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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第50話 明朝の決意

 2055年(恒平9年)11月4日木曜日


 ハッと目が覚めた時はまだ暗かった。夢は見たような見ていないようなボワーッとした微妙な感じだった。しかし、頭はスッキリしており、思ったよりもよく寝れたような感じがする。


 寝ていた場所が遊技場だと分かった時、まだゲームの中に閉じ込められているのだと理解した。

 周りを見回してみると皆はまだ寝ているのが見えた――それと同時に安心もした。パッと見た感じで生きているようだ。

 

 昨日のゾンビのようになってしまった他のプレイヤーが脳裏に浮かんだ。

――あのおぞましい姿について思い起こしただけでもここにいる誰もああいう風にしてはいけないなと改めて決意した。



「あら、おはようございます。早いんですね?」


 そんな風にボーっと考え込んでいると、気が付けば建山さんが起きていた。

音もなく僕の隣にいたので正直言って心臓に悪かった。玲姉といい僕の周りにいる女性は気配を消すプロばかりだ(笑)。


「あ、おはよう。とりあえず状況は何も変わっていなさそうだね。

 これが良い事と捉えるか悪い事と捉えるかは何とも言えないけどね……」


「そうですね。なるべく前向きに捉えたいですね。

 寝ている間にウイルスやNPCにやられていないだけかなり良いと思いますよ?」


「その上に、異常なことが立て続けに起きているだけあって突然僕たちのゲームのデータが吹き飛ばないとも限らないからな

 今意識があるだけ本当にありがたいと思わないといけないね」


 そんなことを建山さんと話していると、僕の隣でもぞもぞと動きがあった。


「おはようございます。これは虻輝様失礼しました。私の方が遅く起きてしまうとは……」


 と頭を搔きながら輝成が謝罪するがまだ5時台である。僕が起きたのがあまりにも早過ぎたのだ。


「いや、大丈夫。僕たちが異常に早いだけだ。今日も長い1日になりそうだな……」


 短い1日だとそれはそれで死んでいるだろうから問題だがな


「何とか今日中に片付けたいところですね。私も色々と処理しなくてはいけないことがありますからね

 上手い事、テロリストを捕まえることができたなら、仕事も減るかも分かりませんが」


「僕は次のeスポーツの世界大会まで比較的日程に余裕はあるが、いつまでも起きなくては玲姉に怒られそうだからな……」


 玲姉やまどかがキレて叩き起こしかねないからな……リアルの体がとても心配になる。

 場合によってはしばらく起きることができなければ、あらゆるリアルの出来事に僕ですら影響が出かねない。


「ええ、こんなところで倒れるわけにはいきませんからね

 そんなに脅威に思われる玲子さんと言う方についてかなり気になりますがね……」


「うーん、簡単に言えば建山さんと別パターンで綺麗で強い感じかな?」


 最近、美人コンテストを開催しているのか? と思えるほど美人が僕の周りに集結しているが、玲姉はどちらかというと中東っぽい感じの美人だが、建山さんはどちらかと言うと和風だけど目がぱっちりしている感じの美人と言える。


「私も玲子さんの戦いぶりを見ましたが、驚愕しましたよ。あれは人間技とは思えません……」


 輝成は恐らく景親との戦いについて言っているのだろう。あれはかなり“遊んでいた”感じがするから本当はもっと恐ろしい程の強さだが……。


「――そんなにお強いのでしたらいつかお手合わせ願いたいですね」


 建山さんの眼がキラリと光った戦闘狂ならではの対抗意識だろう……。玲姉も負けず嫌いだし“同族“と言う感じがした。2人から『一緒にしないでくれ』や『戦いが好きなわけじゃない』などと反論されそうな気がするので絶対に口に出さないが……。


「あ、皆さんお早いですね。おはようございます。何とか無事に夜を越せて良かったぁ……」


 工藤君も目をこすりながら起きてきた。まだ非常に眠そうだ。


「オレもよく眠れた。今日コソは敵を一掃しないとナ」


 里山も鎌を持ちながらモソモソと起き上ってきた。


「いや、ホント最悪意識が寝たまま戻らない可能性もあったから皆無事そうで良かったよ」


 寝るたびに一人ずつ起き上って来ないとか明確なタイムリミットが無いだけまだマシと言える。肉体的な補助に関しては為継とかを信じているので、きっと何とかなるだろう。


「昨日の虻輝さんのお話からすると、ゲーム内に主犯格が潜んでいるという話でしたが――手掛かりがあまりにも無さ過ぎますよね?」


「そうなんだよね。かと言って漠然と動くのも何だか問題な気がするしね」


「虻輝様、NPCってどこから湧き出ているのでしょうか? 各ダンジョンから来ているのは分かるんですけど、どこかでシステム統括していると思うのですが」


「過去のこれまでのゲームではそのタイプが多いのだが、為継からの情報だとこのヴァーチャリストはかなりの分散型のシステムらしく、どこかに大きく依存して統括していると言うことは無いみたいなんだよね。

 それにもかかわらず、こうやってゲーム全体で異常が同じように出ていると言うことが頭を悩ませているみたいなんだよね」


「ほぅ……そうでしたか。私の勉強不足でした申し訳ありません」


「いや、エンジニアや具体的に調べてみないと分からないことだ。僕もついさっき知った(笑)。だからこそこのゲームに主犯格が潜伏している可能性が高いと言うことなんだよ」


 為継がマメに分析した情報を僕が起きたのを見計らって次々とくれるので非常に助かっている。

 しかし、知れば知るほど改めてこの状況の複雑性が分かっていく。特攻局や科学技術局でもトップレベルの実力を持っているのではないか? と思わせるだけのスキルを持っていると言える。


「しかし、特攻局顔負けのスキルを持っているというのは驚異的ですね。

 私も一定レベルのスキルは持っているのですが、それでも複数方面をカバーすることは出来ません」


 建山さんの言う通り本当に驚異的な能力の持ち主と言える。

しかしここで、不思議なのが反虻利家の旗頭である獄門会はコスモニューロンを断ち切っているためにそれだけの技術者を自前で育成して抱えている可能性が低いと言うことだ。

 そのために、技術者を引き抜いた可能性が高いと言うことを意味している。


 僕がそのことを呟くとすかさず輝成が反応した。


「そうなると、獄門会と少なからず接点がある人物が怪しいと言うことですか?」


「そうかもしれない。為継にも伝えておこう。

 為継の調査も大事だがこうして僕達が立ち止まっているというのも何だか歯がゆい気がする。

 今日も動いていく方向で良いだろうか?」


「ええ、何か異常が出ない限り動いた方がいいでしょう。私たちの命はやはり私たちで掴んでいく必要があります」


 建山さんはとにかく積極的で力強かった。とにかく引っ張られるような感じだ。


「為継のデータ解析でも中々掴みにくいのが難点ですがとにかく手掛かりを探すしか無いですな」


「なるべく見晴らしがよく、ポジション的に高い場所から様子を見ていこう。何か新しい気づきがあるかもしれないからね」


「そうですね。行きましょう!」


 この遊技場を含む街が見渡せる丘に向かうことにした。

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