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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第46話 血に群がるNPC

 取り敢えずはまずこの“最高装備“の切れ味を確かめていかないとな。

 見た目は素晴らしいがこのゲームが滅茶苦茶になりつつある以上、見掛け倒しのナマクラと言う可能性も十分あり得る。


「皆、動きやすさとはどう? 僕は俊敏に動けそうだけど。特に輝成は大丈夫?」


「ええ、重みは確かに以前の装備と比べれば格段にありますが、何もないよりかは頼りになるかと」


「効果があまり感じられず重すぎるぐらいなら為継に言って替えてもらった方がいいかもな」


 輝成は特に見た目からして重そうだからな……。為継に頼めば一瞬でこのように姿が変わるのである意味気楽に頼むことができると言える。


「行きましょう! 早く助け出すことができれば仲間も元に戻るチャンスがあるかもしれません!」


 工藤君はそう言いながら全速力で走り出している。僕達も彼の仲間を救いたい気持ちは一緒だ。

 しかし、あまりにも勢いよく走り出し過ぎたせいか、あっという間に工藤君は息切れをしたためにものの数秒で追いついた。


「まぁ、落ち着けって。焦る気持ちも分かるが、この戦いは結構腰を落ち着けての長期戦になりかねない。

君のリアルの体も心配だ。良ければ住所なども教えてくれないか?」

 

「は、はい……ちょっと冷静になります。スミマセン……。

 ちょっと今からデータをお教えしますね」


 工藤君はプロフィールデータを一部開示してくれた。

 多分だけど為継がハッキングして調べれば一発なんだろうけど、本人の許可なく勝手に進めてしまうのは僕の気持ち的には抵抗感がある。


「ありがとう。為継に伝えておくよ」


 為継に対して工藤君の体についてもケアしてくれるように連絡をしておいた。


「虻輝様、アレは何でしょうか? NPCの集団がある1点に集中しつつあるのですが……」


 屋上からは遠くがよく見えるが、確かに輝成が言うようにヴァンパイアやドラゴンと言ったNPCボス達が特に殺到している場所があった。


「……こちらにも気づかず一心不乱に向かっているようだから、ちょっと様子を見ながら後を追ってみよう。アイツらで試し斬りをしてみるのも良いと思う」


 目の前をヴァンパイアのようなNPCがこちらに見向きもせずに通過していったのを見て僕はそう結論付けた。


「分かりました。今のところ手掛かりがあまりにも少なすぎますからね」


 3人も同意してくれたようなので、ゆっくりながらも後を追うことになった。

 取り敢えずは、遊技場の入り口の封鎖していたところを一部取り崩して外に出ることになった。


 完全に油断することは出来ないが、NPCがこちらを完全に無視しているので、余裕を持って移動することができた。


「虻輝様! あちらをご覧ください! 人が戦っています!」


 銀髪の男が完全にNPCに囲まれて、血塗れで虫の息の状態だ!

 僕は走りながら抜刀した。


「虻利流抜刀術!」


 ツノガ生えた牛のようなNPCの背中を斬りつける! 流石に大きくダメージを受けたためかこちらを振り返った。

 赤い眼と鋭い牙が特徴的なボスだった。


「これでトドメです!」


 建山さんが以前よりもはるかに大きい風魔法を放ちあっという間にボスは消滅した。


「とうっ! やはり、先ほどまで装備していた武器に比べると使い勝手が違いますね」


 輝成は拳を放つと自動的に刃が出るような武器を身に着けており、相手をあっという間に吹き飛ばしていった。


「そ、そう? 僕は技を放つたびに体が悲鳴を上げていっているんだけど……」


 どうにも動きに関しては悪いとは思わないのだが、腕や足のダメージがドンドン深刻化しているような気がする……。

 建山さんと輝成が次々と敵を粉砕して言っているので非常に助かっている感じがある。


 後ろを向いているボス達を蹂躙しているだけなので体勢を立て直す時間的猶予があるのが非常に助かるがこちらが包囲されている状態だとあっという間にやられていそう――しかも、僕だけがね(笑)。


「君、大丈夫か? 血塗れみたいだけど……」


「まだ、大丈夫みたいです。NPC化していたらもう理性とか関係なくこちらに攻撃を仕掛けてきますから」

 

 工藤君がそう解説してきた。なら、大丈夫だろう。


 周辺にいた約20体ほどの敵をとりあえず全て倒すことができた。

 銀髪の男の周辺には血溜まりが出来ており、もう青息吐息と言う感じではあるのだが辛うじてまだ大丈夫と言った感じだ。


「ああ……ナントカナ。お前たちが来てくれて助かった」


 どこかしら偉そうな口調が気になるところではあるが、一応はお礼を言ってきた。


「血が出ていますね止血をして最低限の応急措置をしておきましょう」


 建山さんが気が付けば自分の服を破っており、それで銀髪の男の腕を縛っていた。

 一連の動作は非常に流れるように行っており、非常に手慣れているようにも感じた。


「新たな敵が迫ってきているようだ。なるべく早く移動したいが大丈夫か?」


 僕は輝成に向かって言った。

ギャオース! という雄たけびと共に今度は大型のドラゴンや翼を持った悪魔のようなNPCが滑空しながらこちらに向かってきているのが見えた。


「任せてください。出来るだけ早く運んでみます。先程の遊戯施設で良いですか?」


「そうだな。あそこなら守りやすそうでもある」


 輝成はひょいと言う風に銀髪の男を担ぎ上げ背中に背負った。本当に体格通りパワーが桁違いだと毎回思わされる。


「スマナイ。この仮は必ず返す」


 ドラゴンなどが僕たちに向かって羽音を立てながら向かってくる。あまりの数の前に一部は対処できず、後ろに回られた――かと思われた。


「ん……どういうことだ?」


 僕たちの背中を取ったのではなく何故か先ほどまで銀髪の男がいたところに群がるようにして殺到している。


 唖然としながらも詳しく観察しているとあることに気が付いた。


「血を狙っているのか……これでNPCの手先になってしまうと言うことなら、まさしくゾンビやヴァンパイアを増やしていこうとしているような感じだな」


 ドラゴンなどすらも吸血をしているような感じの印象を受けたのでかなり異様な雰囲気だ。


「どうして血を狙っているのか分かりませんが、あの血溜まりが無くなる前に移動しておきましょう。この人の傷を手当てすることが余計に大事だと言うことです」


 建山さんがそんなことを言って僕たちを諭し始めた。

 確かにいつまでもああして屯っているという可能性の方がむしろ低いだろう。暫く観察をして様子を見ておきたいが、潮時とも言えた。


「うん、とりあえずはさっきまでいた遊技場に戻ろう。あそこならば医務室のようなところもあったと思う」


「そうしましょう」


 僕たちは負傷した銀髪の男を守りながら遊技場に戻ることにした。

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