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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第39話 身近にいた仲間

「あ、あなたは! 特攻局テロ対策の関東本部長の方じゃありませんかっ!」


 ビックリし過ぎて、その場で飛びあがった後に更に倒れそうになったが、何とか堪えて体勢を立て直した後、背筋を伸ばした。

 先ほどまではチェリーさんだったと思ったのに――こ、これは一体どうなってるんだ……。

建山さんは僕の大声に対して目をこすりながらゆっくりと起き上った。


「……まさか、建山本部長だったとは。今まで失礼いたしました」


 よく聞き覚えがある声が後ろから聞こえる。

 振り返るとまたしても驚き――驚き過ぎて倒れそうになった。


「く、クリーさんだと思ったら輝成だったのか!」


 輝成がクリーさんがいた場所に立っていた。


「これは、アバター状態が解除されてしまったんですかね。

それより、“テルル中将さん”が服装以外が変わらないのを見ると本当に虻輝様だったんですね……。

言葉の端々や言動から“もしや”とは思っていたのですが……」


 僕は2人と違って服装が変わっただけで見た目上は何も変わらない。それは本人なのだから当たり前だった。


「あ、それもバレたか……僕はアバターを使うにしても“自分”じゃないとなんかシックリ来ないからさ。レプリカの自分のアバターを使ってるんだよね。

 っていうか僕は輝成が女の子のアバターを使っていることに驚いたよ……」


「私もそのつもりは無かったのですが、ランダムで設定したらこうなってしまいまして……。

 本来は男のアバターを使っているのですが時間があまりありませんでしたので……」


 輝成はかなり恥ずかしそうに頭を掻いている。まぁ、これ以上は触れないでやるか。


「それにしても、テルル中将さんはホンモノの虻輝さんだったんですね。ゲームのプレイングを見て世界トップの判断力とスキルだと思ったんですよね」


「それはありがとうございます。僕は建山さんがゲームをやっていることに驚きました……」


「あ、敬語でなくていいですよ。私達もうお友達じゃないですか?」


「そうなの……? それなら今まで通り話すけど……」


「ちなみに、私のお父さんがゲームが好きというのは本当のことですからね。

ただし、私ではハンデを貰ってもほとんど勝つことができませんでしたけどね

今日は休暇でもあったので、偵察も兼ねてこのゲームに参加したんです」


 建山さんが勝てないって相当ヤバいな……だからこそのこのセンスなのかもしれないが……。


「ところで、偵察っていったい何を見に来たの? あ……機密でなければ良いけど」


 機密について簡単に口外するような人では無いと思うけどね。


「このヴァーチャリストというゲームはご存知の通り最近急成長しているゲームなのですが、最近“危険分子”の温床になっているという話があるんです。

 デジタルウイルスをばら撒き、コスモニューロンを破滅させると言った計画もまことしやかに囁かれていたので、私も“まさか”と思い潜入したんです

 建山さんも恐らくはそうだと思いますがいかがでしょうか?」


 輝成が補足するように言ってきた。確かに、現在のコスモニューロンのセキュリティは非常に厳重でこれだけの大規模のエラーが起きたのはこのシステムが出来た初期の頃以来だろう。

 “まさか”という印象を抱いていても無理は無いように思える。


「警察の方でもそう言う判断だったんですね。

 特攻局でも最近“特別監視対象”として急浮上していました。

 この巡り会わせも何かの縁かもしれませんね」


 ニッコリと建山さんが笑う。


「日本人ばかり、しかも知り合いで3人集まるって言うのはかなりの天文学的数字だろうね……」


「いえ、そうとも限りませんよ。そもそも前提とされて提示されている条件が真実と違う可能性があります。

 もしかするとヴァーチャリストの運営側が“そう謳っている”だけで実際のところは近くの人とマッチングするシステムなのかもしれません。

 何と言っても本来の身分を明かさないことがこのゲームの参加の条件ですからね」


 建山さんが顎に手を当てながらそう言った。

 僕は世界大会の規約など素直に提示された条件を信じて参加することに慣れているから疑うことすらしていなかった……。


「建山さんもそう思われるわけなんですね。私もそう思います。

 怪しいというところも事実と異なることを宣伝しているといった通報があったからです」


「例えば?」


「虻輝様はご存知だと思いますが、本来ですと身分を明かしたり個人を特定する情報を開示すると即座に追放されてしまうことになっています。

 しかし、個人情報を明らかにすることを言っても実際のところは何も起きていないというケースが結構あるようで、裏社会のやり取りにこのゲームが使われているという噂があるのです」


「あ、そうなんだ。僕はルールとしてあると堅実に守っちゃうね(笑)。

 僕達プロプレイヤーとしては基本的なベースとしてあるルールは守らないとプロライセンス停止されちゃうんで、例えそんな情報を聞いてもやってみようとすら思わないね」


 プロライセンスがまさしくプロゲーマーの生命線だからな……。

 どんなに稼いで優勝したとしてもライセンス停止処分になれば、最低でも一定期間の公式大会参加停止、最悪は全ての名誉の剥奪や過去の獲得賞金没収になるからな……。


「私も当初その情報が入手した際には、AIが旧時代のモノで察知できないこともあるのか? ぐらいの感じで情報を我々も感じていたのですが、特攻局の厳密な調査し、分析して見るとそう言う訳では無さそうなのです。

 コマンドを入力することによって回避することができると言うことのようです

そんな訳で、アルゴリズムを使うことによって特定の人間同士でメンバーを組むことも可能なようなんです」


 建山さんがそう付け加えた。


「なるほどねぇ……確かにピラミッド型の階層のダンジョンの時の敵とかは“仲間内“といった印象のチームが存在していたもんね。

 逆に僕たちのような極端な組み合わせも出来るわけだ(笑)

 何となくプレイしていてリアルでも会いたいようなメンツだな~と思っていたらもう既に会っていたとはね(笑)」


「私も虻輝様の言動と似ているなと思っていたのですが、まさかご本人とは思いませんでしたよ。プロ世界大会の公式大会でないゲームもプレイされることがあるとは存じませんでしたね」


 北条は心の底から驚いているようだ。


「確かに基本的には世界大会に関連するゲームしかやらないね。

今回このゲームに参加したのは、世界大会になった時に何かきっかけが見つかればと思ったけど、初心者の人がいるのなら途中訓練をしても良いんだなって言うのが分かったね。

 正直なところ2人とも、訓練後の動きが見違えるほどだったからね

 急がば回れという感じかな」


 ただ、この2人の能力は他の人より遥かに高い事を考慮しなくてはいけないけどね……。

 

「なるほど、匿名性なチーム戦ですと臨機応変さが更に求められますからな」


「そうそう、状況判断については一定の自信があるからメンバーの状態を見極める訓練をしたかったんだよね。

 2人とも素晴らしい吸収力と判断能力だなと思ったらやはり、基礎的な能力が凄かったね……」


「虻輝さんの技術が凄すぎて私達もついていくのが大変でしたね。

 ついていくだけで優勝するんだからタダ乗りみたいな感じだと思っていました……」


「私も足を引っ張っていないかと心配していました」


「そう? 2人ともよくやっていたけどね。

 そもそも、ゲームの試行回数が僕よりも遥かに少ない以上は、基礎的な技術が無いのは仕方ない話だよ。

 僕の言っている内容を上手く理解して実現化しているだけでかなり凄い事だと思っていたね」


 そもそもこれまで組んだ奴らでは僕の言っている意味がそもそも分かっていない奴が多かった。表面上の言語は理解しているのだろうけど、本質的に理解していないというケースが多かった。


「ところで、ゲーム内の体は無事に動かせそうなので、雑談はこれぐらいにしてそろそろ私達でこのゲームの問題を自力で解決してみませんか?

 リアルの体はどうなっているのかまでは分かりませんけど……」


「ぼ、僕達でぇ? 正直黙ってエラー解決を待っていたほうが良いような気もするけど……」


 これ以上何かに巻き込まれたくないというのが正直なところだった。

優勝が確定したのにこんなにも嬉しく思えない瞬間はそもそも初めてだ。


「私も建山さんに賛同したいです。特攻局や為継のいる科学技術局などがメンツにかけて修復を試みるでしょうが、サイバーテロが綿密に計画されている可能性があるので思ったよりも時間がかかる可能性があります」


「確かに、コスモニューロンの連絡が全くできなくなっているし、機能も時計ぐらいしか使えない状況だな。これは思ったよりも修復に時間がかかるのかもしれない」


 もう20分ぐらい経過しているが全くゲーム側からの連絡も来る気配が無いし、これは異常と言わざるを得ない。


「でしょう? 全く何もでき無さそうなら動かないほうが良いですけど、やれるだけのことはやったほうが良いと思います。虻輝さんがどうしても動きたくないのでしたら、私と北条さんだけで動こうと思いますが」


 チラリと建山さんが僕を見ながら言う。その心遣いが何とも逆に情けなさを際立たせているし、何より何が起こるか分からないこの状況で1人でいるのは怖すぎる……。


「あ、いや。1人では流石に心細いんだけど……。まぁ、そんなに深入りをしないのなら……」


 さっきまで僕があれだけ引っ張ていたのに何かリアルの状況に近いことになるとあっという間においていかれそうになる僕って……。


「虻輝さんが来てくれるだけで助かりますね。

ただ、機能がことごとく使えなくなっていて、便利に離脱や街にワープできなくなっているのも気になりますね。

 取り敢えずは、他の人がいそうなところに行って状況を把握することが大事だと思います」


「そうだな。街に行って情報収集だな。幸い、ゲーム内通貨のゴールドだけはあるから金を出せば情報や協力を取り付けられると思うしね」


 このゲームのゴールドは正直なところゲームの時間が終了するとすぐにログアウトをするのでほとんど意味を成さないのだが、こういう“いざという時”にはまだ使える。

 一応優勝チームである僕たちはかなりのゴールドを持っていた。

 これを何とか活かせていければな……。

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