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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第45話 自己解決への道

偏頭痛のようなものに襲われ、ようやくその痛みが引いてきたかと思うと脳に直接何やら語り掛けてくるような声があった。

 建山さんに支えられながらようやく立ち上がると再び何やら脳に直接語り掛けてくるのが分かった。


「ツッー、虻輝様。聴こえますか? こちら小早川ザッー」


 為継の声だった。僕は頭を押さえてどうにかして音声を聞き取ろうと試みた。


「もしかすると、為継か? 雑音交じりで上手く聞こえにくいが何とか音は拾えているぞ」


「虻輝様のお声はハッキリと分かります。これでいかがですか? もし聴こえているのでしたらそちらの情報についてお伝えいただければと思います」


 2分ほど音が無かったが、この音声はハッキリと聴こえた。


「おぉ、完璧に聴こえる。よく連絡を取れるようにしてくれたね。正直、外部と連絡を付ける方法が無くて完全に手詰まり状態だった」


 ただ通話が繋がっただけなのだが、出口から光明が差し込んできたような気分になった。


「やはりそうなのですね。とりあえずは連絡がつけて良かったです。

ヴァーチャリストと言うゲームに先ほどまでアクセスしていた全員と交信が取れなくなっていると言うことが明らかになりつつあります。

 そちらの様子はどうなっておられますか?」


「それなんだが、大変なことになりつつある。単にログアウトできないというだけでなく、NPCのボスたちが暴走しているようなんだ。

 更にNPCのボスにやられてしまった人たちがNPCと一緒に暴れまわっているようなんだよね……まるでゾンビ映画でも見ているかのような状況だよ」


「そうでしたか……そちらには輝成もいますよね? 肉体労働でしたら輝成を使ってやってください」


「もう使ってるね(笑)。僕はあまりにも非力なものでね(笑)。恨まれないか心配になるね」


「輝成はそう簡単には音を上げるほど貧弱では無いので大丈夫だと思いますけどね」


 そんな風にいつものような会話を為継としていると、ふと僕はとんでもない事に気が付いてしまった……! 為継と連絡がついてホッとしたというのもあるのだろうが、玲姉達の激昂している表情が脳裏に突然飛び込んだからだ!


「そ、それより玲姉達はどう? 僕がご飯を食べにやって来ないからキレまくっているんじゃないかと心配しているんだけど……」


 今回の一件に関しては僕に非は一切ないものの、僕がゲームにのめり込んでいるのが原因だと断定してくるかもしれない……。

 

「いえ、むしろ心配されているので体を悪くしないか懸念しているほどです。

 見た目上は3人とも気丈に振る舞っている様子はありますがね」


「へぇ、意外だね。玲姉なんて僕のせいではないとはいえ、ご飯食べないと頭からツノが生えてくるじゃないかと思うぐらいだからね」


「……虻輝様は少々彼女たちの評価を見誤っている感じがしますな。

 構っている理由にしろ、虻輝様が考えておられるところと違いますからな。

 いずれにせよこちら側の問題は無いのでご心配なさらず。

 今の局面をどうやって打開するかに集中して下さればいいです」


「そりゃ助かるな。後で余裕が出たら玲姉達とも話したいな。今はどうなるか分からないから……。

それより、僕の先程の話を聞いて為継はどう思った?」


 まさに一寸先は闇と言う感じがするからな。


「そうですな……これからいろいろと調べて検証してみますが、お聞きした第1感から申し上げます。

……もしかすると外部からの干渉は受け付けないのかもしれません」

 

「えっ!? どういうことだ!?」


「私が情報を精査した限りにおいては、外から見た限りにおいては外傷などは一切無く、

 コスモニューロンのウイルスを排除するというのも好転する気配がありません。

 サイバーテロ対策の部門が特攻局と科学技術局が一緒に動いているにも拘らず未だに解決していませんから。

 彼らがまともに働けばすぐさま解決しそうですからな」


「確かにその2部門の技術は凄いからな……。そうか……解決しそうに無いのか……」


 為継と連絡がついた瞬間は光明が差した気がしたが、再び奈落の底に突き落とされた気分になった……。


「勿論、我々も努力はいたしますので外部の干渉で解決する可能性はあります。

 しかしながら、私の感覚と致しましては何か上手くいく感じがしません」


「そうか……」


「しかし、僅かながらですがサポートさせて頂きます。

 例えば、虻輝様達の装備品を最良のものに整えることは可能です」


「えっ!? ウイルスは除去できないのにそんなことができるのか!?」

 

「ええ、こうしている間に上手い具合にヴァーチャリストの個人プロファイルのサーバーにアクセスは出来ましたので改竄することは可能なのです。ご希望の品はありますか?

 私にはどれがいい装備なのかが分かりませんので」


 僕は会話をしながらゲームをプレイできるように為継はデータの改竄をできてしまうのか……。


「分かった。僕の方で付けて欲しい装備についてリストアップしておこう。

 あっ! ついでに、今しがた僕と協力関係になった工藤君の装備も整えてやってくれ」


「分かりました。まぁ、そもそもウイルスが入っているようなゲームの“最高装備”と言うのがどの程度使えるかが分かりませんがね」


「確かに(笑)。また連絡しよう」


 こうして為継と連絡を取ることができた。すぐさま僕が思う最高レベルの装備の組み合わせリストを為継に送った。


「おぉ、その様子ですと為継と連絡が取れたようですな」


 輝成が希望に満ちた目でこちらを見つめてくる。しかし僕は首を横に振った。


「あぁ、連絡は取れたが状況は思ったよりも難しいかもしれないと言うことが分かった」


 輝成と建山さんと工藤君には、先ほどの為継との会話をまとめて伝えた。こちらで解決をしなくてはいけないかもしれないと言うことを特に強調しておいた。


「為継や特攻局でも容易に解決できそうにないとは……相当難解なウイルスの侵入を許してしまったのですな。この二部門ですら太刀打ちできないのですから警察も無力でしょうね……」


「私としても面目が立ちませんね……だからこそ私たちで何とかする必要がありますね」


 と言う風に会話をしているうちに僕たちの装備が変化し始めた。

 僕は赤い剣先の細い振りやすい刀、回避性能を上げるお守りなどのラインナップを揃えた。今の状況だと重い装備だとあまりにも使いにくいと思ってね(笑)。


「おぉ、これが為継のハッキング能力か。流石だな」


 輝成は黒い日本風のかなりゴツイ感じの鎧になった。

 建山さんは緑色の俊敏に動けそうな装備になり、工藤君は忍者の服装に浅黒い鎖帷子を身に付けていた。


「皆似合ってるよ。為継ありがとう!」


「いえ、どういたしまして。多少でも手助けできればと思っておりましたから何よりです。

 また何か新しい情報を仕入れましたらお伝えしますし、何かご要望があったらなるべくできるように検討いたしますので是非お申し付けください」


「ああ、ありがとう。とりあえず、引き続き協力関係になれそうな人を集めていこう。

 NPCの大軍に対抗するためにはそれしかない」


「分かりました」


 状況は好転はしていないが為継と連絡が取れただけでもまだ外部との接続が完全に遮断されていないことを意味する。

 自分たちで解決しなくてはいけない可能性は高そうだが、それでも糸の切れた凧の状態で外部と会話すら取れない状況よりかは幾分メンタル面でも違うといえた。

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