそれ以外については興味があまり無いのでは?」


「その可能性はある。後は当たり障りのない適当なことをまとめてきそうだな。島村さんも結構頭が良さそうだから……」


 僕と違って真面目で勉強もできるしね……。


「ただ、僕なりに島村さんの家族のその後について調べてみたんだけど消息が掴めないんだよね。元々島村さんのところがコスモニューロンを使っていない上に獄門会にでも入られたらもう足取りが分からない」


「ふむ。どのデーターベースでも同じのようですな。そうなるとその線から連携することも難しそうなのですな」


「そうなんだよね。『情報がある』とか言って嘘で騙すのも気が引けるしね。ただね、一つ勘違いしないで欲しいのは島村さんは僕に対して当たりが滅茶苦茶厳しいだけで凄く良い子で本当は優しい子だと思うんだよね。玲姉と同じように崇高な理想を持っている感じだし」


「時には騙すことも必要だとは思いますが……虻輝様はお優しいですな」


「何かどうにも、嘘を吐いている時って体が拒否反応を示していって“嘘だ”ってすぐにばれちゃうんだよね。

 玲姉からの教育のせいなのかもしれないけど……」


「何だかわかる気がしますな……。

 柊玲子の言動を見聞きしていると、言葉だけでは無いというのは私にもわかります。

 そう言う正義感に溢れた人物に影響されていることを考えると、島村知美に対しては、EAIに所属している人間が危ないと伝えることが大事かなと思いますな」


「当初の予想通りEAIは危ないか……情報によれば2000人から3000人ぐらいの規模らしいが、すぐに特攻局が動かないということはその被献体を得る以上の目的があると言うことか……」


 言いながら大王の顔がすぐさま脳裏に浮かんだ。本当に『人類半神化』のためには手段を選ばないからな。特攻局と連携をして一体何を考えている……。


「ええ、ただ元から申し上げている通り何かしら他に意図があるように思われます。

 何かしらこの潜入作戦に裏の意図が無ければ意味がありません。

 ただ、今のところあらゆるツールで分析して考えてみてもまだ見えてきません」


「確かに僕の方も見えないな。何かきっかけがあればいいが」


「やはり潜入側からの情報が無ければお話にならないです。

 理解と協力が大事になりそうですな」


「理解と協力ねぇ……あまりにもお互いの生い立ちやこれまで歩んできた人生が違い過ぎるからな……。僕もなるべく円滑に交流をしようと努力をしているつもりなんだけど……」


 島村さんなら自分が調査している団体が危ないのならば放っておかないような気がする。


「今回の一件での短期的な結果は振るわなかったとしても、理解を試みるだけでもゆくゆくは効果があるかもしれません」

 

「確かに玲姉がウチに住ませることを許可している以上は、この問題はいずれ再燃する。

 まだかなり怖いけど、何とか出来るだけのことはやってみせるよ」


「ええ、虻輝様の誠意は必ず伝わりますよ。

あとは、島村知美が変な動きをしないと良いですな。虻輝様が折角お体を張られて救ったのが無駄になります」


「確かに、島村さんは自分の正義を守るためなら父上だって殺しに来る命知らずだからな……」


 その決断力と行動力は脱帽するけどね……。僕もできるだけ島村さんのことは守ってやりたいが、あまりにヘタなことをされたら擁護しきれないからね。


「もっとも、私は島村知美に関して信用しておりませんので、虻輝様もあまり彼女については入れ込み過ぎない方が良いかと思います」


「ああ、頭の片隅には入れておくよ」


 そう言った感じで為継との通話は終わった。

 ふぅむ、ⅹも決定的な手掛かりにはならないかもしれないな……。


 しかし、EAIの存亡といい、特攻局の真の目的といい島村さんのことといい様々な問題が混在している。またしても、気が滅入ってきた……。

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