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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第4章 反成果主義

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第4話 思わぬ聞き込み結果

 景親を周辺の警戒に当たらせてからは比較的順調に聞き込みは成功していった。

 しかし、馬場さん宅で聞いた以上の内容は得られない。そんなこんなで気が付けば空はオレンジ色になりつつあった。


「虻輝様、俺が付いていかなくなってから、お話が順調そうで何よりです」


 一区切りついたのを見計らうかのように景親が半ばイジケながら話しかけてきた。事実上の戦力外通告を喰らったのだから仕方ない。


「まぁ、それぞれ人には得意不得意があるからな。景親は僕に危機が迫った時に確実に僕を守ってくれればいいよ」


 景親が近くにいるだけで低級の悪人は近寄って来ないのは間違いないだろう。

 戦力としても一般人レベルの僕よりかはずっと上だし、玲姉が来るまでの時間稼ぎには絶対になれる。


「ありがとうごぜぇます。虻輝様の言葉はいつも俺の励みになりますぜ」


「しかし、話を引き出せているのは良いんだが……」


「虻輝様、浮かない顔をされていますな。EAIについてはどんな風に話していたんですかい?」


「うん、それがね。特攻局が警戒している組織という感じは全く思わなかったな。EAIについてプラスのイメージばかりの話を聞かされたな。

主に地域コミュニティに参加していて、むしろ信頼されている印象すら受けたな」


「ほー、それは意外ですな。てっきり獄門会のように見るからに危険な組織かと思いましたぜ」


「ふぅむ、そうなんだよね。僕もてっきりそんな感じだと思ってたけどね。

勝手な思い込みのイメージだけだったみたいだね。実地調査は大事だなってわかるよね。


でもよく考えてみれば、このように『EAI本部200メートル』とか町中に堂々とあるということはそれなりに上手くやっていて尻尾を出していないということなんだろうな。


 そうじゃなかったら特攻局がとっくの昔に検挙している。それができていないということはなかなかでっちあげることすら難しいということなんだろう

だから僕達に頼んできたんだ」

 

 この街のいたるところにEAI関連のデジタル看板が立っており一定の認知度があることが分かる。あからさまに危険な組織なら流石にこんな風に堂々としていないだろう。


「なるほど、決定的な証拠を特攻局は探しているんでしょうな」


「こうなると、僕たちの方ではあまり収穫は期待できないかもしれない。この感じだと少なくとも外向きにはうまくやっている可能性が高そうだからな」


 思ったよりも、内部規律やガイドラインがしっかりしているのだろう。このまま聞き込みをしていてもあまり意味を感じられなかった。


「やる気が下がりますなぁ」


 景親は欠伸をした。辺りを警戒したりしてはいるが、基本的には何もしていないも同然なので暇だというのは良くわかる。

 僕みたいに少しでも時間があればゲームをしているような奴でもなさそうだし、かといって得意の木刀を街中で振り回していたら危険人物だ(笑)。

 暇をつぶす方法もあまり知ら無さそうだからなぁ。


「だが、このまま何の成果も挙げないと玲姉に何を言われるか分からないからなぁ……それに、まどかと島村さんがまともに収穫を報告するとは限らないし」


 完全にサボるのはホント僕の命にかかわりそうだからな……玲姉は思考を読んで来るから全く隠すことが無意味なわけだし……。


「それはどういうことですかい?」


「特に島村さんに関しては反虻利の考えから脱していなさそうというところがまず1点。

 特攻局からは以前監視されていたそうで、良い思いをしていない。

 次に僕について信頼していないこと。このことからEAIについて不利な情報が出てきてもきちんと報告してくるとは限らないということだ」


「なるほど……確かに、あの女は虻輝様に敵視の視線を向けている印象は俺も受けました」


 昨日は一応は心配そうにしている感じを見受けられたので、僕的には少しイメージが変わった。

 景親は父上を含め各方面への連絡を取っていてくれたので、そんな余裕も無かったのかもしれない。


「これでも以前よりかはマシになっているがね。最初の頃は“親の仇”を見る目で見ていて僕の体に穴が開きそうだったよ。まぁ、そう言われても仕方が無いけどね。

 まどかは僕の妹ではあるけれども、島村さんと仲がいいからなぁ。そうなると、2人の報告は毒にも薬にもならない報告しかしてこない可能性もある。コスモニューロンに繋いでいないなら嘘を吐かれても分からないし」


まどかは素直で分かりやすいから嘘を吐いているかどうかはすぐに分かるが、流石に内容までは分からんからな……それでも僕に対してムスッと常にしている島村さんよりかはマシではあるが。


「ということは、俺たちで一定の成果を挙げないと何も成果が出ない可能性が高いと?」


「僕はなんとなくそう思う」


 景親は頭を抱えながら少し考えている。僕も正直、潜入捜査をしていない側が成果を出せるとは思っていない。このまま不毛な状態で期日を迎えかねなかった。


 とはいえ、僕としてはそれでもいいけどね。こんな会話をしながらeスポーツしているぐらいだからね(笑)。今日は好調で45連勝。公式レーティング合計60ぐらい上がったわ(笑)。


「そうなると……俺達では周辺住民に聞きまわることが1週間ではできないかもしれませんな。ここは輝成も参戦させますぜ。アイツは聞き込みに関してはプロですからな」


「なるほど、僕よりかは遥かに効率よく聞き込みをやっていきそうな印象はあるな。当たりも爽やかだしな。折角だから特攻局や警視庁に直接お願いして、業務として担当してもらうようにしようか」


「流石は虻輝様。それは良い機転だと思いますぜ」


 正直なところ、EAIについて全く興味が無いので輝成に丸投げしてサボりたいところである(笑)。

 幸い、輝成とはすぐに繋がった。


「昨日はとてもお世話になりました。虻輝様のプレイングは本当に参考になりましたし、何より現実世界がこんなにも素晴らしいとは思いませんでした」


「いやぁ、こっちこそ輝成に助けられたよ。こっちもプロとして危機感をいだいたね(笑)

 僕もこんなにリアルの大地や空気を感じたのは無かったね」


 生きた心地がしない局面があまりにも多すぎたからな……。

 今日の活動が不毛だと感じられるのも生きているからこそだと言うことを忘れてはいけないだろう。


「ところで、今日連絡したのは、早速次の案件が舞い込んできたんだけど――」


 輝成に対して、今日ここまでの流れを説明した。


「虻輝様は何故かいつも何かに巻き込まれている気がしますね」


「僕もそう思うよ(笑)。最近は特に尋常では無いペースだね(笑)」


 正直、ついこの間までは世界大会の現地開催以外は全く外に出なかったぐらいだった。

そんな中、ターニングポイントは2つあった気がした。

 1つ目は島村さんが父上を襲撃した日。

 2つ目は海外に逃亡に失敗したこの2日に何か運命が決まったような気がする……。


「聞き込みは得意分野です。是非ともEAIの実態調査に協力させてください。虻輝様の要請なら特攻局を経る必要があると思いますが、警視庁も快く応じてくれると思います」


 正直、僕が頼りなさ過ぎるのと、景親が怖すぎて2人いても効率が2倍になっていなかったことを考えると、輝成の参戦は実質戦力が何倍にもなることを意味する。

 聞き込みのプロでもあるし、また玲姉とは違ったアドバイスが期待できると思った――本当は全部やってくれると嬉しいんだけどね(笑)。


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